その10
「ちょっと、クピトくん?!」
気がつくと、つばさはクピトと二人、人気のない体育館の裏手にいた。
「ここなら大丈夫でしょう」
「ええ~~、なに、なに? どういうこと?」
「これもキューピッドの持つ力の一つです。神の力と言い換えてもいいでしょう。さあ、つばささん! 思う存分、ぼくを崇め奉ってもいいんですよ!!」
「なにそれ? そんなことより、どういうことよ、転校生だなんて」
「ああ、はい。つばささんが、武藤先生に刺さった矢を何とかしろ、ということでしたから、人間に化けて来ました。そばに居て、ぼくがあなたを先生からお守りします!」
「そんなこと頼んでないわよ。先生に刺さった矢を抜いて欲しかったの!」
「それは無理です。一度刺さった矢は、キューピッドのぼくでもそう簡単に抜くことはできません」
「ええ~~、そうなの?」
「だから、もし、武藤先生がまたしつこく言い寄ってくるようなら、ずっとあなたの側にいて、ぼくがあなたをお守りします。それに、本命の相沢君の心臓に矢を射るにしても、ずっと学校内にいた方がやりやすいですしね」
「う~~ん、それもそうねえ。でもさ、あなた、私の恋を成就させるために来たんでしょ? ――なのに・・・、あんたがモテてどうすんのよ!!」
「ああ~~、それは・・・。すみません。しかし、これはぼくのせいではありません。言わば、フ・カ・コ・ウ・リ・ョ・ク。――ぼくが天上界の住人で、あまりにも美しすぎるせいなので~~す!!」
「・・・はいはい」
両手を広げ、天を仰いで力説するクピトに、あきれ顔でつばさが答える。
「でも、まあ、任せてください! この学校の生徒になったからには、相沢君に矢を射るチャンスはぐっと増えたわけですから」
「まあ、そうねえ・・・。頼んだわよ!」
「お任せください!!」




