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過熱する人気

「なんでいきなり全校集会なんだ?」

 今日は一人遅れて登校してきた真人が、クラスメイトたちが次々教室を出て行く姿を見回しながら木田を見る。

「お前知らないのか」

「何を」

 真人がぽかんと木田を見る。

「ほんとに知らないのか」

 隣りにいた石村が真人の顔を覗き込む。

「だから何を」

「事故だよ事故」

 木田が言う。

「事故?」

「ああ、交通事故だよ。昨日の夕方、一年の女子が車に轢かれて死んだんだ」

「マジか!」

 真人が驚く。

「マジだよ。何で知らねぇんだよ。テレビでニュースにもなってたんだぞ。市民新聞にも一面で出てたぞ」 

「俺テレビ見ねぇもん。それに市民新聞はうちとってねぇし」

 市民新聞はこの地域のローカル新聞だった。

「それにしても情報弱者過ぎるだろ」

 木田がツッコむ。

「そうか?」

「お前はほんとそういうとこだめだよな。勉強はできるのにな」

 石村があきれる。

「車は百キロ近く出てたらしい。即死だったらしいぜ」

 木田が言った。

「マジかよ」

「なんか若いにいちゃんらしい。いかにもって感じの」

「そうか・・、それにしても一般道で百キロって・・」

 さすがに真人もその衝撃的なニュースにショックを受けた。


 朝から衝撃的な死亡事故のニュースがあったにもかかわらず、次の日も真希への熱狂ぶりは、校内でまだまだ過熱していた。積極的な男子生徒たちは、廊下を歩く真希にさっそく隙あらば声をかける。

「セーラー服かわいいね」

「部活何入るの?俺、サッカー部なんだけどマネージャとかどう?今募集してるんだけど」

「・・・」

 しかし、真希は、男子生徒たちに声をかけられるその度にうつむき気味に静かに通り過ぎていった。

「・・・」

 まったく反応のない真希に肩透かしを食らった男子生徒たちは、そんな真希の背中を茫然と見つめ見送った。

「前の学校で何やってたの?」

 真希に興味のある女子たちも声をかける。だが、真希の反応は同じだった。

「・・・」

 女子たちも真希の背中を呆然と見送った。

 次の日も真希は、終始静かで大人しく、クラスメイトともほとんど口をきくことがなかった。

 しかし、男子たちには、一人静かな真希は、さらに神秘的で魅惑的な少女に映り、より男子たちの心をつかんでいった。

「はあ~、でも、真希ちゃんかわいいよなぁ」

 石村が、一人席に座る真希を見つめながらうっとりと言う。

「うっとりするな、うっとり」

 真人がツッコむ。

「でもなぁ~」

 しかし、やっぱり石村は夢見心地だ。

「かわいいんだよなぁ」

「もうこのバカはどうしようもねぇな」

 木田が呆れ顔で言う。

「お前だってかわいいかわいい言ってただろ」

 石村が反撃する。

「だってくぁわあいいだもん」

 木田がおどけて言った。

「両方バカだな」

 真人が呆れると、三人は笑った。

「お前だって、ほんとはかわいいと思ってんだろ」

 木田が真人を見る。

「かわいいとは思うよ。でも」

「ほら見ろ」

「いや、だから」

「みんな真希ちゃんのファンなんだよ」

 石村が言う。

「いや、だから俺はだな」

 真人が反論しようとするが、それを石村が制する。

「もう、みなまで言うな。みなまで言うな。みんな真希ちゃんが好きなんだ」 

 石村は勝手に結論づける。

「勝手に決めるな」

 真人が怒る。

「まあまあ、みんな真希ちゃんファンてことで」

 石村が怒る真人をなだめる。

「そうそう、みんなで愛せば怖くない」

 木田も続く。

「真希ちゃんはかわいい」

 石村が、顔をまたうっとりとさせる。

「あのなあ・・」

「それにしても、他のクラスの奴らも真希ちゃんに声かけまくってたぜ」

 木田が言った。

「そうそう、三年の副生徒会長のなんとかいう」

 石村がそれにすぐに反応する。結局、その場は真人が反論する機会も与えられず、真人も真希ファンということで話は次に移っていってしまった。

「赤嶺だよ」

 木田が言った。

「ああ、そうそう赤嶺。あいつも声かけてたぜ」

「あいつはかなりな女たらしって噂だからな」

「マジかよ。あの顔で?」

 石村が嫌な顔をする。

「滅茶苦茶性格悪いらしいぜ。あいつ。生徒会に入ったのだって、大学の推薦目当てらしい」

「油断できんな」

「ああ」

「われらが真希ちゃんを守らねば」

「そう守らねば」

 石村と木田は団結し、鼻息を荒くする。

「何興奮してんだよ」

 真人がそんな二人で勝手に興奮する二人にツッコミを入れる。

「お前は悔しくねぇのかよ。うちのクラスの女子だぞ」

 石村が鼻息荒く一人クールな真人を見る。

「悔しくねぇよ。別に」

「なんて、クラスメイト愛のない奴だ」

 木田が呆れるように言った。

「そういう問題か?」

「そういう問題だよ」

 石村と木田が同時に言った。

「まったく」

 興奮しきりな二人に、まったくついていけない真人だった。


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