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第四章 ミッション カンタス砦を攻略せよ上

 

「困った。」

 

 僕はカンタス砦前まで来ている。一人でだ。

 村長さんの依頼を断った手前救援を頼めないのもあるが、一緒についてこられると足手まといになるだろうと思ったのもある。

 砦は構造的に千人駐留可能なのだが、食料や水などの保管の関係上実際は五百人までしか無理だった。

 五百人ぐらい、何とか忍び込んで司令官でも何でも人質に取れば退却に追い込めるのではないかと思ったのだ。

 

 目の前にそびえる高い金属質の壁、砲台がいくつも取り付けられている。おまけに絶え間なく巡回する警備兵。

 関所でもあるカンタス砦は、カンタス渓谷を塞ぐ強大な門のことである。

 つまり、門の左右の柱部分に砦が植え付けられているのだ。扉部分も砦の一定階層ごとに渡り廊下と部屋が取り付けられている。もちろん開けば使用できないが・・・

『ガトレア西の門』その姿は壮観だった。まさに壁である。

 通常は門が僅かに開閉した状態なのだが、今は閉じられて通行禁止状態である。

 司令室は一番上にある。入り口は左右に二つ。どちらも見張りがいる。

 

 つまり、砦に忍び込むには夜のくせに昼間のように照らされている真平らな赤土つちの地面を門上部の見張りなどに気がつかれずに横切り、入り口の見張りを気絶させ、五百の兵士の視線を掻い潜り司令室まで行かなければならない。

 

「ま、やるしかないか。」

 以外にクロムは楽観主義だった。

 なにやら、円盤のようなものを取り出すと辺りにばら撒いていった。

 

「術式解除」

 その声と共にあちこちで魔術が発動する。

 光の閃光は門に直撃したが傷一つつかなかった。

 さすが、軍事国家ガトレア対応が早い。

 すぐに、入り口と小門が開き兵士達が出てくる。さらに発射地点への砲撃。

 しかし、遅れて目くらましの術式が発動する。

 その隙に僕は小門から中にもぐりこんだ。

 

「ぎりぎりだったな。」

 さっき使った円盤は時限式の魔術発動装置である。あまり多くの魔力は込められないが、こういう作戦にはぴったりだ。

 中に入って僕はすぐさまコート袖の術式を発動した。いつか使った光の魔手である。

 それで、向かってくる兵士達を投げ飛ばす。

(かなりの数がでてったと思ったのだが・・・階段さえ見つければあとは上までいける。)

 階段が螺旋状であることと司令室の場所は覚えていたが、階段の把握までは時間が無かった。

 

 兵士をなぎ倒しながら奥へ奥へと進んでいく。やがて湾曲した壁を見つけた。

 

「デリーグライト」

 

 穴からは階段がのぞいていた。

(やはりか・・・)

 階段を上ろうとしたが上から兵士達が降りてくる。先ほどまでとは違い完璧に武装していた。どうやら完璧にとりで内に侵入者が入ったと伝わったらしい。

 忍び込むとは程遠い物になったが、魔手を巧みに使い階段を駆け上る。

 

 三十五階分の高さを疾走したのだ。疲れることこの上ない。

 しかし、お陰でようやく司令室まで来れた。

 

 真ん中に置かれた大きな机に男が一人座っていた。それ以外に人影は見当たらない。

「お前が司令官だな。」

「そうだ。まあ、警戒するな。わたし以外に人はいない。」

「何のつもりだ?」

「何のつもり?そっちこそ何のつもりだ。魔王。いや、言わなくても分かる。要塞建設計画を潰しに来たんだな。」

 クロムは答えなかった。

「お前は、まず国家に多大な資金、つまり闇ルートで特別税を払い国家の黙認を得て活動する盗賊団の中でも最も資金を多く提供していた破弓の盗賊団を潰した。最初はそこまで重要視していなかったが、お前はまるで国家に力を誇示するようにハルナード信仰の聖獣であるドラゴンを倒し、トップシークレットである魔道人形の研究施設の場所を突き止め、そのまま我が国との交易が深いアクリナ国へ亡命した。我らはお前が研究所をアクリナに教え関係を崩すつもりだと考え、お前をアクリナがかくまっているという事実を作り上げ先に戦争を仕掛けようとした。しかし、お前は王都に出現し駐留していた一個小隊を壊滅させた。お陰で結果的に我らとアクリナの関係は崩れ交易は一時的に停止し、魔道人形研究は計画から大幅に遅れることとなった。その頃お前を重要視し始めた上層部は事実を隠蔽しお前を犯罪者に仕立て上げた。事実を知る少数の民衆たちはレジスタンスを結成しお前のことを影の解放者と呼んでいるそうだ。そんな、テロリストが要塞建設の計画を聞けばやってくるのは我々にも十分予測できた事態なのだよ、魔王。」

 クロムは驚いていた。何故ならテロリストとか初耳だったし自分の行動がそんなふうに捉えられていたなんて知らなかった。

 自分はたまたま、アクリアに向かう途中厳戒態勢のしいてある建物を偶然見つけただけだし、自分のせいで戦争とかシャレにならないので王都に戻って大きな事を起こしたりしただけなのだ。

「いや、僕はテロリストとかじゃなくてですね」

 司令官は机の上のマイクを起動させた。

 

「タイプCのトラブル発生 タイプCのトラブル発生 直ちに撤退せよ」

 

 そして、司令官はボタンを押して逃げた。

 

「お前はもう終わりだ。」

 

 何のことか分からなかったが、とにかく撤退させれたんだから良かったのか?

 

 しかしまだ終わりじゃなかったのだった。

 

 


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