その26
痛いくらいその身に突き刺さる雨に、クピトが漸く目を醒ました。びしょ濡れの顔に幾筋もの雨滴が伝って流れ落ちる。
時折稲妻が光り、遠くで雷鳴が轟いている。
――嗚呼、光った・・・。ジュピタさま、何卒お力添えを・・・
雨の中、身を起こしたクピトがつぶやいた。
と、その時、真っ白に輝く稲妻が瞬時にクピトの頭上を直撃した。周囲が真っ白な輝きに満ち溢れ、やがて轟音が響き渡った。
その瞬間、さっきまで天から注いでいた雨はやみ、代わって雲の隙間から、虹色の光が何本も地上に射してきた。
やがて真っ白い闇の中に、降り注ぐ光に照らされて、美しいクピトの姿が静かに浮かび上がった。
古の神の纏う白き衣、背には翼。静かに宙を舞うように浮かんでいる。
「ふうっ、やっと元の神の姿に戻れました。ジュピタさま、ありがとうございます!!」
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「きゃっ!!」
あまりに凄まじい光と雷鳴に、思わず悲鳴を上げ、つばさが両手で頭を抑えた。
「すごかったねえ、今の雷。でも、つばさちゃんの声、かわいかったね」
相沢が笑いながら、からかうように言った。伊東も声をあげて笑っている。
「いやだぁ~。もう・・・」
「ちょっと待ってて。今、お菓子と何か飲み物持って来るから。オレンジジュースでいい?」
「あっ、はい。ありがとうございます・・・」
「おい、伊東! お前は手伝え」
「へい、へい」
二人がキッチンへ向かった後、つばさはクピトのことを考えていた。
あの雨の中、その後どうしたのだろう? クピトくんの言っていた、大切な人って、いったいどういう意味だろう? もちろん、契約者としての私が大切ってことよね? ――それとも、もっと別な意味?
でもどうしてあんなに必死に私を連れ戻しに来たんだろう?
相沢先輩、そんな悪い人じゃないと思うけどな…。
――私ってクピトくんのこと…。
途中で頭が混乱してよくわからなくなってしまった。
キッチンで二人だけになると、伊東が相沢に耳打ちするように聞いてきた。
「おい、その薬、本当に大丈夫なのか?」
「平気だよ。兄貴が成分調べて実証済みだ。ああ見えても、ヤツは薬学部だからな」
「なんかヤバイことになんないだろうな?」
「心配すんなって、量も少なくしてっから」
オレンジジュースが注がれたグラスに、少量の液体を数滴垂らしている相沢の様子を、不安げに伊東が見つめている。
「それに、お前だってヤリたいんだろ? あの子と」
相沢はいやらしく笑うと伊東を見た。
「そ、そりゃ、できれば・・・」
思わず伊東が下を向いた。
「だったらつべこべ言うなよ。俺はともかく、これ使わなきゃ、お前は絶対無理なんだから」
「・・・・・・」




