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なんてこったい。

 聞くところによるとミラの上司はかなり怒っているらしく、懲戒免職だけではなく損害賠償も辞さない厳しい構えを取っているとの事だった。


 なんか小難しい言葉が並んでいて理解に苦しんだが『クビ』という単語の意味だけはかろうじて理解出来た。


 なんてこったい。私は女神の人生を滅茶苦茶にしてしまった。


 頭の輪っかは女神という存在を示すアイデンティティであって、決して失ってはいけないものだったらしい。


「私は一体どう責任を取れば良いのでしょうか? このちっぽけな命一つでお許し頂けるのでしょか?」


「はは、朱里が村長みたいな事言ってるよ」

 

「クリスちゃんも面白がってたのも悪いんだからね! すぐに具現化の事を朱里ちゃんに教えてあげれば良かったのに!」


「へえ、すんません。反省してまーす」


 こいつめ!自分は一ミリも悪くないと思ってるな!?


 確かに輪っか破壊したの私だし、全面的に悪いのは私なんだけど、なんかムカつく!

 

「仕方ないんです。輪っかを失った女神は肉の無い牛丼。味噌の入ってない味噌汁、種の無いピーマンと同じ存在なんです」


「でもさ、朱里のスキルで元通りになったんだよ? しかも更にその神々しさを増してね。これを見せれば上司さんも考え直してくれるんじゃないかな」


「それだ! 今から届けに行こう! 私、ミラの上司に謝るよ!」


「お気持ちだけで大丈夫ですよ。でもよかった。それなら損害賠償は免れる事が出来そうです……だけど本当にもういいんです。丁度いい機会だったと思います。私ってギリギリで女神の採用試験に受かったんですけど」


(採用試験とかあるんだね。なんか会社員みたい)


「受かった時は本当に嬉しくて、初めはすごい張り切っていたんです。だけど、いざ仕事を始めてみたら私には向いてなかったみたいで」


「本当にごめんなさい。私が調子に乗って振り回したばっかりに」


「いいんですよ、気にしないで下さい! 開き直れば私もこれで晴れて自由の身。こうなったら朱里さん達と一緒に旅に出ちゃおうかな? はは、なんちゃって」


「本当かい? ミラが良ければお願いしたいよ。朱里も喜ぶと思うよ? ね?」


「ミラが一緒に? そりゃあ、案内人の仕事をしていたミラが同行してもらえるのはありがたいけど」


「え? 本当ですか? ふふ、なんか変な感じですね。女神から一転、魔王様の付き人か。それも悪く無いかも知れませんね」


「まだ魔王じゃないんだけどね。勇者のせいで大会中止になっちゃったから」


「はい、勿論知ってますよ。あれ? まだ聞いてませんか? 今回の魔王は最後に残っていた人達で決定ですよ。大会本部長から会社に連絡きましたから。会議で承認されてましたよ?」


 ええ!?いつのまに決まったの?


 知らない間に魔王になっちゃったよ!


「なんだって? じゃあ最後に残ってた四人、いや天音は違うから、三人が魔王になるのかい!?」


「は、はい。複数人が魔王になる事は前例がない訳じゃありませんし。側近の方々の配属先も決まってますよ」


(やった、やったぞ!遂に朱里が魔王に!」


「ええ? 配属先とかあるんですか!? 違う魔王様に配属だったらどうしよう」


「私がリルちゃんを手放すなんてすると思う? そうなったら側近のトレード交渉するから大丈夫だよ。相手が応じなかったら武力執行も致し方なしだね」


「安心してください。朱里ちゃんには勿論リルさんが配属されています。後は猫の王様であるケットシーが配属される予定ですよ。彼は前回の魔王様の側近でもありました。とても優秀なんですよ」


「え!? 良かった! 他の魔王様に配属されたらどうしようかと思ったよ」


「二人も朱里に? 確かにケットシーって優秀だって話だよね。 そうか、側近は四人選出されて、魔王は三人だからか。でも、なんで朱里に二人配属されたんだい?」


「朱里ちゃんが一番優秀だったからです。満場一致でしたよ」


「それにしてもケットシーか。犬と猫がお供なんて、まるでペットみたいだね!」


「……じゃない」


「え? なんだい?」


「犬じゃない! お、狼だもん! 一緒にしないで!」


(こ、怖っ!ガチギレじゃないか!」


 リルちゃんが本気で怒ってるの初めて見た。ワンちゃんみたいで可愛いと思っていた事は絶対に墓まで持って行こう。


「と、ところでさ、魔王って何するの?」


「さあ?」


「まず、先代の居城に出向いてもらい、そこで引き継ぎをしてもらいます。今回は魔王が三人選出されたので治める土地の分配などもあると思いますよ」


(すごい!世界を三分割じゃないか!上手くやれば朱里を傀儡の王とし、税金が取り放題だ!)


「……なんか面倒臭そうだね。私さ、委員会とか大嫌いだったから。思い出したら吐き気がしてきたよ」


「しゅ、朱里ちゃん? まだ魔王になって数分だよ?」


(リルちゃんが側近じゃなかったら明日には辞表出しそうな勢いで面倒臭がってるな)


「ふふ、朱里さんらしいです。まだ先代の居城に向かうまで時間はあります。なんとなくでいいので、心の準備だけはしておいて下さいね」


 あ、嫌すぎて鳥肌まで立ってきた。はあ、リルちゃんが側近じゃなかったら辞めたいくらいだよ。


 ミラには本当に悪い事しちゃったな。でもムポポペサで魔王のお供をするのって良い仕事の筈だよね?


 ミラの為にも、リルちゃんの為にも頑張るとしますか。


「朱里ちゃんのお父様とお母様も、ムポポペサで愛を育み、そして自らが創造した世界へと旅立って行ったんですものね。こうして生まれ故郷のムポポペサへと朱里さんが導かれたのも何か運命を感じますね!」


「うん、そうだね。お父さんとお母さんが愛を育んだムポポペサで私は産まれて、二人は自ら創造した世界へと旅立ったんだよね。そして私は運命的に生まれ故郷であるムポポペサへと再び導かれたんだよね!」


「へえ、そうなんだ。なんか素敵だね」


「運命ってやっぱりあるのね。素敵」


「そうですよ。運命は大体決まってますよー」


「うん。素敵だし、本当に不思議。運命ってあるんだね。……って、おいっ!!!!」


「うわ、急に大きな声出してどうしたんですか? ビックリしちゃいますよ」




 な、なんてこったい!


 ビックリしちゃいますのはこっちでございますよ!?


 お父さんとお母さんが、愛を育んだムポポペサ!?


 私の生まれ故郷がムポポペサ!?

 

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