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お願い。

 ど、どういう事!?


 いきなり大量の情報が入ってきて、脳の処理が追いつかない!


 くっ!情報が錯綜しすぎてて頭痛がするよ!


 お父さんと、お母さんが?


 ムポポペサが私の生まれた場所?


 私の住んでいた場所は創造された世界ってなんだそれ!?


「その様子だと、ご両親からは何も聞かされていないのですか? 朱里さんのご両親は、ムポポペサで生まれ育ったんですよ」


 ちょっと待っておくれよ。じゃあ、お父さんとお母さんはムポポペサのキャラなの? 


「しかし驚いたね。そんな世界線があるなんて。朱里が言葉を失うのもなんて相当だね」


「う、うん。ビックリして少しだけ混乱してる」


「ミラさんは創造した世界と言ってましたよね。朱里ちゃんのご両親が創造したって、一体どういう事ですか?」


「針鼠の悪魔を、皆さんはご存知ですか?」


「針鼠の……悪魔?」


(針鼠!?僕が探している悪魔!なるほど、そういう事か。朱里の両親は針鼠と契約をしたのか)


「強欲の針鼠。お布施した金額によって、願いの大きさは変わりますが、一度だけその者の願いを叶える悪魔。朱里さんのご両親が契約した悪魔です」


「わたし、小さい頃にお父さんから聞いた事があるよ。ムポポペサの悪魔達の話」


「詳しい事情までは、私も分からないです。朱里さんのご両親は針鼠と契約を交わし、新しい世界を創り出した。『女神通信』の記録にはその様に記されています」


「朱里が規格外なのは、この話にも関係してそうだね」


「クリスさんの仰る通りですね。ただでさえ高かった朱里さんの能力。それがムポポペサに来たことにより、発動したスキルと合わさり覚醒をしたのでしょう」


「朱里ちゃんは勿論この話は知らなかったんだよね?」


「勿論だよ、全く知らなかった。でもなんで? なんで教えてくれなかったんだろう」


「ここからは私の推測でしかありませんが良いですか? 単純に伝えるのが難しかったという理由もあると思いますが、契約の代償により記憶が奪われている方が可能性としては高いです」


「お父さんと、お母さんの記憶を?」


「はい。先程言った通り、針鼠はお布施に見合った願いを叶えると言われています。だけど、針鼠は悪魔なんです。悪魔との契約には代償もあります」


「代償として記憶を奪われたという事か」


「あくまでも推測ではありますけどね。それに代償として奪われるのは何も記憶に限定されるわけではないです。なので断言は出来ませんが、可能性の一つとしては挙げられます」


(やはり、それなりのリスクは覚悟をしなければならないか)


「……朱里ちゃん、大丈夫?」


「ありがとう、リルちゃん。大丈夫だよ。本人達に聞かなきゃ真相はわからないしね。なにかしらの理由もあるんだろうし」


「もっと慌てるかと思ったけど、そうでもなさそうだね」


「私は、私だもん。どんな理由があったとしても変わらないよ。ミラ、腹中黒の事も教えてもらっていい?」


 本当は凄い驚いたし、混乱だってしてるし、慌ててもいる。でも考えたって、悩んだって仕方がないよ。


 なにより、リルちゃんが心配そうだしね。


 結局の所、私は腹中黒を討伐する事には変わりはないんだ。


 私の事はその後でいい。


「分かりました、勇者の事ですね? あの人間は朱里さんと違って、転移はしていないんです」


「勇者が転移をしていない? じゃあ、なんでムポポペサに?」


「あの方は朱里さんが育った世界線で命を落としています。簡単に説明すると生まれ変わりです、転生と言った方が分かりやすいかも知れませんね」


「え? 腹中黒って死んじゃったの!? 嫌いだったけど、亡くなったって聞くといたたまれない気持ちになっちゃうよ。持病が悪化でもしたのかな」


「そして死の瞬間に拾われたんです。黒翼の女神に」


「黒い翼……天音か。それで腹中黒を」


「黒翼を持つ女神達は、朱里さんが生活していた世界線の女神です。そしてムポポペサを奪おうと、資格のある人間を転生させてこちらに送って来るのです」


 そんなのいたんだ。創られた世界なら女神がいようがなんだろうが不思議ではないのかな?


