その13
「そうですか、わかりました・・・。こうなった責任の一端はぼくにもあります。ぼくがなんとかします」
「クピトくん、なんとかって、どうするの? あなたにも矢は抜けないって・・・」
「これを使います」
そう言って、またどこからともなく黄金に光り輝く矢を一本取り出した。
「この矢を先生に刺さった矢にぶつけて、効果を中和してみます」
「でも、同じ効果の矢をぶつけても中和しないんじゃ。もっと酷くなったりしない?」
「大丈夫、この矢には先生が奥さんのことを、今よりもっともっと好きになるように細工してあります!!」
「なるほど!」
「さあ、先生、行きますよ!」
そう言ってクピトは、手にした矢を、まだ呆然としてしゃがみ込んでいる武藤先生の、その肩に刺さった矢を目掛けて振り下ろした。
――ガチッという大きな音と強烈な光。二つの矢が接触した瞬間、砕け散った。
――やった!!
クピトとつばさが同時に叫んだ。
武藤先生が静かにゆっくりと顔を上げた。
「凍蝶・・・」
「はい、センセイ!」
「やっぱり、俺はお前のことが、忘れられない・・・」
――いっ!? 今なんて?
「ええええええ、ちょっ、ちょっとクピトくん、全然ダメじゃん!!!」
「あっれ~~~? なんで・・・」
「ねえ、どうすんのよ!!」
「いや、どうすると言われましても・・・。なんでなんでしょう。先生と奥さん、仲が悪いのかな。それとも先生は本当に前からつばささんのことが好きだったのかな・・・」
「なに、バカなこと言ってんのよ~」
「ぼくの調べたところ、先生と奥さんは学生結婚だったそうですし、それから何年も経って、JKの方がよくなったのかもしれませんねえ。――なんでもほら、この国では昔から『女房と畳は新しいほうがよい』とか言うそうじゃないですか」
「ふざけたこと言ってないで何とかしなさいよ!!」
「は、はい~!」
****
「あっ!」
しばらくまだ呆然としている武藤先生の様子を見ていたクピトが叫んだ。
「つばささん、これを見てください。矢じりの部分が、まだ先生の体内に残っています」
「ええ? あ、ほんとだ!」
クピトが武藤先生の肩に触れると、つばさにもその厳つい右肩の奥に、淡い光を放つキューピッドの矢の先がはっきりと見えた。
「あれをなんとかしないと・・・。でもどうやって」
「ねえ、矢は三本だったから、もう一本あるんでしょ? それ使えば?」
「でも、あれが最後の一本ですよ。相沢君に使う分がなくなってしまいます」
「もう、そんなこと言ってる場合じゃないんじゃない?」
「そうですねえ。でも、一度やってだめなら、たぶん、もう一回やっても効かないと思います・・・」
「じゃあ、どうするの?」
「そうですねえ・・・。あと、一日か二日、つばささんがこの状況に耐えて我慢してくれれば・・・」
にっこり笑ってクピトが言う。
「絶対イヤよ!!」
ムッとしながらつばさが答える。
「即答しましたね・・・」
「当たり前じゃない!」




