表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

その14


「確かに、このまま放っておくと、武藤先生の方も危ないかもしれません」

「どういうこと?」

「たまにいるんです。キューピッドの矢の効果が極端に出る人が。通常は相手もその人が好きなわけですから、あまり問題はないんですけど・・・。今回の場合は・・・。――下手をすると、先生の精神に異常を(きた)すかもしれません」


 その時、武藤先生がむっくりと起き上がった。ジッとつばさのことを見つめている。もはや正気を失っているのは誰の眼にも明らかだった。


「凍蝶!! 好きだぁ~」

「いやああ~~」

 武藤先生が再びつばさを目掛けて飛び掛かろうとした。両手を広げ、クピトがそれを遮って立ちはだかった。そうして、素早く身を(ひるがえ)し、そのまま背後に回って羽交(はがい)()めにした。


「先生、ごめんなさい」

 そう言うと、クピトは後ろか煌煌(こうこう)と光る神の右手を、まだ矢じりの残っている右肩にあてた。

 その瞬間、武藤先生は一瞬悶絶するようにして気を失った。クピトもウウッと小さく呻いて顔を歪めた。


 クピトの手が輝きと共に白い煙を上げ、武藤先生が着ているシャツを焦がし、右肩の中に、沈み込んでいくのが、つばさの眼にもはっきりと見えた。

「クピトくん、一体なにをやってるの?」

「仕方ありません、最後の手段です。本来キューピッドは人に刺さった矢に触れることはできないんですけど、ぼくは今、半分人間ですから、これなら・・・」

 つばさを見ながら、苦しげに、弱弱しい声で答えた。


「なんかすごいことになってるみたいだけど・・・、大丈夫?」

 何やら焦げ臭い、肉の焼けるようなにおいが漂い出した。


「あと、もう少し・・・。よし、掴んだ!!」

 クピトが矢じりを握って、ゆっくりと先生の右肩から手を抜いた。焼け(ただ)れたクピトの右手のひらで矢じりが光ながら消滅した。ホッとしたクピトが武藤先生を抱えたまま、床に倒れ込んだ。

「クピトくん!!」

「つばささん、下がって。今から武藤先生の治療をします」


 クピトは武藤先生を床に寝かせ、怪我をしていない左手を(かざ)し、その右肩の傷口に光を照射している。みるみる傷口は塞がっていったが、逆にクピトの顔色はどんどん悪くなり、玉のような脂汗が額にいくつも浮かんでいる。


「ふうっ・・・」

と大きく息を吐いてクピトが床に崩れ落ちた。同時に武藤先生が目を醒ました。

「クピトくん!!」

 つばさが叫んでクピトに駆け寄る。

「大丈夫? しっかりして!!」


「う~~ん、なんだ、どうなってる? なんでこんなとこにいるんだ・・・。おう、お前、凍蝶か。――ん? そこに転がっているのは誰だ。 ――九尾堂? 九尾堂じゃないか。大変だ、気絶している。凍蝶、すぐに保健室に運んでやれ!!」

 まだぼうっとしている様子だが、先生は頭を振りながらもすぐに指示した。


「は? はい~?・・・」

「ああ、いやお前にゃ無理か、俺がおぶって行く。――ややっ? こ、これはYシャツの肩にこんな大きな穴が開いている。一体全体どうしたって言うんだ・・・」


 ついさっきまで自分に向って迫って来ていたことを思い出し、ジト目でつばさが武藤先生を見つめ、溜息をつく。


――はあ~~。全部(ぜ~んぶ)、あなたのせいなんですけど。 センセイ・・・。 

――ん? あれ~? もしかして私のせい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