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嘘。

「ケットシーよ、琥珀とか言ったな? お前、俺に鞍替えする気はないか?」


「ありがたい御言葉をかけて頂き光栄ですが、私はご主人様に仕えるよう指示を受けております故、その要求は受け入れる事は叶いません」


「はっ、最初はな。その後の側近の行動までを縛ってるものじゃないだろ? 要はお前次第なんだよ」


「ご冗談を。仕事をまともにこなす前に鞍替えする忠誠心の無い側近など、そちらに私が仕えてもまた直ぐにいなくなる事は明白では?」


「良く口が回る奴だ。まあ、今日は見逃してやるよ。考えておきな」


「お前は見境が無いな、霧丸。こんな閉鎖空間で勧誘等したら、琥珀君が困るのは目に見えているだろう?」


「お前は馬鹿真面目過ぎるんだよ。只でさえ手につけられそうにないおてんば娘に、優秀な側近が付いているんだ。戦力を削いでおいて何も困る事なんて無いだろう?」


「まあいい。琥珀君、先代達が戻ったら声をかけてくれ。それまで向こうで休んでいるよ」


「俺もそうしてくれ。コイツといると気が狂っちまう」


(行っちゃった。それにしても気まずい。魔王二人に先代に仕えていた優秀な側近。そこにちょっと荷物が多めに入れられるスライムだよ?朱里、早く帰ってきて!)


「ちょ、ちょっと琥珀! 僕って余りにも場違いじゃないの!? 息が詰まるなんて嘘でしょ!?」


「あのままだと、家が破壊されかねなかったからね。じっちゃんに怒られるくらいなら無理にでも場を収めた方がいい。危険な存在を拘束するのは当たり前だろ?」


「だからなんで人畜無害の僕まで連れて来るのさ!」


「言ったろ? 危険な存在を拘束したんだ」


「ははーん。なるほどねえ、そう言う事か。僕を会議に参加させないつもりなんだね」

 

「さあ、どうだろうね?」


(針鼠はそれ程の存在なのか?それでも僕は!しかし、無力な僕にはどうする事も出来ない)


「困ったね!」


「少しの間でいいんだ、大人しくしておいてよ。ん? 戻ってきたかな?」


「朱里達かい?」


「うん。鬼の魔王様、竜の魔王さま、先代達がお戻りになられました。拘束を解かせて頂きます」


 

 ———



「とうちゃーく!!」


「は、速いよ、朱里ちゃん! 息が出来ない位速かったよ! 先代様も途中から無口になってたからね!?」


「ええ!? ごめん! おじいちゃんも平気だった?」


「凄いな、スキルと身体能力が噛み合いすぎてる。しかし、こういうとこは母親に似たかな? 思い立ったら一直線だ」


「そ、そうかな?」


「朱里さん! ちょっと問題が起きてしまって、すいません!」


「問題? 問題って何さ」


 あれ?ミラしかいないじゃん。クリスと琥珀は?


「おい! ピーマンゴリラ! 早くあの化け猫に拘束を解除するように指示しろ!」


「ああん? ピーマンゴリラだあ!? 誰に断ってハイブリット生物作り出してんだ、このアホガラス! 口の聞き方気をつけろよ、このやろう!」


【魔王・朱里様。我が主人と鬼の魔王が諍いを起こし、琥珀殿に拘束されています。解除をして頂いて宜しいでしょうか?】


「え? あ、カルア? ビックリしたよ」


【朱里様、お願いできますか?】


「そんな事言っても、どうやって琥珀を呼べばいいか分かんないなあ」


「それでも魔王? 先が思いやられるね」


 こいつめ、口の減らない奴だな! まだクリスの方が可愛げがあるよ!


「諍い? なんだ、鬼と竜が喧嘩でもしたか。仕方がない奴らだ。カルアとやら、安心しなさい。私達が戻ったんだ、直ぐに現れるよ」


【私の念話を読み取った?そんな馬鹿な】


「儂の得意技じゃよ。ほら、あそこを見てごらん。もうじき割れるよ」


 もうじき割れる? 


「あ、朱里さん。あそこの空間がひび割れてます」


「うわ、何あれ? あ、皆が出てきた!」


 なんだあれ。空間が割れた!割れるってそういうか。


「霧丸様! ご無事でしたか!?」


「ああ、心配かけたな」


 アホガラスめ、その可愛げを少しでも他に向けろ。


「おかえりなさい、ご主人様。ちょっと問題が起きてしまってね。じっちゃん、もう話は終わったの?」


「ああ、一悶着あったみたいだな」


「途中まで放って置いたけど、流石に家を破壊されたら困ると思って『力』を使ったよ。早計だったかな?」


「いや、良くやった。やっと隠居が出来るのに住む場所が無くなっては敵わんからな」


「琥珀、クリスは?」


「えーと、ちょっと説明が難しいんだけど。じっちゃん、どうする?」


「ふむ、どうするかな? 朱里や、スライム君と話がしたいんだが少し借りてもいいかな?」


「うん、全然いいよ! 返さなくていいよ、あげる」


「はは、ちゃんと返すから大丈夫だよ。琥珀、よろしく頼む」


「じゃあ、行くよ! 『箱庭乃封緘印』!」


「おわぁ! おじいちゃん、消えちゃった」


「オイラ達は先に戻ってようか? 流石にあの二人も大人しくするだろし」


 クリスとおじいちゃんが話か。あの二人もなんか接点あるの?クリスもなんか怪しい時あるし、後で問い詰めてやる。


 ん?霧丸?


