開戦。
ピー、ピー、ピー。
「最果て町の魔法少女に告ぐ。最果て町の魔法少女に告ぐ。南西の方角に魔獣が出現。危険レベル3。現場近くの魔法少女は直ちに魔力感知で魔獣を特定し、現場に急行せよ。繰り返す——」
ど、どえええー!?き、緊急指令!?せ、折角の井太利亜の海先輩との初デートなのに。
……とほほのほ。
「あれ? 朱里どん。腕時計が鳴っているよ。アラームかい? もしかして何か用事でごわすか」
「ちちちちち、違います、違います! あはははは。め、目覚ましの時間を間違えたのかなー? あは、あはははは」
「そうかい。ふふ、それなら良かったどすこい。ここの、名物『ケチャップタピオカ特盛うどん』は是非とも朱里どんに食べて欲しかったんだ」
え?嬉しい。私は先輩といられるだけでも嬉しいけど、そんな事思ってくれてたなんて。
「最近ちゃんこ番が忙しくてね、なかなか誘えなかったんだ。いやこれは言い訳だな。君を誘う勇気が出なくて、やっと今日この日を迎えられそうだよーい、はっけよーい」
ドキン!井太利亜の海先輩、私を誘うのに勇気が?
……なんで?これって私、期待しても良いの?
ビー、ビー、ビー!
……な、なんで私は魔法少女なの?好きな先輩とゆっくりデートも出来ない。なりたくて魔法少女になった訳じゃ無いのに。
「……あ、あの先輩」
むがっ!!
せ、先輩、急に私の口に大量の粗塩を詰め込んできた!?ゆ、指が唇に当たってる!やーだー!
「いいんだ、行くんだ。朱里どん。何も言わなくていい。大切な、大切な用があるんだろう? 僕はここで時間の許す限り四股を、踏んで待ってるでごわす」
このドキドキは、塩分過多による血圧上昇のせい?
それとも……先輩。私本気になっていいの?
ごくん。
「先輩! 私、すぐ戻ってきます!」
「待ってるよ、でも無理はしないで。今日がダメでも、おいどんがまた勇気を出せばいいのでごわすよ」
キャラが定まって無い所も含めて大好きです、先輩。魔獣を退治して帰ってきたら、今度は私が、私が勇気を出すんだ!
「行ってきます!」
「こんな女子ばかりのカフェで褌一丁か。これもまた一興。いってらっしゃい、子猫ちゃん」
よーし!待ってろよ!魔獣のヤロー!
恋の力を勇気に変えて。
トキメキ魔法少女の朱里ちゃんは今日も魔獣を粉微塵にするよ!
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……夢、か。
夢、だよな。かー、だよねー!
二度寝すれば夢の続き見れるかな?
違う、違う!今日は私の初戦なんだから夢現から覚めなくては!
「おはよう! 今日の解説頑張っちゃうから、朱里ちゃん絶対勝ってね!」
「おはよう! 任せて! リルちゃんのアドバイスは無駄にしないよーい、はっけよい!」
「うん。そ、そうだね」
(な、なに?はっけよい?)
(寝ぼけてるな。まあ、リラックスしてるのか?)
準備運動がてら前回り受け身を連続で行いながら会場に辿り着いた私は、改めて参加者の多さに驚いた。
皆、魔王になる為に気合十分だ。
「僕達は解説席に行くよ! 朱里は突き当たりの右にあるBフロアだよ。場所わかるかい? 右と左の違いは分かる? Aの次がBだからね」
「馬鹿にすんなよ。Bの次はDだろ? 右はお前を葬り去る方の手だよ」
「絶好調そうで安心したよ!」
「く、くれぐれも無理はしないでね」
リルちゃんは苦笑いをし、クリスは笑いを堪えながら解説席へと向かった。
……Bの次はEだっけ?
『参加者の皆さん、対戦票に従って各ステージにお集まり下さい』
あの案内してる河童スーツ着てる。河童って沢山いるんだね。
私はBフロアだね。よし、早速向かおう。そうしよう。
「うわ、広いなあ。障害物もある」
武器もありって言ってたよね?必要そうなら私も具現化で武器出そうかな?
『各自、ステージのお好きな位置に配置をお願いします』
見るからに魔術師みたいな人達もいる。耳打ちをしている所から見ると仲間内かな?
とりあえず魔術に気を付けて出来る事をやるしか無い!
『カウントダウン始まります!』
「さあ、いよいよ始まります! 初日の総当たり戦、勝ち残るのは一体誰なのか?」
「河村さんが昨日とは打って変わってのハイテンションですね」
(朱里ちゃん!頑張って!)
『試合開始!!』
「おおっと! 開始早々Bフロアで爆発音が鳴り響いたぞ! 爆発音と共に、大きな土煙が巻き上がってます! おや? 何人もの参加者が吹き飛ばされて出てきましたね」
(朱里だな)
(朱里ちゃんだ!)
朱里ちゃんの秘策、二つ目!
細かい事は後で考える!!
攻撃は最大の防御!!
目の前の敵を全力でぶっ飛ばす!!