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第三章 断れないお願い


文字数がばらついてすみません


 今、僕はガトレア帝国西部カンタス渓谷に来ている。正確に言えばカンタス砦付近だが。

 ここは、大国ルディア王国との国境に面しており、ガトレアにとってはここは重要な意味を持つ。

 なぜなら、大陸南西部においてトップクラスの軍事力を誇るガトレアから見ても、ルディアと戦えば負けかねない。今は同盟を結んでいても、もし戦争になった場合の基地となるカンタス砦は最初の防衛ラインとなるわけなので、ガトレアが気にするのも無理も無い。

 しかし、同盟を結んだ手前ルディアが侵略してきた時のことを考えてこの地に要塞などはできない。もし仮に要塞を築くと友好関係が崩れるとは言わないが、何らかしらの影響はある。もちろんガトレアはそのような事態を避けたい、しかし砦の防衛力を考え要塞は築きたい。と言う訳でガトレアは極秘に要塞の建設を行っている。以上が情報屋から聞いたものである。

 要塞を築くのに人員を割いて、国境境の警備が疎かになっている隙に、僕はルディアに行こうと言う訳である。

 さすがに五年も旅を続けていれば、国内をまわり尽してしまう。なので、ルディアに行きたいなと思っている所へこの情報。まさに千載一遇のチャンスと思ったわけだ。

 現在、激しく後悔中である。

「だから軍の者じゃないって言っていますよね、さっきから。」

「じゃあ、なんでここに来たんだ。今、関所の通行許可を得られるのは軍の者だけだ。なのに通行許可も得ず、しかも理由がルディアに行くためとはおかしいだろう!さあ、軍はいつここを潰す気なんだ。」

 

 少し前のことである。

 

 僕がカンタス渓谷を歩いていると、急に男達に拘束されて今に至る。

 どうやら軍は要塞建築のために僕が今いる村を潰す気らしい。渓谷の高い位置で尚且つ下のほうから、つまり関所を通ってきたルディア国民から見えない。さらに空からの攻撃に対応するための砲台設置可能な場所が大量にある。非常に要塞に都合のいい場所である、この村は。

 しかし、もちろん村民は村を捨てる気は無いらしく、どうも軍から村を守るために戦う気らしい。

 ホント無謀だ。

 と言う訳で軍の人間に間違えられた僕はこうして尋問されているわけである。

 現在いる部屋どうも急きょ尋問室となったらしく、そこら辺の民家と変わりない。もっと言えばガトレア国の税金はかなり高く、したがって国民の生活水準は低いため、普通の民家といってもボロイ物置のようなものだが。

 もういっそのこと魔法を使おうか(武器はもちろん取り上げられている。)と何度目かに思ったとき村人が入って来た。

「おい、ガイ村長がこいつと会いたいそうだ。」

「本当か?何だってこいつに?」

「さあな、お前そう言うことだついて来い。」

 

 僕は大人しくついて行くと、さっきよりは豪華な村長邸らしき所に連れてこられた。大きな違いは部屋数か、さっきは一部屋しかなかったし。

 

 中に入ると、村長といかにも毎日鍛えてますって感じのごつい男が立っていた。

「よう、来なさった。座りなさい。」

 僕は村長の両隣に立つごつい男を多少警戒しながら胡坐をかいた。

「あんた、もしかしてメンテイン家の者か?」

「いやー、僕はただの観光客ですよ。」

「ただの観光客がこんな物を持っているのはおかしいじゃろう。」

 そう言って僕の双剣を見せてくる。

「最近は魔物も多いですから。」

「ハシはこれでも昔は魔具士をやっておってな。しらばっくれても無駄じゃ。少なくともこいつを買うにはシエル金貨五百枚はいる。」

 ハシってまあ良いが。

「五百枚なんて、僕が心血注いだ作品だ!!そのぐらいで渡せるかって、あぁ」

 しまった、この村長謀ったのか。

「やはりそうなのじゃな。とするとあいつのいやメンテイン・チェスターの息子か。なんとなく術式の組み方が似ておる。」

 この爺さん、親父の知り合いか?

「奴から聞いておらぬか、ハシの名を、構築のTの二つ名を」

「T・ハシル、親父の師匠か!」

 構築のT は、その段階を踏んだ術式強化術『Tシステム』を開発した時につけられたもの。

 その二つ名は、かつて大陸南西部では知らぬものはいなかったほどの腕前だ。時代とともに忘れられたが。

「なに、奴には基礎を教えたに過ぎない。今では奴のほうが技量は上じゃ。」

 ただの老人だと思ったら実はとんでもない奴だったというわけである。

「構築のTとも呼ばれるあなたが僕に何のようですか?」

「わしらに協力してほしい。」

「何をですか?」

「奴の息子と見込んでのことじゃ。あの砦から兵士を撤退させてくれ。」

 村長は頭を下げて頼んできたが・・・

「お断りします。」

 横の二人が何事か言おうとしたが村長はそれを止め、僕を放してくれた。

 

 村長が嫌いな訳ではない。むしろ尊敬している。だが、どうしても親父の息子としてって言うのは譲れない。つまり、村長は僕の実力ではなく、親父のことを信用して頼んでいるのだ。そこが気に入らない。

 村民は嫌悪のまなざしを僕に向けているが僕は黙って歩いた。

 

「お兄ちゃん。」

 急に呼び止められ振り返ったが、そこには何も無かった。

「お兄ちゃん。」

 そこには少女がいた。下から声がする。あわててしゃがんで聞いた。

「なんだい?」

「お兄ちゃん強いの?強いんだったらお父さんを助けて。このままだとお父さんが行っちゃう。」

 どうやら、軍との戦いにはこの子のお父さんも行くらしい。

「お願い。」

 目に涙をためてお願いされてしまった。これを断れる奴がいたらお目にかかりたい。

「分かったよ。」

 実は断っておきながら勝手に行こうとか思っていたのだが、僕の心は決まった。何よりこの子は僕に頼んでくれた。

 僕は村に背を向けカンタス砦に向かった。

いよいよ次はカンタス砦に殴りこみ。次回でクロムの双剣について書きたいことがすべて出せると思います。それから小説の投稿間隔についてですが、プロローグ〜第一章、一日、第一章〜第二章、二日、第二章〜第三章、三日となっています。これ以上広げないよう頑張ります。

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