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側近として。

 見えてきた! あそこが『オアシス』じゃない!?


 なんか想像してたより何倍も大きい湖。しかし、なんでこんな砂漠のど真ん中に水があって椰子の木が生えてるんだろう?


 理由は分からないけど人が集まるはずだわ。こんなにも暑くて砂しかない場所に大きな湖があるんだもん。


「クリス着いたよ、出てきて。ここでしょ?」


「早っ! もう着いたのかい!? 走りにくい砂の上でも朱里には関係な、あがががが!」


「わあ、素敵な場所。……あれ? でも人がいないね」


 確かにそうなんだよね。『蟻地獄』に住む人達はここに集まって生活してるって話だったのに。


 なのに誰もいないのはなんで?でも生活感は残ってるんだよなあ。


「か、かはっ! リルちゃん!? 喋ってる途中で出てくるなんて危ないじゃないか!」


「あ、ごめんなさい。丁度口が空いてたから出て来ちゃった」


「そんな事より二人共、上見て」


「うわあ、すごい数の飛竜だね。もうこんなに集まって来てるなんて」


「さっきからずっと旋回してるよ。なんか様子を伺ってるみたいな感じだね」


 私達を攻撃してくるわけでもないし、本当にここを襲うつもりで来たのかな?琥珀の勘違いなんて事ない?それならそれで安心なんだけど。


「住人の避難が先かと思ったけど、誰もいないんじゃ避難させようがないね」


「それか既に避難しているか、だね」


「どこに? こんな所に避難出来る場所なんてないでしょ」


「ここってさ、都市と都市を繋ぐ中継地点にもなってて、貿易や資源が豊富にあるんだよね」


「うん、それが?」


「だから『オアシス』には色々な都市に狙われて来た歴史があるんだよ」


「うん、それで?」


「に、にぶいなあ。それだけ防衛に関しては充実してるって事」


「ほーん」


「飛竜が向かってる事も既に察知していて、きっと何処かに避難してるんだよ」


「なんだ、じゃあ慌てる必要なかったね」


「でも何が目的なんだろうね? ここに住む人達が目的なのか、クリスちゃんが言うように『オアシス』の資源が目的なのか」


「どちらにせよ、『蟻地獄』に飛竜がいる事自体が異常なんだよ。悪い予感しかしないけどね」


 なんにせよ追っ払わなきゃダメか。どっちみちここって私に振り分けられた区域だし、それも魔王業の内だよね?


「直接聞いてみよっか」


「直接? 飛竜にかい? 流石に言葉は喋れないんじゃないかな」


「ほら、あそこ。一匹だけなんか偉そうなのいるでしょ」


「んん? あ、本当だね。……誰か乗ってる?」


「防具もつけてるね。でも、最初からいたっけ? あんなに目立つ飛竜なのに気づかなかったよ」


「いなかったよ、なんか出てきた。うみょーんって出てきた」


「うみょーんって出てきた? 恐らく移動系のスキルだね」


「よし、クリス! 行ってこい!」


「あ、逃げた! でもクリスちゃん溶けてきてるからなんか遅い」


「こら、逃げるな!」


「やだよ! どうせ僕をブン投げるんでしょ!? さっき空から命からがら降りて来れたばかりなのに!」


「学ばない奴め。私から逃げれると思ってんのか!」


「く、かくなる上は! 必殺『分身』!」


 分身だと!?こいつ、いつの間にこんな技を?


「うわあ、クリスちゃんがいっぱいいるよ。なんか嫌だなあ」


「はっはっはっは、どうだあ? どれが本物か分かるまい、小娘よ。はははは! バーカ、バーカ!」


 このやろう、ここぞとばかりに煽りやがって。


「バーカ! 脳みそ筋肉女!」


 うぜえ!調子に乗りやがって!


