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群がる生徒たち

 その日のうちに、真希はすぐに学校中の噂になっていた。美しく、一人セーラー服を着る真希は、どこへ行っても目立ち、生徒たちの視線が、特に男子生徒の視線があちこちから降り注ぐ。噂が噂を呼び、わざわざ、真人たちのクラスまでやって来て、入り口から覗き見る生徒もいた。

「なんか相当な騒ぎになってるらしいな」

 石村が、後ろを振り返り教室の後ろの入り口を見ながら、後ろの席の真人に言う。

「ああ」

 真人も体をねじりながら後ろを振り返り後ろの教室の入り口を見つめる。そこには、ドアの枠から飛び出しそうなほど、他のクラスの生徒が溢れていた。

「ねえ、趣味とか何?」

「どんな音楽聞くの?」

「部活は何入るの」

 教室内ではすでに積極的な男子が、休み時間の度に席に着く真希を囲むようにして、我先にと声をかけていた。

「・・・」

 しかし、真希は一人うつむき加減に静かに席に着いて黙っていた。

「ちょっと、男子~、真希さんが困ってるでしょ」

 そこにクラスの女子が割って入る。

「困ってねぇよ。ねぇ。真希ちゃん」

 クラスのひょうきん者、山本が真希の顔をのぞく。

「おいっ、いきなりちゃんづけかよ」

 隣りの高橋がそれにツッコむ。

「いいだろ別に、ねえ、真希ちゃん」

 自分を囲む男子生徒に顔を覗き込まれ、真希はさらにうつむいた。

「思いっきり困ってるじゃない。いいから行きなさいよ」

 女子たちがそんなクラスの男子たちを蹴散らす。

「チェッ」

 男子たちはしぶしぶ離れていく。 

「よろしく、あたし麻美。困ったことがあったらなんでも言って」

「あたし奈穂美、ほんと男子たちってバカよねぇ」

 今度はクラスの女子が声をかける。クラスの女子グループの中でも中心的な麻美グループのメンバーだった。

「・・・」

 しかし、真希はやはり、軽く会釈しただけで、自分の席でじっとしたままうつむいて何もしゃべらない。

 その態度に、やさしく話かけた麻美たち女子グループのメンバーたちも困惑した。男子はともかく、女子になら気軽に話ができるだろうと踏んだ麻美たちは、その反応に驚く。

「なあ、あの子どんな子なんだろうな」

 石村がいつものように後ろの真人の席に振り向き、そんな真希たちを見ながら真人に顔を近づける。

「さあ、そのうち分るだろ。同級生なんだから」

 だが、真希に対しては真人はあまり感心を示さない。

「でも、あまりしゃべってない感じだぜ。女子たちとも」

「そうそう」

 そこに前の方の席から真人たちの方にやって来て、木田も会話に加わった。他のクラスメイトたちも、やはり真希を気にして、さりげなく動向を注視している。真希の存在は今やクラスの最大の関心ごとだった。

「最初だけさ。そのうち慣れるだろ」

 真人はやはりあまり気にしていなかった。

「大人しい子なんだな。きっと」

 石村が言う。

「多分な」

 やはり真人は関心が無い。

「まあ、そこがまた神秘的で魅力なんだよなぁ。奥ゆかしいというか」

 石村がうっとりとした目で真希を見ながら言った。

「お前完全にはまっとるな」

 真人が言う。

「もう、夢にまで出て来たぜ」

「マジかよ」

 木田が言う。

「マジ」

 石村はいつにないまじめな顔をする。

「本気じゃねぇか」

 真人がツッコミを入れる。

「俺はいつだって本気だよ」

 石村のおどけた調子に、三人は同時に笑った。

「っていうか授業中に夢見るほど寝るなよな」

 さらに真人がツッコむと、そこで三人はさらに笑った。

「俺は彼女と目が合っただけで失神できる自信がある」

 石村が胸を張って言う。

「どんな自信だよ」

 真人がさらにツッコむと、また三人は笑った。三人は真希の話をしながらも、なんだかんだ言って、いつものバカ話に花が咲いてしまうのだった。


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