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買い物。

 大変だよ。わたしったら、すっかり忘れてた。恥ずかしさと不安で情緒不安定のリルです。


 オーディションの事、両親に報告しておいた方がいいかな。ムポポペサ全土で中継放送されるんだよね?


 今からカモメの超特急便に頼めば間に合うはず。帰りに郵便局に寄ってもらおう!


 でも朱里ちゃんって洋服のセンスどうなんだろう。すごい張り切ってたし、自信ありそうだったけど。


 唐突に自らの顔面へ泥を塗る人だよ?


 名誉を傷つけて泥を塗るとは言うけど、まさか直に泥を自らの顔面に塗るなんて。


 わたしも泥を塗られるんじゃ。だとしたらとびきりのオシャレとやらは、上下迷彩服の最前線で戦う兵士の様な格好になるだろうな。


 ……想像に容易いよ。クリスちゃんはその姿を見てニヤニヤ、ニヤニヤし始めて「かわいいよ」とか「お似合いだよ」とか言って馬鹿にしてくるんだ。


 許せない。自分は八頭身の気持ち悪い姿を自慢げに披露したクセに!


 心の奥では自分の事をカッコいいって未だに勘違いしてそうな所が余計に気持ち悪い。


 はー。やだやだ、絶対そういうノリだよ。


 考えるだけで歯軋りが止まらないよ。



         —————————



(リルちゃん、急に歯軋り?ストレス溜まってるの?あんなにスカートの裾を両手で強く握りしめちゃって)


 歯軋り!?どうしたの?急に不満が爆発したの?


 だめ!それ以上歯軋りすると可愛い歯が削れちゃうよ。


 大人になったら苦労するから!知覚過敏になっちゃうから、もうやめてー!


「あれ? わたし、今何を?……朱里ちゃん行こー!」


「そ、そうだね。ところで、歯は平気?」


「え? 歯? 平気だよ」


(可哀想に。無意識であそこまでの不協和音を奏でる歯軋りを?朱里の暴虐無人な振る舞いに限界が近づいていたんだね)


「なんでこっちジロジロ見てんだよ」


「なんでもないよ! お買い物に行こうよ」


「はーい!」


 リゾート地である「モルティプ」には、沢山の観光客が訪れるだけあってお店がとても充実している。


 ここでならリルちゃんを大人の階段を駆け上がらせるだけじゃ飽き足らず、そこからエレベーターで成層圏まで到着させる事すら容易いだろう。


「このお店なんていいんじゃない?」


「朱里ちゃんにお任せするよ。私もう覚悟は決まってるから!」


 リルちゃんったら、魔王の側近になる覚悟を固めたみたいね。よーし!頑張るぞー!


(手際いいな。まさか、まともなチョイスを?いや朱里を信じるんだ。絶対にコマンドーの服装を選んでくれる)


「はい、買ってきた。もう試着は無しね。なぜならこの服がリルちゃんに似合う事は火を見るより明らかなのだから!」


(いいの、分かってる。一緒に特殊部隊の格好で出場しようね。あれ?)


(なに!?可愛らしいフリルの付いたワンピースだと?)


「朱里ちゃん! わたし、信じてた!」


「私もこういう服に憧れててさ。ここに来てから何回か着たけど、やっぱり似合わないんだよね」


「そんな事なかったよ。可愛かったもん」


「いいの、分かってるの。私が似合うのはタンクトップに迷彩柄のカーゴパンツ、そしてティアドロップのサングラスだけ」


(確かに似合いそうではあるな。むしろ見てみたい)


「あ、ていうか具現化すればタダで手に入るんじゃないの?」


「分かってないな、ダメなクリスだな。ダメなクリスは前世からやり直した方がいいよ。一緒に買い物するから楽しいんじゃん」


 この後も私たちは色々なお店を楽しんだんだ。


 途中で食べた名物だと言う気持ち悪い林檎の味は普通だった。梨の方が美味い。


 初めての買い物を楽しんだリルちゃんは、とっても楽しそうだった。良かった、良かった。


 私は最後の仕上げに『雅』のメイク室でリルちゃんにお化粧をする事にした。


 やるなら完璧に。リルちゃんをムポポペサ一番のアイドルにする為に。


「お、お化粧!?」


「そう、お化粧よ。貴女を完璧なアイドルにする為に必要不可欠なものなの」


「お化粧なんてした事ないよ。似合うかな? 少し緊張するよ」


「ふふ、肩の力抜いて。誰でも最初は緊張するものよ」


(お化粧だって!?これは今度こそ、面白迷場面集が見れそうだね!ふふ、楽しみだな)


「はい、完成! リルちゃん可愛いよ」


(出来たか、どれどれ。どんな面白メイクになっているかな……な、なに!?)


「朱里ってメイク出来たんだね。人生で一番驚いたよ」

 

「失礼なやつだな」


「えっ、これが……わたし?」


「お肌が綺麗だからお化粧しやすかったよ。素材がいいから薄いメイクだけどこれが一番可愛いよ。さ、私も久々にお化粧してみよっかな」


「凄い! 朱里ちゃんってこういう仕事が向いてるんじゃ? はっ! 髪もいつのまにか編み込んである。気づかなかった」


(やるやないか。見直したでほんまに)


「はい、私も出来たー! どう?」


「ど、どうって言われても。草むらに紛れやすそうなフェイスペイントだね、としか言えないよ」


「朱里ちゃん? なんでそうなっちゃうの?」


「……私だって本当はリルちゃんみたいなお化粧がしたい! でも似合わないのよ! こういう攻撃的なネタに走らないと駄目なの。でも似合わない?」


「似合ってるよ。それは認める」


「確かに似合ってはいるけど」


「どっちみち暴れるんだし、私は普通の化粧はいらないかな」


「まあ、朱里がいいならそれでいいけど」


(可愛いのに少し残念な所が、朱里ちゃんらしさなのかな?)

 



 後は大会当日を待つだけ!


 ただ勇者の動向が全く分からないから油断しないようにしないといけないけど。


 リルちゃんは確実に側近としてアイドルとしてその名を轟かせる。


 私はその横で魔王としてリルちゃんを必ず支えてみせるんだ!


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