海へ
『いやはや、先ほどは助かりました。まずは礼を。
我の名はギーズという』
といい頭を深く下げる半魚人のおっさん。
『あっ!俺は…トミーといいます。
いやぁ全然きにしないで下さい。
モグモグっ、それにしてもなんでまたあんな所にいたんですか。』
腹が減ってどうしようもなかったので
とりあえず飯をくいながらにしようという話しになり、トミーは急いで
ファイアボールを覚え、魚を3匹取り出して焼いていた。火加減が上手くできず成功したのは1匹だけだった。後の2匹は燃えすぎて消滅して いた。
『実は、この池でキメラフィッシュの養殖をしていたのだが、あまりにも増えすぎでしまい、ここを閉鎖する事が決まって処分しに来たのだが、…なんとも情けない話しになるが、まさかここまで増えてるとは思わず、逆にやられる所だったのですが、キメラフィッシュが途中から動きが鈍くなり、なんとか水際ま で逃げ延びる事ができたのです。
ただ我も毒にかかっていて上手く動けず途方にくれていた所だったので す。』
あーーっと納得した顔をするトミー。
という事は、俺全く悪くないよね?むしろ魚も処分できて命まで助 けたんだからね。
『まぁ事情はわかりました。
それでなんですけど、このキメラフィッシュですか?
どうされるつもりなんですか?』
『いや…まぁ正直これ程の量は我にも処理しきれないからなぁ…
そうだ!!トミー殿このキメラフィッシュを礼の代わりに受け取って頂けないか?』
山積みになったキメラフィッシュを指差し笑顔でこちらを見ている。
『うぇ!こんなにですか?
そりゃあまぁできなくもないですけど…
皆さんはキメラフィッシュをどの様にして食べてるんですかね?』
ダイソンを使えば、収納はできるから問題は時間経過で腐ってしまう事だなと、考え加工してしまおうかと
この世界での食生活をたずねる。
『んっ?まぁ先ほどみたいな焼いて食べるか、干物、または丸かじりぐらいかな?我は丸かじりが好きだが。』
そういうと目の前でキメラフィッシュをバリボリと食べて見せた。
まぁ、あんたはそうだろうねと口から
でかかった言葉を飲み込む。
干物もこの世界で通用するのかと
考え込む。
『なるほどっ!ならば大半は干物にして後は俺の趣味に使わせていただこうかな。 …となると
キメラフィッシュを開くのに包丁
が必要だな。』
先ほど食べたキメラフィッシュは元の
世界でいうところのアジに味が似ていた。アジの干物をつくる要領で
いいなと立ち上がる。
『おいおい包丁で何をするのだ?
まさかこの山積みされたキメラフィッシュを一匹づつ切っていくのか?』
何をいってんだこの半魚めとため息を
つき、
『そうですよ!!俺のいた国では
そうやってやってましたから
でもまずは包丁を手に入れなきゃ
はじまりませんが!』
どうせあなたは丸かじりするだけでしょと少しなめた態度をとる。
『いやいや、それでは日が沈んでしまうぞ。キメラフィッシュを捌けばいいのだろ?それなら我に任せてもらえぬか?丁度よい魔法があるでな 。』
フフンと胸を突きだし鼻息荒げにこちらをみる。
魔法かぁと目を輝かせ、異世界人の魔法をみる良い機会だと考えた。
『おぉっ!!
ではお願いできますか?
ただ背中の皮は切らずにおいてください。丁度、本を開いたようになる感じかな。』
『フム!!
中々難しい事を仰るな!
だがその注文に応えてみせよう。
キリキリ舞!!』
ゴウっと音とともに20m程の竜巻が
発生して山積みされたキメラフィッシュが吸い込まれていった。
するとあれよあれよというまに
腹が裂かれ、開きになったキメラフィッシュが降ってきた。
それは、まるで新築祝いでやる、モチまきの様な光景であった。
トミーは降ってきたキメラフィッシュの開きを回収するべく、ダイソンを発動させ右へ左へ前に後ろ、そしてたまに上を見ながら走り回るので
つまづいて転んでいた。
『うげっ!!うぅ膝すりむいた~
…ってかダイソンだから吸えば
いいよな!?』
そうして立ち止まった所、
あちらこちらに降っているキメラフィッシュの開きが地面につくすれすれで進路を変え、ダイソンの渦
の中へと吸い込まれていった。
5分後、全てのキメラフィッシュが
キレイさっぱりなくなっていた。
『ふぅ!!凄い便利な魔法ですね?』素直に褒め称えるとギーズは喜びながら
『そうだろぅ!これは我が一族に
伝わる特別な魔法でな!!
風魔法と水魔法の複合魔法なのだ。
ちなみに我が国の防壁にもこの魔法が使われておるぞ!!
しかし驚いたな!トミー殿が
先ほど使った魔法 …あんなものは見たことないぞ!』
先ほど?…ダイソンの事か、ん~なんて説明しよう?そのまんまでいいか
『あれはなんというか俺のオリジナルです。収納魔法みたいなものですね。』
そういうと、ギーズは驚愕の表情で俺を凝視する。
『なんと?!その様な若い風体で
オリジナル魔法を作れるとは!!
もしや賢者様ではありませぬか?』
あれ?やっぱり正直に言わない方が良かったかなと思いつつ、この際
色々聞いちゃえと腹を決める。
『すいません!俺は賢者ではないのですが賢者だと凄いのですか?』
『いや!凄いもなにも魔法を作れるのは賢者様しかいないですからね。
そして魔法を作れる賢者様は
この世に10人といないといわれてます。我の先ほどの キリキリ舞も
はるか昔に賢者様から授かった魔法だと伝えられていますし。』
えっ?じゃあ俺、賢者枠入るのかな?
