ヒーローが誕生するとき
「僕は命を3つ持ってきた。今から君を生き返らせよう」
「は? なに言ってんの? わかんない」
「え? わかんないの? はー、地球は惑星統一政府も無い未開の星と聞いてはいたけど、地球人って原始人なんだね。もう一回言うよ、死んだ君を生き返らせてあげる」
「死んだ人間は生き返らないの。それに命は一人にひとつ。死んだ人間が生き返るのはゲームとかマンガの話。それが現実の常識だ」
「違いますー、命は一人でいくつも持ってますー、それが宇宙の常識なの。地球人、おっくれってるぅー」
「なんか腹立つな、オマエ」
「とにかく、君を生き返らせてあげる。ついでに凄い力もつけてあげるから、地球にやって来る宇宙怪獣を倒してね」
「は? なに言ってんの? ゼンゼンわかんない」
「え? ちゃんと説明したのにわかんないの? 地球人てバカなの? 全滅したいの?」
「地球人ディスりに来たのかオマエ。というか、俺を生き返らせるって、まさか、俺、死んだのか?」
「うん」
「なんで?」
「僕が着陸するときに不注意でプチッて」
「お前が犯人か!」
「それを僕の星の優れた技術で親切に生き返らせてあげるって言ってんの」
「言い方あ!」
「君は生き返ることができる。地球はやって来る宇宙怪獣を倒す力を手に入れる。僕はちょっとした事故を誤魔化せる。皆が得をするよ」
「俺が殺されたの誤魔化されてる!」
「誰にだってミスはある。失敗から学ぶことで同じ失敗を繰り返さないように、人は成長し進歩する。それを促すのが人を許す寛容な心だよ」
「加害者のお前が言うな!」
「何を言うんだい? 立場や相手によって言う意見をコロコロ変えろって? そんな奴の言う事を君は信用できるのかい? 権力に忖度して正論も口にできない社会に正義は無いよ」
「正論だけど、俺を殺した加害者に言われると、何か納得できねえ」
「そして生き返った君が宇宙怪獣を倒さないと、地球人、滅ぶよ。君のせいで」
「不注意で殺された挙げ句に地球規模の責任を負わされるってどういうことだ!?」
「この僕がここまで頭を下げて言ってるんだから、空気を読んでよ」
「俺とお前の二人しかいないのに空気読めだ? お前が空気作ってんのか! 光合成でもしてんのか!」
「うん? ちょっと待って……、うん、大丈夫、翻訳機はちゃんと機能してる」
「じゃ、お前の性格がちゃんとしてねえんだな!」
「もうなんでもいいからさ、僕と契約してさっさと光の巨人になってよ」
「メッチャムカツクなオマエええ!!」