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ドルチェ。

 おっす!


 料理研究家系女子高生として今巷で話題の三つ星シェフ!


 炎のフードファイター、朱里でっす!


 今まで私が料理で倒した相手は数知れず。


 恐れ慄いて勝負を挑まれる事も少なくなった昨今、またこの剛腕を振るう時が来たようね。


 振るうって言っても、相手をぶん殴る訳では無いからご安心を。私だってそんな事位弁えてるんだからね!


 今日のお題はっと。


 ふむ。愛しの大天使リルちゃんへの愛のスペシャリテか。


 流石の私も今日は緊張していないとしたら嘘になるよ。


 ん?ここから一キロ先に獰猛な肉食獣の糞が落ちてるね。私って昔っから目はいいんだ!


 ……まだ暖かいそうね。近くに…いる!


 さっそく剛腕を振るう時が来たわね。


 熊料理は使ったことはないけど今までの経験を活かせば作れないものはないのだ!


 ぽくぽくぽく、ちーん!


 閃いた!!


 熊の煮凝りに生クリームを添えてガムと一緒に召し上がって頂きましょう。


 待っててね。私の子猫ちゃん。



         —————————



「さあ、ちょっくら熊シバいてくるか」


「熊?」


「そう、熊」


「熊なんてどこにもいないよ?」


 リルちゃんは目が悪いのかな?


「いいの、いいの。ちょっと行ってくるから、もし何かあったらこの犬笛で私を呼んでね。二秒で空から助けに飛び降りて来るから! その時は頭上に注意してね! じゃあ行ってくる」


「行っちゃった。相変わらず足が早いなあ。私は火でも起こして待ってよう」


「うーん、やめて。それ以上は、おかしくなっちゃう! そんな無理やり突っ込まないで! ぐわーーーーー!」


「クリスちゃん、目が覚めたの? あれ? 気絶したままだ」


「やめて、やめてくれー! それ以上食べれない! 食べるか剛腕を振るわれるかだって? いっただきまーす」


(なんかハッキリしたうなされ方だなあ)


「ウマイウマイウマイ、トテモオイシイ、シャチョサン、イツモアリガト、ゴザマス」


「クリスちゃん? ねえ、ちょっと起きて!」


「ああ、熱い、体が溶けてしまいそうだ。ぐうう、熱い。熱いのに震える、震えが止まらない。コレが地獄? 地獄なのか!!」


(起きてるでしょこれ!)


「ちょっと! クリスちゃん、起きてよ!」


「はっ! 夢、か。どうやら僕はうなされてたようだね、起こしてくれて助かったよ。ありがとうリルちゃん」


「それはいいんだけど、なんの夢を見てたの? 随分ハッキリとうなされてたけど」


「僕の忌々しい記憶さ。思い出しただけでも身の毛もよだつ。スライムなのに毛が生えてくるよ」


「それは気持ち悪いね。忌々しい記憶って?」


「いいかい? 心して聞くんだ。リルちゃんこの先、決して朱里に料理を作らせちゃダメだ。劇薬だよ、あれは。長生きしたいなら料理の話題も禁止だ。もしそんな事があったら僕達は全め」


 ズズーン!


(………後ろに何か落ちて来た)


(び、びっくりしたー。……朱里ちゃん、熊担いでるよ)


 (リルちゃんが呆然としてるよ。振り返りたくないなあ。


「っ! く、熊さんをアルゼンチンバックブリーカーで仕留めたのかい? 流石だね」


 「あ、目覚めたの? よかったじゃん。丁度、狩猟を終わらせて来たんだ! 今日のご飯は熊のフルコースだよ!」


(なんで朱里が料理を作る流れになったんだ?しかも熊って。また癖のある食材を)


「わあ、それは気絶する程嬉しいよ。もし気絶してしまったら、そっとしといてくれるかい?」


「そんなに嬉しいの? 作り甲斐があるなあ。気絶したら鍋ごと口の中に入れてあげるから安心してね」


「お気遣いなく。食事は自分のペースが一番だからね」


「暖かい内に食べないと勿体無いでしょう?」


「それもそうだね。なんとか気を強く持っておくよ。そうと決まったら僕は料理の完成までの間、田舎への手紙(遺書)を書いてくるとするかかっこ


「その前に調理器具出してよ」


「ア、モッテクルノワスレター」


(クリスちゃん、嘘が下手なのね)


 「えー! 熊肉たっぷり煮凝り生クリーム添えガムが作れないじゃーん」


(み、耳を疑ったよ。あんたなんて物をこの世に爆誕させようとしてたんだい?)


(私、死ぬ所だったんだね。クリスちゃん優しい嘘をありがとう)


 うーん、これじゃあ熊の刺身しか作れないよ。


 おや?あれは!


「お銀さんだ! おーい」


「なんだい、アンタ達まだいたのかい。 あら、随分と立派な熊をしとめたのね。大変だったでしょう?」


 でも道具がなくて、このままだと手刀で捌くしか出来ないよ。お刺身くらいしか作れない」


(なんで意地でも奇をてらった料理を作ろうとするんだろう)


「少し熊を分けてくれるなら、お礼に料理を振る舞うわよ。私、熊料理得意なのよ」


「やったー! じゃあ、この熊全部あげちゃう! 熊料理の経験無くて、ほんの少しだけ自信が無かったんだよね」


「本当かい? じゃあ張り切って振る舞うとするよ」


(……助かった、のか?)


(助かったの?)


 なんで二人共泣いてるんだ?


 そう、そうなのね。泣くほど私の料理を食べたかったのね。


 そこまで期待されてたのなら仕方がないよ。


 食後に朱里ちゃん特製の熊肉のドルチェだけでもお召し上がり頂く事にしますか!


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