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その22


 思ったより電車の乗り継ぎが悪く、つばさは十分ほど遅れて約束の映画館の前に到着した。


「すみません、先輩、遅れてしまって…」

 駆け寄ったつばさの息が少々荒い。


「大丈夫?」 

 相沢が心配そうにつばさの顔を覗き込む。

「平気、平気、そんに慌てなくても。映画が始まるまで、まだ全然時間あるから」

 やさしく微笑み、つばさの眼を見ながら言う。

「は、はい…」


「さ、じゃあ、行こうか!」

 すっと、相沢がごく自然につばさの手を取る。

「あ、はい」

 つばさが少し頬を赤らめて答える。

 ――やっぱり、相沢先輩って、やさしい・・・



  ****



 その日以降も、つばさは相沢と二人でいろいろな場所に出掛け、何度かデートを楽しんだ。クピトの話とは違い、紳士的な相沢の態度に、つばさの心はどんどん惹かれていった。

 ただ、時折のぞく、女の子の扱いに慣れているような雰囲気だけは、やはり少し気になった。


 ――ではその間、クピトはどうしていたかと言うと・・・


 なんとか彼女を相沢の手から救いたいという一心で、つばさが出掛ける度に、毎回ストーカーよろしく二人の後をつけて回った。

 まだ人間から完全体の神へと戻ってはいなかったが、不可視の能力は回復していたので、つばさにさえ気づかれなけばよかったから、尾行は案外容易だった。



 その日も、つばさは相沢と水族館でデートを楽しんでいた。

 蒼白いライトに照らされた水槽の中を悠々と泳ぐ巨大な魚。群れを成し、光を反射して、素早く縦横に駆け巡る小魚たち。

 きらきらと輝く幻想的な世界。


 二人で一通り見て回った後、館内のレストランで食事をしている最中に、相沢が切り出した。


「今度さ、みんなで一緒に海へ行かない?」

「えっ? 海ですか…」

 つばさはアイスティーのグラスを持ったまま俯いた。

「どうしたの?」

「いえ、あの…、私、スタイル悪いし、海はちょっと恥ずかしいかな…」


 ――へっ、こいつ自覚はあんのかよ・・・ 相沢が心の中でせせら笑う。

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