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その16


 抜けるような青空の(もと)、夏の暑い風が吹き抜ける。

 一学期の期末テストが終わった翌日の土曜日。毎年恒例の「軽音部サマーライブ」が学校近くの音楽ホールを借りて催されている。


 クピトがスタンドマイクを使い、ステージの上で熱唱し、女の子たちの熱い声援を浴びている。客席でそれを見ながら、つばさは面白くない。まったくもって面白くない。

――何がと言って・・・


 演奏が終わり、ステージから戻ってそのまましばらく女の子たちに囲まれていたクピトが、ようやく自分の近くにやって来た時、つばさが問い詰めた。


「ちょっとぉ~、あんた本当にやる気あるの?」

 (けん)のある声、横を向いてほとんどクピトのことは見ていない。

「えっ? もちろんですとも、御覧になったでしょう? ぼくたちのステージ。ノリノリだったでしょ?」


 昨日、急遽(きゅうきょ)飛び入りで参加させてもらうことになった、――と言うより、クピトがその力でもって無理やり入り込んだのだが、――バンドで、今さっき、クピトはボーカルを務めたのだった。


「違う! そんなこっちゃないわよ!!」


「・・・いったい何の話ですか?」

 クピトの言葉に、眉を吊り上げてつばさが再度問い詰める。

「だから、あんた、私の恋を実らせるために現れたんじゃなかったの?」

「ああ・・・、その件ですか」

「まさか、忘れてたんじゃないでしょうね?」

「まさか。――残す矢はあと一本きり。絶対に失敗できないですからね。そのために、こうやってわざわざ相沢君の所属する軽音部に入部して、矢を射るチャンスを(うかが)っているんじゃないですか」


「ホントに? 私には今みたいに女子にキャーキャー言われるために、軽音部に入ったようにしか見えないんですけど~~」


 ―――今しも本日の取り(トリ)、相沢たちのバンドの演奏が始まろうとしている。会場中から拍手と大きな歓声が上がった。


「やだなぁ~、そんなことある訳ないじゃないですかぁ~。みんながぼくのことを(あが)め奉ってキャーキャー言うのは仕方のないことじゃないですか。なんたってぼくは神なんですから」

「ああ、そうー」

 つばさがムッとして後ろを向いた。怒った顔で、会場の外のホールへ出て行った。慌ててクピトがそれを追って行く。


  ****


 あとを追ってホールに出てきたクピトだったが、どこへ行ったのか、つばさの姿はない。ホール中をぐるりと一周し、さんざん捜して回ったがとうとう見つけられなかった。

 仕方なく会場に戻ってみると、相沢たちのバンドがアンコールの真っ最中だった。会場の中もぐるっと見回してみたが、やはりつばさの姿はない。


――まったく・・・。仕方ありませんねぇ。どこ行っちゃんたんでしょう

心の中でそう呟いて、目を閉じ、クピトは精神を集中し音楽ホール全体を検索してみる。


 演奏が終了した。司会が今日のサマーライブの終演を告げている。


――いた!!

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