 しっかしこの光景、正に地獄絵図。こいつの大量発生を目の当たりにすると上の飛竜達が可愛く見えるわ。


 しかもご丁寧に分身体から匂いまで発してやがる。


「クリスちゃん、大きな声出さないで。全部同時に喋るとエコーがかかってすごい嫌」


「はん、なんとでも言うがいいさ! たまにはそこの子犬ちゃんをブン投げればいいんだよ! あほ!」


「どうせ一体だけ溶けてんのが本物だろ? おら!」


「な、なに!? 見破られただと!?」


(良かった、わたしが投げられるところだったよ)


「は、離せ! 悪魔っ! 鬼っ! 魔王!」


「よーし、今まで体力テストのボール投げで本気出せなかった分をここで発散させるぞー」


「不吉な事言うんじゃないよ! やめろ、離せ!」


「クリスちゃん。わたしは犬じゃないって何回も言ってるよね?」


「……そんな事、言ってないよ」


「言ったよね?」


「……子犬ちゃんって言ったんだよ。犬とは言ってないよ」


「朱里ちゃん、思いっきりお願いします」


「任せて」


「う、裏切り者! なんだその笑顔は! 僕が力を手にしたら絶対仕返ししてやるからな!」


「行ってらっしゃい、クリスちゃん(笑顔)気をつけてね(はあと)」


「気をつけようがあると思う!?」


「よーし、いっくぞー! おりゃー!!」


「お、おぼえてろー!」


「うわっ、砂埃が! 凄いスピードだよ! あ、あれ!?」


「やば! 偉そうな飛竜に直撃しちゃった!」


 あ、墜落した。乗ってた奴平気かな?ムポポペサの奴ってなんか丈夫だから平気か。


 まあ、どうせ追っ払うつもりだったし、頭を先に落とすのは常套手段だもんね。別に気にしなくていいよね?


「てか、うるさっ! 飛竜達がギャーギャー威嚇してきてる」


「やっぱりクリスちゃんが直撃したのがボスだったんだね」


「おーい、大丈夫? ごめんね。ぶつけるつもりは無かったんだけどさ」


【く、流石は魔王ですね。まさか反応出来ない攻撃を仕掛けてくるとは】


「あれ!? この声ってライカ!?」


「ライカさんも人型に?」


「良かった、怪我は無さそうだね。ねえライカ、なんでこんなに沢山引き連れて『蟻地獄』に?」


【魔王・朱里、私はロンド様より『オアシス』を占領の命を受けております。邪魔立てするようならその命を賭けても奪い取れとも】


 あんにゃろう、側近を使い捨ての駒とでも思ってんだろうな。ライカが健気だから余計に可哀想に思えてくる。


「ライカ、私は『オアシス』の事まだよく分からないけど、一応ここは自分の受け持つ区域だし、住民に手を出すならそれは見逃せないよ」


「ライカさん、なんでここを占領しようとするの?」


【わざわざ敵に情報を渡すとでも?】


「そんな、敵だなんて」


「出来ればアンタと戦いたくない。何とかならないの?」


【言えません、口を割らせたいなら私と戦って下さい。情けをかけられてノコノコと逃げ帰る訳にはいかないのです】


「情けをかけている訳でもないんだけどね」


「朱里ちゃん、わたしが戦うよ」


「リルちゃんが?」


「側近同士だしね。わたしは出来れば皆と仲良くしたいけど、ライカさんの気持ちも少し分かるんだ」


「気持ちが?」


「ご主人様の為なら頑張れるって所! だからわたしま戦う。いつまでも朱里ちゃんに甘えてられないしね!」


「そうだ、そうだ! 僕ばかり大変な目にあってるぞ!」


「お、流石だね。ノーダメージじゃん」


「あのね、心には深い傷を負っているんだよ? 明るく振る舞ってるのは僕の寛大な心持ちのおかげだからね」


「はいはい」


「キャラ的に琥珀はブン投げないだろうし、リルちゃんブン投げる訳ないだろし、ミラだって本当は変なのになんか猫被ってるし」


「さりげなくミラの悪口言うなよ。お前が投げられるのはそういう所だよ」


【ふざけるのもそこまでにしてもらいますよ。フェンリルを倒したら次は貴女ですからね】


「朱里ちゃんとは闘えないよ。わたしが勝つんだから」


「まさかここで再び側近の対決が観れるとは! 無料でやるなんて勿体無い! 日付を改めて料金取るべきだよ!」


「……お前のマイペースはマジで見習いたいよ」


「本気で言ってる? 朱里も大概だよ」





 クリスと話しているといつの間にかリルちゃんが魔法少女に変身していた。


 その姿は相変わらず凛々しくて、可愛くて、今すぐにでも抱きつきたい位だ。


 だけど本当に驚いたの次の瞬間だった。


 まさかライカまで魔法少女に変身するなんて思ってもいなかったから。


 ムポポペサの住人は戦う時にこの姿になる必要があるのだろうか?


 とりあえずクリスにお願いして一眼レフを出してもらい、二人の姿を写真におさめたのは言うまでもない。

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