「天音に言われたんだ、案内人に会った方がいいって。それで私達はミラに会いに来たんだよ。アイツ、こうも言ってた。勇者が倒されなければそれでいいと」


「要は勇者の邪魔立てをしなければ、あちらはそれで良いって事か」


「ねえ、ミラ。もう一つ聞いてもいいかな? なんで私は選ばれたの?」


「私が在籍していた会社は、勇者の蛮行を止めるべき立ち上げられたのです。その可能性が高い人物を常に探しています」


「それで朱里ちゃんに目をかけたのね」


「時空間移動のスキルを使って時間軸の違う異世界を探し回る人達もいれば、ムポポペサ大陸を周り探している人達もいますよ」


 時間軸の違う異世界?


「え? それって」


「時空間移動のスキルだって? それって朱里が使えば帰れるんじゃ」


「はい、帰れます。朱里さんはそれをお望みですか?」


 か、帰れる?腹中黒を討伐しなくても!?


「本来なら、もっと早く伝えなければならなかった事ですが、私が引きこもりをしていたばかりにお伝えすることが遅れてしまいました。……すいません」


 その件に関しては私のせいと言っても過言ではないので仕方がないか。


「……朱里ちゃん、帰っちゃうの?」


「え?」


 正直な所、帰りたい気持ちは勿論ある。けど、勇者はどうなるの?そしてムポポペサはどうなってしまうのだろう?


「ミラ、私がムポポペサを自由に行き来する事は出来るの?」


「帰る事は出来ます。それは転移者の権利です。勝手にムポポペサに連れて来ておいて、そのまま放置なんて無責任すぎますもんね」


「じゃあ、一旦戻ろうかな?」


「……ただ、再びムポポペサ戻る事はできません。時空間移動のスキルを第三者にに使えるのは、行き帰りの一度のみなんです。それ以上はスキルを使う事ができません」


「じゃあ朱里ちゃんが帰ったら、もう会えないの?」


「はい、残念ですが」


「だったら今はここに残るよ! せめて勇者の討伐はしないとムポポペサが大変でしょ?」


「即答だね。良いのかい?」


「戻って来れないなら仕方がないよ。それに皆を大変な目に合うって分かってて帰るのはちょっと気が引けるし」


「朱里ちゃん、そんな事を気にしないでもいいんだよ。だってここに連れて来られなければ、朱里ちゃんには関係の無い話だもの」


「いいの、いいの。なんだかんだ私もムポポペサが好きだしね。乗りかけた船だもん。勇者はやっつけちゃうよ!」


「……私も頑張るね。朱里ちゃんだけに大変な思いさせるわけにはいかないよ!」


「ありがとう、リルちゃん。なんかさ、色々考えてたらお腹空いちゃったね! リルちゃんご飯食べに行こうよ」


「うん、そうしよう! 私の家でたべよ! ご招待するよ」


「やったー! 行こう、行こう!」


「二人共早いなあ。もう行っちゃったよ」


「私達も行きましょうか」


「しかし、ミラ。君が勤めていた会社はすごい所だったんだね」


「会社とは謳っていますが、神が集う組織ですからね」


「そういう意味じゃなくて」


「どういう意味ですか?」

 

「朱里のああゆう性格も織り込み済みで転移させたんだろう? ミラが画策している訳ではないだろうけど、ムポポペサを守る為とは言え、中々に狡猾だね」


「……手段を選ばないと言われたらその通りです。だけどムポポペサの為でもあるんです」


「まあ、僕にはどうする事も出来ない事だし、ミラもクビになってしまったんだから、考えても仕方がないか」


「すいません」


「謝る事なんてないよ! あ、ミラに一つだけお願いがあるんだけどいいかな?」


「……? お願い、ですか? なんでしょう」


「そう、お願い。強欲の悪魔、針鼠に会う方法を教えてくれないかい?」

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