「よお、朱里。悪かったな。少し小競り合いをしてな」


「すまなかったね。そこのケットシーに手を煩わせてしまったよ」


「なに? あんた達、喧嘩したの? あまりウチの可愛い側近を困らせないでよね」


「ご主人様、いいんですよ。さあ、鬼の魔王様と竜の魔王様も行きましょう。今度は諍いなしでお願いしますよ」


 ふう、やっと落ち着けるよ。領地の分配が終わったら直ぐ解放されるのかな?こうしてる間にも、勇者や天音に動きがあるかも知れないのに。


 とりあえず会議が終わったら勇者を追おう。一年なんて待ってられないし。でも、私って勇者を倒して何を願えばいいんだろう。


 帰るの?創造された世界に?


 あの世界でお父さんとお母さんは幸せなのかな。もうムポポペサには戻りたく無いのかな。


 私はあそこに帰りたいのかな?


「……人様、ご主人様ってば!」


「ん? あ、ごめんね。考え事してた」


「じっちゃんから話は聞いたんだろ? この部屋で待ってて。竜と鬼の魔王を部屋に案内したらお茶持ってくるから」


「あ、琥珀ちゃん! 私も手伝うよ」


「本当かい? それは助かるよ。じゃあ、ついてきて」


「朱里ちゃん! お仕事行ってくるね!」


「うん、いってらっしゃい」


 ふふふ、リルちゃんには癒されるね。……帰ったらリルちゃんに会えなくなっちゃうんだよなあ。


 それは寂しいな。連れて帰りたいよう。


「朱里さん、この部屋なんか可愛らしい部屋ですね。なんていうか、先代様もらしくなき部屋と言いますか」


「本当だね。ん?」


 もしかしてこの部屋って、あ。


「写真……」


「はい、本当ですね。こんなに沢山写真が、あれ? 先代様と一緒に人族が写ってますね。結婚式かな?」


「こんなに沢山あったんだね」


 こんなに、大切に想っていたんだね。


「こっちには赤ちゃんの写真」


(ん?これって)

「ねえ『女神通信』だっけ? 色んな情報が載ってるやつ」


「はい。アカシックレコード、とまではいかないですが相当大量の情報が現在進行形で増え続けています。それが何か?」


「ここってさ、多分だけど私の両親が使ってた部屋なんだよね。さっきおじいちゃんに聞いたんだ」


「え? じゃあこの夫婦と赤ちゃんって」


「私と、私の両親」


「なるほど、だからご両親の情報が少なかったんですね。先代が絡んでいたなら納得です」


「ねえ、ミラ? 針鼠の事なんだけ……」


「ダメですよ、変な事考えないで下さい」


 く、食い気味に断ってきた。でもここで引くわけにはいかないよ!


「お願い、ミラ。知っている事だけでいいの! お願い! ね?」


「ダメです」


「分かった。じゃあ『女神通信』の場所教えて」


「な、何を考えてるんですか?」


「教えてくれないなら『女神通信」をこの目で確かめに行くんだよ! 強行突破で行くから! 知らないからね!」


「なっ! 無茶言わないで朱里さん。それも無理です! 神を敵に回しちゃいますよ」


「だってミラが教えてくれないだもん。もう、いいよ。他の人に聞いてでも絶対に見に行くから」


(な、なんか本当にやり遂げそうだから困るなあ。うーん、情報を聞いて落ち着いてくれるなら)


「……情報だけですよ? 針鼠に近づこうとするなら、私は命に変えても止めさせてもらいますから」


「やった! ありがとう、ミラ」


「まったく、クリスさんとはいつも言い合いするのにこういう所は、あ」


「ん? クリス? なんでクリスの話が出てくるのさ」


「え! ええっと……なんででしょうね? 私も不思議です」


(や、やばい!口が滑った!)


「怪しいなあ。ミラ、なんか私に隠してるでしょ」


「か、隠す!? 私が!? そ、そんなわけ」


 怪し過ぎる。ミラは嘘つくの下手なんだろうな。私に怪しまれるくらいだから絶対下手だよ。


「ミラ、口が軽いのはダメだよ。うっかりとはいえね」


「琥珀さん! ご、ごめんなさい」


「琥珀、リルちゃん、お疲れ様。もういいの?」


「部屋に案内してお茶出すだけだからね。リルが手伝ってくれたから、あっという間だよ」


「朱里ちゃん、どうしたの? 何かあったの?」


「ミラがね、嘘をついてるんだよ! 元女神なのにダメでしょう?」


「ミラさんが? ダメですよー! 嘘はいけませんよー!」


「嘘と言いますか、なんと言いますか。ゆ、許してくださいよう」


「あまりミラを責めないであげてよ。会議が終わったら、じっちゃんに話をしてもらおう。もうそれがいいよ」


「おじいちゃんに?」


「琥珀さん、いいんですか?」


「もうオイラとミラだけじゃ抑えきれなそうだしね」




 初めて琥珀が来た時に三人で話してた事だろうね。


 なんかあの時怪しかったもん、私は分かってたからね!もしかして、これが女の勘ってやつ?


 ふふ、私も一人の女性として日々成長をしているようね。


 クリスめ!何を企んでるか知らないけど、隠し通せると思うなよ!

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