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期末テストの結果

 真人が木田や石村たちに少し遅れて登校してくると、廊下で生徒がざわついていた。

「なんだ?」

 真人は訝し気にその人混みを見る。

「あっ、そうか」

 そこではたと真人は気づいた。今日は、先週行われた期末試験の結果が貼り出される日だった。学年の上位五十番以内の成績優秀者は、廊下にその順位と名前が貼りだされる決まりになっていた。

「それにしても・・」

 それにしても、何か異様なざわめきがある。丁度その人垣の後ろ端に木田と石村がいた。

「おうっ」

 真人が後ろから声をかける。

「お、おお」

 二人が少し驚いて真人を見る。

「どうしたんだよ。なんかざわついてるけど」

 真人は二人に訊ねる。

「見ろよ」

 木田が驚いた顔で順位表を指さす。

「ん?」

 真人が廊下に貼り出された期末テストの順位表を見上げた。

「おっ、俺ちょっと順位上がったわ」

「バカ、お前の順位なんかどうでもいいんだ」

 石村が言った。

「どうしたんだよ。お前の名前がついに載ったのか」

 真人が冗談めかして石村を見る。

「違うよ。よく見ろ」

 普段冗談しか言わない石村が、一切それを言わず真剣に言った。

「おっ、山下あいつも順位上げてるな」

「ばかそうじゃなくてだな」

 石村が苛立たしげに言う。

「なんだよ」

「よく見ろ」

 石村が順位の最高峰を指さした。

「あっ!」

 真人は思わず声を出した。そして、茫然とその名前の書かれた箇所を見つめる。

「・・・」

 全ての教科のトップに真希の名前があった。

「うちの高校って進学校だったよな・・」

 真人が茫然と呟く。

「ああ」

 木田も石村もどこか呆けたようにそれに答える。

「すげぇな」

 真人が呆然としながら呟く。

「ああ・・」

 二人も呆然と医師ながら答える。

「美人で頭脳明晰・・」

 石村が独り言のように呟く。

「マジで、完璧だな」

 木田。

「ああ」

 真人と石村が呆けたように同時に答える。

「神秘の美人転校生は、天才だったか・・」

 木田が呟く。しばし三人は茫然と、順位表を見上げ続けた。

 真人たちが教室に入ると、教室の中はやはり真希の期末テストの成績のことでざわついていた。同級生たちは、みな一様に驚いている。

 そこへ真希が登校してきた。真希が教室に入ると、教室中は静まり返り、視線は真希に集まった。しかし、真希はそれをまったく気にする様子もなく、周囲に意識を向けることすらもなく、いつものようにまっすぐ自分の席に行くと、いつものように席に着き、落ち着いた様子でカバンから教科書を取り出す。

「・・・」

 それをクラスの全員が黙って見つめた。誰も声をかけられず、どうしていいのかも分からない。

 だが、真希はやはりそんな空気を気にする風もなく、またいつものように鞄を脇に置くと静かに本を読み始めた。

「・・・」

 そんな真希の態度を鋭く見つめる視線があった。女子たちの中で力を持つ麻美と、その取り巻きたちのグループだった。麻美たちは眉をしかめ、真希を鋭く見つめていた。真希の態度にはどこか、同世代の人間を見下すような空気感を感じさせるものがあった。少なくとも麻美たちのグループの女子たちはそう感じた。

 チッ

 小さな舌打ちが、グループの中心にいる麻美の口元から小さく漏れた。それは何かの始まりの合図のように、麻美の周囲に響いた。

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