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乙男×筋肉女子~男女が入れ替わったらそりゃ自分の趣味全開で生きるでしょ~  作者: ヘッドホン侍
第1章 入れ替わった二人がそれぞれの生活をはじめるまで
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2.朝起きると男になっていた

 いつもは何回目覚ましがなっても目が覚めなくて、うるさいと怒る兄に殴られてやっと目が覚めるというのに、今日はめずらしくパチッと目が開いた。屋外からは小鳥がピーチク鳴いている声が聞こえるので、朝だろう。

 ついでに言うと、目を開いて飛び込んできた天井に全く見覚えがなかった。

 まあ、天井自体はただの白い壁紙だったわけだけど、照明が私の部屋にしちゃおしゃれすぎる。明るさ優先で丸い蛍光灯を設置していたはずなのに、なんかおしゃれな木製の電気シェードがついた照明がぶらさげられている。


「ん……?」


 疑問に思って、視線を下に向けると、そこには紺色の布団。私の布団は灰色だったはずだけど……。しかも、なんだか違和感を覚える。……股間から。


「ひえ」


 布団をぺらりとめくると、そこには女にはないはずのものがあった。しかも、これ、あれですか? 朝特有のあれですか?

 自分が体験することになるとは思っていなかった。これ、どうしたらいいんだ。

 ちょっと呆然と、自分(・・)のそれを見つめてしまった。


 気を取り直して、この状況について考えてみる。朝起きると男になっていた、しかも見覚えのない部屋だ。ということは自分が男になってしまったということではないようだ。兄の部屋にあった、転生モノってやつ?

 いや、あれは異世界に行っていたけど。この部屋には見覚えはないが、別に異世界という感じはしない。壁にかかっているカレンダー的にも違和感はないことだし。

 転生モノにしてはこれまでの記憶とかないタイプみたいだし、どうしたもんかな……。

 うーん、と首をひねった瞬間、スマホの着信音が鳴り始めた。

 状況が全然わかんないし、スマホはとりあえずスルーでいいかなと思いつつも、習慣でなんとなしに枕元に置かれていたスマホを手に取ると、そこにはなんだか非常に見覚えのある携帯の電話番号が表示されていた。――これ、私の携帯の番号じゃん。


「お、おはようございます。俺の身体の主さん」


 緊張しながら電話に出ると、第一声目がこれであった。私の声だ。しかも、この身体の主ってことは……。


「え!? も、もしかして、私たち、いれかわってるんですか……? 朝起きたら知らない部屋にいるし、男になっているし、転生しちゃったのかと思ってました。でもその割には今までの記憶とかないからこれからどうしようと思ってた!」


 冷静な()の声と比べて、私は相当動揺してしまっていたのだろう。()の声が裏返ってしまっていた。しかし、彼は彼でなぜこんなに冷静なのかも不思議だな。


「えーっと、それで一応自己紹介をしておくと、俺は日暮(ひぐらし) (ゆう)です。両親と俺の3人家族で、高2で、家の近所の渡瀬高校に行ってます」


 この身体の名前は日暮 ユウ、と。

 唐突にはじまった自己紹介だが、このわけのわからない状況から生活をはじめるためには必須情報であった。ありがたい。高校が結構近いことがわかって少し安心した。家同士も近いかもしれない。

 おっと、私も彼に最低限の情報を与えなくては。


「私は、比留間(ひるま) 晴美(はるみ)。私も高2で、家の近所の百合野高校に行ってます。両親と兄2人の5人家族」


 彼も私の自己紹介を反芻しているようだった。


「あと、漢字とかはスマホの連絡先を見てもらえればわかると思うので、省略します。ただちょっと俺の記憶が間違いなければ今日は日曜なので明日学校行くにせよ、なにをするにせよさっさと今後の行動をどうにか決めないといけないと思うんです。準備もあることだし」

「うん」


 スマホのロック解除はどうしたら、と一瞬思ったけど、幸い彼のスマホもリンゴのマークのスマホだし、指紋で開けられることに気が付いて相槌を打つ。


「で、提案なんだけど……お互い記憶喪失ということにしませんか?」

「オッケー」


 なんだそれ、名案じゃん! いろいろ今覚えなきゃいけない展開かもと不安になっていた!

 でも、それじゃいつかは不信感を持たれるだろうし、バレるリスクが高い。であれば記憶がないふりをした方が自然にこの状況になじめるということだろう。

 彼は頭がいいな!


「えっと……本当にそれで大丈夫ですか?」


 素晴らしい提案をしてくれたというのに、なぜか遠慮がちに聞いてくる。控え目な性格なのかもしれない。


「え、何も問題ないけど、何か懸念点でも?」

「あ、いえ、な、ないです」

「あ」


 その返答をもらったところで、自分の恰好をみて気が付く。下半身パンツ一丁じゃん。男子ってそんなもんなのかな?


「やっぱ、ある。君の身体、Tシャツにパンツだけだから、さすがに着替えておきたいんだ、着替えの場所を教えてください」

「……はい、それでしたら、本棚の右下の方に箱があると思うんですがそこがシャツ入れなのでそこからシャツをとってください。その下の箱が靴下です。制服上下やズボン類はクローゼットにかけてあります」

「お、あった、あった。了解~」


 クローゼットを開けながら、頷く。そういえば、私のクローゼットについても触れておいた方がいいかな。遠慮がちな性格のようだし、他人のクローゼットを開けることに不安があるかもしれない。


「あ、私の服は全部クローゼットにあるから適当に着替えてください。ブラのつけ方とかは、わかる?」


 ついでにブラジャーについても触れておく。ノーブラで出歩くことはさすがに避けていただきたい。そして、彼の性格からいって私の身体に勝手に触ることに躊躇していそうだ。


「ブッ、ブラ……!? わ、わかりません!!」


 案の定裏返った声が聞こえてくる。


「説明するのめんどいからY〇uTubeで調べてくれ!」

「了解です!! じゃ、記憶喪失なら電話しているのも不審だと思うので、そろそろ切ります。また、今晩にでも電話するので、では」

「オッケー。バイバイ」


 通話終了ボタンを押して息を吐く。そして目線を下に向ける。私も、これの処理の方法を調べた方がいいかな?


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