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救出。

 ……ん、ここは?私、気を失って?


 は?ちょっと待ってよ、なんで私が飛竜達に運ばれてるの!?


 あっちで飛竜に咥えられてるのは朱里の取り巻きのスライムか。


 なるほどね、だからアイツら必死でこっちに向かってるのか。


 違う、今はそんな事はどうでもいいんだ。もしかしてロンド様から直接命令が?まずい、このまま逃げ帰ったりしたら絶対にお払い箱になる。


 ロンド様と勇者の同盟だって失敗する。いや、もしかしたら既に。


 人の事は言えないけど、ロンド様はまだ子供だし、すぐに感情的に動く。何より竜族をムポポペサに君臨させる為に手段を選ばない方だ。


 使えない駒は捨てられる。最悪、殺されたっておかしくない。


 神鹿の一族が神の使いから退いてから、私はその落ちた地位を再び盤石のものにするために奔走してきた。


 でもこのままじゃ、やっと手に入れた側近の立場が失われてしまう。


 一生懸命取り繕ったって、私は結局ダメダメなの?


 衰退していく神鹿の一族を指を咥えて見てる事しか出来ないの?


 ……でも、だけど、もしかしたらこれで良かったのかもしれない。


 最初こそ、ロンド様に仕える事に喜びを感じていたし、どんな命令だってこなすつもりでいた。


 だけどロンド様の思想は、私の理想とはかけ離れていた。


 私はムポポペサの統一なんてしなくていいと思ってるし、そのせいで嫌な思いをする魔物だって沢山出てくるに違いない。


 皆、平和なムポポペサで生活してきたんだし、そんなの当たり前だ。


 そして、その暴君の傍には神鹿の一族の私がいる事になる。


 気高き神の使いから、竜の暴君の側近。


 私が求めていた世界は、望んでいた世界はこんなんじゃないよ。


 神の使いとして、誇り高く生きていた神鹿のご先祖様達もそんな世界は望んでいないに違いない。


 ごめんね。お父さん、お母さん。


 このまま飛竜達に連れて行かれてもロンド様の怒り触れ、命の保証はない。


 だけど今すごい勢いで追いかけてきている朱里達に捕まっても捕虜にされて終わり。


 だったら、せめて。


 側近の務めも果たせない堕ちた一族と汚名を着せられるくらいなら!


 私の命を懸けて『オアシス』を落とす!




         —————————




「あばっ、あばばばばばば」


「朱里ちゃん、大丈夫!?」


「は、速すぎて上手く息が、で、出来なあばばばばばば」


「ご、ごめんね! 私の魔力が切れる前に追いつかないといけないから」


 風圧で目が乾くし、口も乾く!息もしづらい!は、早く追いついてー!


「あそこだ! ニャンジちゃんの事を食べちゃった飛竜の近くまで来たよ!」


「やった、追いついた! リルちゃんありがとう!! よし、私があの飛竜に飛び移るから少しだけ高度上げれる?」


「了解、真上まで行くね! だけど、魔力がギリギリで飛行時間があまりないから無理はしないでね」


「私は大丈夫だから、時間ヤバくなったら先に地上に戻っちゃっていいよ」


「流石にこの高さは朱里ちゃんでもやばいんじゃない? もう雲の上まで来てるよ!?」


「平気、平気。サッサっと二人を助けてきちゃうよ!」


 出来ればライカも捕まえたいけど流石に地の利が無さすぎる。まだ意識を失っているなら、なんとかなるもしれないけど。


「おーい、朱里! ここ、ここ!」


「クリス! アンタ大丈夫なの!?」


「大丈夫に見える!? 朱里にぶん投げられて、飛竜に絶賛鷲掴みされ中だよ!?」


「よし、大丈夫そうだね」


「なんで今の会話で大丈夫の流れになっちゃうの!?」


「ニャンジが飛竜に食べられちゃったから先にそっちから助ける! アンタはもう少し我慢してて!」


「ニャンジが!?」


「飛竜の群れにぶん投げたらそのまま食べられちゃったんだよ」


「無謀すぎじゃない!? ニャンジの大きさじゃ、カモメの群れに餌投げるみたなもんでしょ!」


 確かにそんな感じで捕食されてたな。飛竜からしてみれば餌が目の前に飛んできたようなもんか。


 焦ってたとはいえ、無謀だったか。


「朱里ちゃん! わたしがクリスちゃんの事を助けるから、ニャンジちゃんをお願い!」


「リルちゃん、時間は平気?」


「太陽光でクリスちゃん溶けかかってるから、爪から無理矢理剥がして直ぐに逃げちゃうよ!」


「じゃあ任せる! 私、飛び降りるね!」


「気をつけてね!」


「行ってきます! せーの、よいしょ!」


 待ってろ、ニャンジ!今行くぞ!


 ……んん!?あわわわ、流石にこの高さから飛び降りのは初めてだから少し怖いかも!


 いや、少しじゃないかも。


 ああ、やばい!ちょっと待って、めっちゃ怖い!!


 ぎゃーーー!!



———



 すごいなあ、この高さからなんの躊躇もなく飛び降りちゃった。さすが魔王様だよ。


 わたしも側近として頑張らないと!


「リルちゃん、飛竜に気づかれたっぽいよ!」


「え、それはまずいかも! クリスちゃん、身体伸ばして爪から抜けれない!?」


「抜け出したら落ちちゃうじゃん。やだよ、怖いよ」


「落下ダメージ無効なのに?」


「ダメージを受けないのと、落下の恐怖は別問題だよ。あ、危ない!」


「うわわわわわ!」


 うわあ、やばいかも!飛竜の攻撃を避けながらだと上手く近寄れないし、もし複数で来られたら対応できない!


「クリスちゃん、絶対に途中で助けるから飛び降りて! わたしの魔力がギリギリになってきたから!」


「ええ!? 今日は飛んだり落ちたり、踏んだり蹴ったりだよ」


「クリスちゃん、早く!」


「分かったよ、おりゃ! おわわわわ、やっぱり落ちるの怖いよー!」


 あ、落ちた。よし、あとは飛竜を掻い潜りながらクリスちゃんを助けるだけだ!


「目の前で易々と逃すと思ってんの!?」


「ライカちゃん!? ごめん、今は邪魔しないでほしい!」


「私からしてみればアンタ達に先に邪魔されたんだからね! くらえ!」


 あ、あぶなっ!ライカちゃんって風魔術使うんじゃないの?


 なんでいきなり大きな鉄球振り回してるの!?あれってモーニングスター!?急に物理的過ぎない?


 まずいよ。ライカちゃんを相手してたら、クリスちゃんの事助けられない!最悪、クリスちゃんはダメージ無効だけど、後でグチグチ何言われるか分かったもんじゃないよ。


 こうなったら強行手段だ!


「はん、ちょろちょろ飛び回ることしかできないの?」


「なんと言われようと、今はお相手出来ないよ! じゃあね!」


「な、ホウキが爆発した!? くそ、目眩しか!」





 一瞬でも目眩しが出来ればこっちのものだもんね。このまま雲を抜ければ、落下中のクリスちゃんを見つけられるはず!


 ……見つかるはず、だけど。


 あれ?ちょっと待って。


 い、今の爆発で思ったより魔力、使っちゃった!


 やややややや、やばい。絶対、クリスちゃんを捕まえてクッションにしないと!


 わ、わたしが死んじゃうよ!


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