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7.正義は筋肉にあり

 学校のトイレで鏡を見ながら私は呆然と呟いた。

「ホントだ……ユウってば確かに美形だとか思ってたんじゃん、イケメンじゃん」

 何が陰キャだよ。徐々に変化してきたから意識していなかったけど、最初の頃に感じた「惜しい」感じがなくなっている。うざったい前髪やぼさぼさの眉は綺麗になって、コケていた頬には程よく肉がついて、ヒョロヒョロの肉体が細マッチョ程度になっている。うん、これは、委員長のお世辞とかではなく、本当にイケメンになっている……?

 いや、でもそれにしては女子にも全然話しかけられないし、私のひいき目かな?

 鏡をまじまじと見ていると、ほかのトイレをしに来たクラスメイトに遭遇した。


「……」


 鏡を見つめる私を不審そうに見ている。眼鏡にキノコ頭の、失礼だけどザ・オタクという感じのクラスメイトだ。あまりに視線を感じるので私は振り返って話しかけた。


「……私ってイケメンなんですか?」

「……何を言うかと思ったらすげえ自意識過剰な質問だな! と言いたいところだが、正直に言うとめちゃくちゃイケメンになったと思うけど!?」


 少し間があったが、思ったよりも鋭いツッコミに楽しくなってくる。


「記憶喪失になってから随分変わったよな。何、突然。顔見知り程度のクラスメイトにいきなり聞く質問じゃないと思うんですが」

「あの、日記とかを見ても私は自分のことを友達のいない冴えない陰キャだと思っていたようで」

「俺への嫌味か?」

「なので、自分の身の回りのこととか全然無頓着で、まあ着飾ったところで意味ないなと思ってる感じなんですよね」

「聞けよ、ツッコミをスルーするなよ」

「こう、記憶をなくして客観的に自分のことを見てみると、なんか惜しい感じだなと思って」

「……俺も自分の事を惜しいと思いたい」

「前髪伸ばしすぎで野暮ったいし、痩せすぎててヒョロヒョロでダサいし頬はこけちゃってるし、眉とかも整えてないから田舎臭い感じで」

「……ホントに俺の話じゃないの?」

「だから心機一転いろいろ変えてたんだけど、そしたら委員長に『イケメンになった』と言われたわけでして……」

「待ってうらやましすぎる……なんでそこで俺にイケメンかどうか聞くわけ? もうイケメンって言われてるやん」

「だってその割には女の子に話しかけられたこともないし。委員長優しいから気遣って言ってくれてるのかなとか少し思ったけど、オタク君にもそう思ってもらえてるなら、少しは自信もってもよさそうだね」

「オタク君って!! お前、俺の名前も知らないでそんな話振ってきてたのかよ!」

「……ごめん、記憶喪失だから」

「しれっと言ってるけどもう3カ月は経ってるからな!?」

「ごめんなさい」

 90度に身体を折って頭を下げた。ごまかせるかなと思ったけど、無理だった。普通に失礼なので謝っておく。

「名前を教えてもらってもいいかな?」

霧山(きりやま) 俊幸(としゆき)、そうだなぁ、みんなにはこう呼ばれてるよ。略してキリt……」

「イキリオタクかよ!」

「まあ嘘だけど。キリって、チーズみたいに呼ばれてるから好きに呼んでくれ」

「ありがと、よろしく。キリユキ。正直、記憶喪失になってから自分のことに精一杯でクラスメイトと全然交流できてなかったから、嬉しい」

「……キリユキって……?」


 首を傾げるキリユキ君は放置しつつトイレを後にした。

 身体を鍛えて、ちょっと身綺麗にしたらイケメンになれるって、やっぱり筋肉ってすごいね。


2週間も更新さぼっててごめんなさい!許してください!なんでも……はしませんが。

なんだか今回の話は難産でした。次の話からは短くなりそうです…。

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