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曖昧。

 領地分配はおじいちゃんが会議に参加した事もあってか、とてもスムーズに進んだ。


 流石、おじいちゃん。長年魔王やっていただけあって司会、進行はお手のものみたい。


 霧丸とロイドがまた言い争いを始めるかと思ったけど、それぞれが元々住んでいる領地を広げる形でなんとも簡単に話がついた。


 私は領地なんてどうでも良かったんだけど、そういう訳にもいかないらしく、二人と同じ範囲の領地を受け持つ事になってしまった。どうやらある程度の管理や統率が必要みたい。


 そこら辺は琥珀とミラが上手いことやってくれるよね?だって私にできる訳がないし。


 といっても、おじいちゃんから引き継ぐ領地なんだ。そこまでの心配もいらないと思う。


「いきなり吐いちゃって悪かったね! お爺ちゃんがザルだから参ったよ」


「いや、恥ずかしくも熱くなってしまっていた所だったんだ。頭を冷やすのに丁度良かったよ」


「ロイド、あんた『小竜王』とか呼ばれてるらしいじゃん。最年少なんだって?」


「なぜそれを? ……霧丸か。口の軽いやつめ」


「お前もうその姿いいだろ、いつもの姿に戻れよ。喋り方だって気持ち悪いぞ」


 いつもの姿?確かにロイドは『小竜王』なんて言われるような姿には見えないよね。


「……今日は遠慮しておく。さて、終わったならもう行かせてもらうよ。カルア、行くよ」


【ロイド様、よくぞ耐えてくれました】


【はらわたが煮えくり返る思いだよ。先代の爺さんがいなかったらここで皆殺しにしてやるのに。特にあのフェルリル、ふざけた事をぬかしやがって】


【狙い通り、我らが住まう第三区域の両隣を所有する事が出来ました。あと少しの辛抱ですよ】


【魔王は三人?ふざけやがって。俺一人で十分なんだよ。必ずムポポペサを手中にし、竜族こそが秀でた存在だという事を知らしめてくれる】


【行きましょう、ロイド様。これ以上は頭を覗かれます】


 さっさと行っちゃったよ。アイツ、本当に謝ったんだろうな?人は見かけに寄らないというか、最初のイメージと大違いだよ。


 逆に霧丸は最初から変わらないな。コイツみたいなタイプの方が分かりやすくていいわ。


「おう、俺も行くぜ。落ち着いたら俺の領地に来いよ。第六区域に鬼族の棲家がある。遊びに来たら歓迎するぜ」


「暇ができたらね」


「朱里、ロイドに気をつけろ。あいつのあの感じ、全く納得してねえからよ。何しでかすか分からねえぞ」


「はいよ、ご忠告どうも。そういうアンタも気をつけなよ」


「俺は気ままにやるさ」


「おい、烏。私は別にお前と喧嘩したいわけじゃないんだから、その口の悪さだけ直しとけよ」


「はっ、こっちの気も知らないでよく言うよ」


 何言ってんだコイツ、もうほっとくか。めんどくさい奴。


「じゃあ、達者でな」


 霧丸も行ったか。さあ、どう話を切り出すか?


「ご主人様、僕たちも行こうか」


「えっ? どこに?」


「決まってるじゃないか。受け持った区域の偵察だよ。居城だって決めなきゃいけないんだ」


「そうですよ、朱里さん。忙しくなるのはこれからですよ」


 まじかよ、息つく暇もないじゃん。


 でも私が魔王になりたかった理由なんて琥珀は知らないだろうし、職務放棄して旅立つなんて言ったら怒られるかな。自分勝手なのは分かってるんだけど。


「ねえ、一つ相談」


「相談?」


「うん。私、今すぐにでも勇者を追いかけたいんだ。そこら辺、任せてもいい?」


「勇者を? 確かにムポポペサ大陸の問題として魔王が対応しなきゃいけない問題ではあるけれど」


「受け持った区域の管理とか統率も大事なのは分かるんだけどさ、私そういうのは絶対出来ないし」


「まあ、そんな気はするけどね。僕達に任せるって事で受け取っていいのかな?」


「もちろん、ムポポペサ全土を探すつもりだから最初に自分の領地に向かうつもりだよ。だけど留まらずに旅を続けたいんだ。出来そう?」


「流石にオイラ一人じゃ無理だよ。せめてひと段落してからならまだしもね。うーん、せめてミラ、いや、ミラともう一人は必要だよ」


 琥珀、ミラともう一人か。クリスは当てにならないし、勝手な行動させたくない。


 じゃあ、リルちゃん?二つ上って事で衝撃受けたけどさ、そもそも寿命が違うんだし、実年齢的にはまだ子供でしょ?


 困ったなあ。


「お爺ちゃんに頼めば?」


「儂が?」


「うん、だめなの?」


「だめ? 引退したばかりだもんね。流石に無理か」


「まあ、じっちゃん次第だけど」


「ここに一番近い第七区域だけなら受け持ってもいいよ。そこなら琥珀の部隊も借りやすいしね。何より可愛い孫の頼みだ。断れんよ」


「やった! そしたらさ、申し訳ないんだけど長くて一年だけお願いしてもいい? 自分勝手なのは分かってるけど絶対に勇者を倒すから!」


「まあ、遊びほうける訳じゃないんだし、ご主人様が僕らを信頼してくれている証だと受け取るよ。ミラは大丈夫かい?」


「私も琥珀さんのニャンコ部隊お借りしたいです。それならなんとか」


「それは構わないよ」


「本当にありがとう。わがまま言って、ごめんなさい」


「まあ、どこもじっちゃんが統治していた場所だしね。その代わり非常自体が起きたら直ぐに戻ってきて欲しい。ご主人様のその力が必要な時は必ず来るから」


「分かった、約束するよ。その時は直ぐに戻る」


「じゃあ、ご主人様にも僕の部下を一人。通信役で使って、いつでもオイラ達に連絡出来るから」


 ちっちゃ!何この猫、リュック背負ってる!


「わあ、小ちゃい猫ちゃんだね。朱里ちゃんの手のひらサイズだよ」


「よろしくお願いします、通信部隊長のニャンジです! 趣味は盗聴です!」


(危ない趣味してるニャンコだな)


「ニャンジはスパイ活動も出来る優秀な猫なんだ。きっと役に立つよ」


「ありがとう。琥珀が側近になってくれて本当に助かってる。本当にあのバカ烏じゃなくて良かった」


「八咫烏も相当優秀だけどね」

 



 自分勝手でわがままなのは分かってる。おじいちゃん、琥珀、ミラ、ごめんね。


 でも、どうしてもやりたい事が出来てしまったんだ。


 おじいちゃんと両親をまた会わせてあげたいって思っちゃったんだ。


 そして記憶の戻った両親に確認したいんだよ。


 二人はムポポペサに戻りたいの?また自分達の造った世界に戻りたいの?


 後悔はしていないのって。


 私は正直、もう分からないんだよ。


 だって、自分の存在が曖昧なんだから。


 本当の自分がいるべき場所が、分からないんだよ。

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