メシアに召し上がって欲しい。
「皆に挨拶してきたよ! だけどね、宴をするからって朱里を引き留めて欲しいって言われたんだよね」
そういえばそんな事言ってたな。お腹も空いてきたし、お言葉に甘えてみるのもいいかな?考えてみたら、ここで食事するにはどうしたらいいかも分からないし。魔物のご飯って少し不安だけど。
「じゃあついでに私は村長を連れて行くよ。また気絶したから。ほっとくのも何だし」
「無意識に『威圧』を発動してるんだね。それだと町に行った時に心臓が弱い魔物がみんな気絶しちゃうよ。運が悪ければ昇天だ」
あ、あるんだね。心臓。
「そうだ。宴が始まるまでにスキル操作の説明をしてあげる。折角だし、何かスキルも取得をしてみるのもいいかもね」
「本当にゲームみたいだね。私そんなにRPGやった事ないから教えてもらえると助かるよ。とりあえず『威圧』は気をつけないとね」
「ステータス出して『威圧』を押すとON、OFFの切り替えできるよ。文字が暗くなったら『威圧』が使えない状態だよ」
「出来た! 簡単だね。スキルはどうやって取るの?」
「スキルポイントの数字を押すと一覧が出てくるよ。興味を引くものがあるといいね」
「じゃあ早速やってみようかな」
おお、色々あるね。ページ数、多。
農業、釣り、大工、家事、なんでもあるな。料理!?これいいじゃん。なんかこの世界に来て初めてワクワクして来たな。
あとは—— ん?こ、これは!?
「ねえ」
「なんだい?」
「これ何? 『具現化』? 『創造』も気になるけど」
「そのままだよ、具現化。絵に描いてある物とかを具現化するって事」
「……れにする」
「……?」
「あたい! これにする!」
「わあ。目がキラキラだ」
すごいよ!このスキルを使えば勇者を倒した時の願い事が、現実世界に戻る。『恋☆どす』の世界に行く。店員の鼻の穴を一つにするの三択から二択に出来る!
「絶対にこれがいいよ!」
「いいんじゃないかな、すごく便利だと思うよ。でも——」
じゃあ早速スキルポイント振り分けてみよう!
「朱里? 聞いてる?」
めんどくさいからポイント全部入れちゃえ!えいっ!
「よし。終わった!」
「一気に全部入れるなんて豪快だね。早速試してみるの?」
「もちろんだよ。私の憧れの人、そして『恋☆どす』の主人公! 素敵な長い髷が2本あって、特徴的で素敵なもみあげの伊達男! 角界期待の幕下・井太利亜の海を具現化するよ!」
「おおー! それは楽しみだね」
よーし。この袋に向かって!
「行くよー! えい」
……?
「おりゃ!」
……??
……はっ!!
「……これってさ、もしかして絵とか写真じゃなきゃ具現化は出来ないの?」
「そうだよ。さっきも言ったよね」
し、しまった!
(首里ってお馬鹿さんなんだね。ホロリ)
あ、あのボンクラ店員が『恋☆どす』と『ムポポペサ』間違えてたの忘れてたー!
「どうしたんだい? この世の終わりみたいな顔をしながら生まれたばかりの草食動物みたいに足をガタガタさせて。今にも崩れ落ちそうじゃないか」
「やっちまった! ねえスキルってポイントの振り直し出来るかな? 出来るよね?」
「出来ないよ。説明しようとしたのに話聞かないから」
ぐはっ!「創造」にしとけば良かった!
「あのボンクラ瓶底丸メガネ店員め!」
(まっ魔王!)
「あ、村長気付いてたの? ごめん!」
「すごい! 威圧をOFFにしてるのに村長を三度も気絶をさせるなんて相当な使い手だよ」
「こうなったらサッサとレベルを上げて、スキルポイントを貯め直さないと」
「でも具現化もすごい役立つスキルだよ? 普通は取得のページから選ぶ事すら出来ないんだから」
はあ、やってしまった事はしょうがない。なんか騒いでたら余計にお腹空いてきちゃったし。
「おーい! 宴の準備ができたよ」
「あ、皆が呼んでるね! ひとまずスキルの事は置いといて宴に行こう! きっとご馳走だよ」
「本当に? 嬉しいな! 気を取り直して、ご馳走になろうかな」
「僕が村長を引きずっていくから。さあ、行こう!」
なんか村長には悪いことしちゃってるな。気をつけないと。
しかしスライムに晩御飯をご馳走になるなんて、人生何が起こるか分かったもんじゃないね。
あ、見えてきた、見えてきた。楽しみだな!ん?なんだあれ?
「……ねえ。これが宴?」
「そうだよ! すごいご馳走じゃないか!」
稲穂、酒、塩、生の大根、人参、その他、諸々ってこれ。
「御供物じゃねーか!」
(鬼婆!)
「ねえ、朱里。本当に気をつけないと、勇者を倒す前に僕達が全滅しちゃうよ」
……気をつけます。