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開幕。

「テレビの前の皆様もこの日を待ちわびていた事でしょう。ムポポペサ大陸の全国民が待ちに待った待望の日! 魔王様が定年を迎えるこの年に、新たな王がこのムポポペサ大陸に誕生します! 魔王オーディション選手権。ここに開催を宣言します!」


 遂にこの日がやって来たね!私もリルちゃんも準備は完璧、どっからでもかかって来い!


 ただ気がかりなのは、勇者の情報だけは何一つ手に入れられなかった事だ。


 私が魔王になっておびき寄せる事が出来たら直ぐに決着をつけてやる。


「魔王決定戦のメイン解説は全スライム代表のクリス・田中・ステファンさんをお呼びしております」


「宜しくお願いします。手に汗握る熱戦を大いに期待したいですね」


「そして司会、進行を務めさせて頂くムポポペサTVアナウンサー小豆洗いの河村です。宜しくどうぞ。リングに花を添えるラウンドガールは河童の大スター川流れのお銀さんが人気投票で選ばれました」

 

「お銀さんが!? こ、これは驚きですね」


(河童さん!あんたすれ違ってるよ!)


「続きまして、現・魔王さまからあいさ——」


 アイツは何やってんだ?


「驚きですね、じゃねえよ。こっちが驚きだわ。クリス・田中・ステファン? なんだそのふざけた名前は」


「クリスちゃんの奇行はいつもの事だけどお銀さんまでいるなんて。ルシアさん見事にすれ違っちゃってる」


 アイツ本当についてないんだな。


「河童はドンマイとしか言えないよ。馬鹿と河童のことより今はリルちゃんだよ! 初日から出番だもんね」


「う、うん。緊張するけど頑張って見るよ」


 魔王側近の選考方法。それは気遣いや、一般常識、マスコット的な可愛らしさが重要らしい。


 これは頂いた。うちの姫がテッペン取るに決まっとるがな。


 ん?ちょっと待て。一般常識?


 しまった!クリスと毎日勉強するの忘れてた!


「朱里ちゃん!? 顔が青いよ! どうしたの」


 待て待て待て。リルちゃんが世界を代表する愛くるしいマスコットとなる事は確実。


 一番人気断然ブッチギリに決まってる。それは圧倒的で決して揺るがない事実。そう!真理なのだから!


 と言う事は私が魔王にならないとここでリルちゃんとお別れなの?


 そ、そんな!


「今から山に籠って修行してこなきゃ。一年はかかると思う。リルちゃんそれまでお達者で」


「一年も? オーディション終わっちゃうよ」


 そうだ、もうそんな時間は無い。ゲートは開いてしまったんだ。栄光のゴール板に向かってリルちゃんはもう走り出しているんだ!


「やるしかないね。絶対魔王になってやる。そしてリルちゃんと世界の視察という名の旅行に行くんだ!」


(朱里ちゃん。それは職権濫用だと思うの)


【側近候補の皆様にお伝えします。間もなく選考会が始まりますので入場口までお越しください。繰り返します——】


「あ、呼ばれた! 行ってきます!」


「いってらっしゃい、リルちゃん。無理しないでね」


 走る姿も愛くるしいな。私も気合い入れ直さないと!


「いやー! 遂に始まったね」


「おい、田中! お前何やってんだ? 解説っていつの間に決まってたんだよ」


「わお、田中だなんて朱里は大胆だな。恋人でもないのに。各種族の代表の持ち回りだよ。驚かせようと黙ってたんだ! それにしても聞いた? はは、河童さん災難だね」


「ふふ、確かにね。それは言えるよ、ははは」


「僕の解説は魔王オーディションの方だからさ、ここでゆっくりリルちゃんを応援しようかな。でも圧勝だと思うよ。幻獣フェンリルの希少種リルちゃん。この肩書きだけでも勝てるくらいだよ」


「今まで一緒にいたから実感無いけど、リルちゃんって凄いんだね」


「只の情緒不安定な獣ではないね。あの半獣の姿を完璧な人型に変える事も出来ると思うよ」


「は!? なんでそう言う大切なことを言わないの?」


 後で絶対に見せてもらわなきゃ!


「僕が出来るんだ、リルちゃんも余裕で出来るよ。 あっ、映ったよ。リルちゃーん! がんばれー!」


 リルちゃんの愛くるしさに会場がざわめいてる!?


 ……当たり前だ。でも少し寂しいよ。まるで初期から追いかけてたインディーズバンドが世に知られた時のようなそんな気分。


(朱里に一般常識教えるの忘れてたな。でも鳥が三歩歩く間は覚えている事を朱里は忘れる位にバカだからな。教えてても無駄だったろうな)


「リルちゃんが側近になる事は確実。私は少しでも魔王になる確率を上げたいんだよ。クリス、今からでもいいから私に常識を教えてくれない?」


「大丈夫だよ! さっき河村さんに聞いたんだけど、メチャクチャ簡単らしいよ。形式だけだって言うから心配いらないよ」


「なんだあ、心配したよー!」


(僕はそれを聞いても少し心配だけどね)


「ねえねえ。こんな所で見てないで関係者席行こうよ!」


「えー! 疲れてるからここでゆっくり見たいんだけど」


「いいから、来い! この野郎!」


(問答無用で鷲掴み!?こうなると僕は抗うことが出来ないよ!)


「痛い、痛い、イタタタ! もっと優しく鷲掴んで! あーーー!」




 大切な可愛い仲間の大一番だ!


 特等席で見ない手はないよね!?

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