表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/31

その21


 夏休みに入った。


 すでに高く昇った太陽が、地上に容赦ない日差しを注いでいる。

 その日も、クピトは朝から家の前で、つばさが出てくるのをずっと待っていた。

 ――ところに、つばさが白にネイビードットの可愛らしいワンピース姿で出てきた。


 三日前クピトは、追い出される前に、つばさが相沢とデートに行くことを聞き出していた。


 あの日、部屋から追い出され、廊下からドアを叩いて、

「ぼくの矢の力が無ければ絶対上手くいきませんって。どうせ、次に会う約束もしてないのでしょう?」

 と、カマをかけると、

「お生憎(あいにく)さま、今度一緒に映画に行くことになってるんだから。わかったらもう二度と私の前に顔を見せないで。もう、あんたの力なんか借りないんだから!!」

 と返事が返ってきた。


 その日がいつなのかまでは聞き出せなかったので、翌日から今日まで、ずっとここで見張る羽目にはなったが、めかし込んでいるところをみると、どうやら今日で間違いなさそうだ。



「つばささん、どこへ行くんですか?」

 いきなり後ろから声を掛けられ、つばさが驚いて振り返った。

「クピトくん…」

 一瞬眉を寄せた。

「相沢君に会いに行くのですか?」

「あんたまだいたの・・・」


「はい。つばささんの望みが叶うまでは・・・」

「だったら、もう用はないわ。今日だってこれから彼とデートしに行くんだから」

「いえ、行ってはいけません!」

「もう関係ないでしょ! 私が誰と会おうと。契約だってもう終わりなんでしょう?」

「ダメです。行かないでください。彼と付き合ているときっとひどい目に…」

「・・・どうしてそんなに彼のことを悪く言うの?」

「それは…」


「それに、あなたの役目は、恋に悩む人の望みを叶えることなんでしょう? だったら、依頼主の好きな相手が善人だろうが悪人だろうが、そんなこといちいちどうだっていいんじゃない?」

「・・・確かに僕の役目はあなたの言う通り、片思いに悩む人の手助けをすること。それ以上でもそれ以下でもないのです。それはそうです…。でも、みすみすあなたが不幸になるとわかっていて、黙って見てはいられません!!」

「そう。でも、だいたい失礼よね。どうして私が不幸になるって決まっているのよ?」

「・・・・・・」


「それに、もし私が不幸になっても、崇高な神サマは…、人間の女の子が一人、傷ついて泣いたりしたくらいで、心を痛めたりなんかしないんでしょ? どうせ私のことなんか、どうなったっていいんでしょ!! ――結局、あなたと私は違うのよ!!」

「そんなことはありません・・・。ぼくは…、ぼくは…」

 そう言いながら、クピトは自分の右の(たなごころ)を、苦しそうに見つめている。


「どいて! 時間遅れちゃう」

 苦しげに立ち尽くすクピトの横を素通りし、小走りにつばさが駆けて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