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昼休み

「あれ、真希ちゃんは?」

 昼休み、石村が教室を見回す。しかし、教室のどこにも真希の姿はなかった。

「どこ行ったんだろう」

 石村が真人を見る。

「パンでも買いに行ったんだろ」

 真人が適当に言う。

「そうか・・」

 石村が残念そうに呟く。

「でも、いつもいなくねぇか」

 弁当を持って二人の席にやって来た木田が首をかしげる。

「そう言えば、昼はいつもいないよな。真希ちゃん」

 石村も首をかしげる。昼休みの昼食時間、いつも真希は教室から忽然とその姿を消していた。

「そう言えばそうだな」

 真人も首を傾げる。そういえば真人も昼休み真希を見かけない。

「どこ行ってんだろうな」

「う~ん」

 真人の問いに、石村と木田の二人は、首を傾げ、うなるだけだった。

「まあ、でも、真希ちゃんはかわいいわけだし、全然問題ないけどね」

 石村が気を取り直しておどけた感じで言う。

「お前はなぁ」

 木田と真人の二人は笑いながら呆れる。

「真希ちゃんが来てから、ええ~」

 石村が指を出し数え始める。

「先週の月曜からだから・・」

「十日じゃねぇのか」

 木田が言った。

「そうそう、十日だ」

 真希がこの学校に来てから早いもので、気づけばもう十日が経っていた。

「もう十日も経ったのか。はええな」

 石村が言う。この十日の間も真希人気は学校中で熱狂的に続いていた。ファンクラブまでできたという噂まであった。

「これはやばいぞ」

 突然、石村が大きな声を上げた。

「何がやばいんだよ」

 真人と木田が驚いて石村を見る。

「このままじゃあっという間に卒業だぜ。どうする?」

 石村が真剣な顔で二人を見た。

「どうするってなんだよ」

 真人が怪訝な顔で石村を見返す。

「鈍いなぁ。このまま何もなく卒業しちまうってことだよ」

「いいだろ別に」

 真人が言う。

「なんでいいんだよ」

 石村が力を込めて言う。

「全然よくねぇだろ」

「て言うかまだ卒業まで一年半以上あるだろ」

 真人が言う。

「そんなのあっという間だろ」

「なんでそんなにりき入ってんだよ」

 真人が呆れるように言う。

「俺は真希ちゃんに命をかけてるんだよ」

「バカだこいつ」

 真人が言った。そして、三人は笑う。石村のいつもの真顔の冗談には二人は慣れていた。

「真人、お前の学級委員の権限で何とかしろ」

 石村が叫ぶように言う。

「学級委員にそんな権限あるか。っていうか、権限があっても、使うか。そんなことに」

「友だちがいのねぇ奴だな」

「いいから、もう、弁当食えよ」

 そう言って、真人は自分の弁当箱を開いた。


「・・・」

 昼休みも終わり、午後の授業の始まるけだるい時間。真人がふと見ると、真希はいつの間にか教室に戻って自分の席に座っていた。

「・・・」

 午後の日差しの差し込む窓際で、その光に照らし出されるようにして座る真希は確かにかわいかった。真人にとって、真希はもともとそれほどタイプではなかったが、毎日のようにみんなにかわいいかわいいと言われ続けると、不思議なもので確かにかわいく見えてくる。

「お~し、午後の授業始めるぞぉ」

 その時、社会科の石井が教壇に立ち叫んだ。真人は慌てて前を向いた。

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