と自分のチートぶりに浮かれていた
『しかし、お見受けした所トミー殿は人族でおられますかな?
いや失礼!我も人族の方とはお会いしたことはないのでわかりかねますが。』
んっ?そんなのステータスみりゃわかるでしょと疑問にもつ。
『えっと~俺のステータス見えませんか?海人族なんですが詳しくは俺も
分からないのです。』
と、ギーズにこれまでの経緯を話す事
にした。元の世界で死んでこちらの世界に転生したことを。
『なんと??転生とはまた…しかも海人族とは…。』
と言い残し深く考え込んでしまった。
俺の第六感が告げている。
何か面倒な事になりそうだと。
逃げるかっ!
とギーズに背を向け歩きだした瞬間
『どこへ行かれるのですかな?』
ギーズに肩を鷲掴みにされていた。
いたぃいたぃ!肌に鱗が食い込んでるよと涙目でギーズに振りかえる。
『実はですな!我が一族に魔法を授けてくださった賢者様というのが
転生者だったと言い伝えが残されておりまして、もしかしてトミー殿は賢者様の再来ではと思い至ります。
これは是非とも我が国へご紹介したいと思っております。』
『ハハッ!お断りさせて頂きます。』
面倒くさい事になる前にハッキリ断ろ
俺はNOといえる日本人だからね。『むぅ!
命を助けて頂いた恩人なので
無理強いは好ましくないですな。』
そうだそうださっさと諦めなさいと
心で呟くトミー。
『わかりました…今回は諦めますが
機会があればぜひとも我が国へお立ち寄りくだされ。
精一杯のもてなしをさせて頂くので。…後、トミー殿の種族についてなのですが海人族というのは
今は絶滅しているはずです。』
なにぃ!と驚愕の顔でギーズを見つめる。
『はるか昔、まだ人族との交流があった時に人魚族と人族が交わり
生まれたのが海人族の始まりと
言い伝えにはありますが500年前に交流が途絶えて海人族も次第に
減っていき100年前に絶滅したと
聞いております。』
ひょんなとこから自分の立ち位置が
分かった事に驚愕した
『俺は1人ボッチか…。』
ふいにでた言葉がとても寂しく感じられた。
そんな雰囲気を察したのかギーズが口
開く。
『トミー殿!!
よろしければ我と契約を結びませぬか?』
契約?まさかあれか?俺のしもべになるとかそんなんだろ。
『我のいう契約には主従関係というものはありません。家族の様な意味合いの契約です。』
なんだそりゃ?と、首をかしげると、
『我とトミー殿の間に上下の関係が無いこと、互いの場所がわかること
通信ができること。以上3つが
我のいう契約の内容です。』
ん?友達みたいなもんかな?
場所がわかって通信できる?
あーGPS付き携帯電話みたいなもんだな。それだったら良い条件だ。
と考えていると
『どうでしょうか?』
と不安そうにギーズがたずねてきた。
『あぁ待たせちゃいましたね、すいません。下僕とかそういうのではないのなら、その契約お受けしたいと思います。』
『ハハッ!そこまでの深い契約では
ございません。連絡手段で割とよく使われる契約魔法ですな。
では』
「我はギーズ我は望む親愛なるトミーとの偽りなき契約を」
そういうと二人の間にが淡く光り
魔方陣が出現した。するとギーズ
が手を伸ばし魔方陣に触れる。
『契約内容は互いに
上下関係なきよう、場所がわかる、
通信、以上3つである。
トミー殿、今いった内容に承諾していただけるなら魔方陣に触れて
我も望むと申して下さい。』
ほぇぇっとした顔で関心しつつトミー
も手を伸ばし、魔方陣に触れる。
『我も望む!!』
瞬間魔方陣がパァッと光り真っ二つに
割れてお互いの手のひらに吸い込まれていった。
『ウム!無事に契約できたな。
これで離れていても連絡できるようになったぞ。
これで自分のステータスを開けば
我の名前がでてくるぞ。』
トミーは言われるがままステータスを
開く。
LV28
種族 海人
HP 350/350
MP 365/400
攻撃力 165
防御力 210
素早さ 175
スキル
エラ呼吸
加護
猫神…言語翻訳、魔法創造、
毒神…毒耐性、毒使役、毒生成
状態…
契約者
ギーズ
『おぉっ!!ほんとだっ!!。』
その後、通信のやり取りの仕方や相手の場所を知る方法を伝授してもらった。
『さて我は、仕事の報告をしに一旦
国まで戻ろうと思うが、トミー殿
はどうされるつもりかな?』
『そうですねぇ。干物を仕上げしちゃいたいので海へ戻ろうと思いま す。』
『ならば途中まで一緒に参りましょう。我が国は海の中にありますから。』
あ~やっぱりね~、めっちゃ海って感じだしね。と思いながら
海へと向かう。
『到着~!!』
砂浜につくなり元気の良い声をだす。
視界一杯に海が広がっていた。
『さぁて!!ダイソン!!』
砂浜を走り、膝が隠れるくらいの水位
まできたところでダイソンを発動
する。
海水が勢いよくダイソンに吸い込まれていった。すると、
『トミー殿海水をどうされるのですか?』
と不思議なものでもみるような目でたずねてきた。
『へっへ~ん。この海水にですね
キメラフィッシュをしばらくつけておくのですよ。
あれ?干物の作り方ってこれで
あってますよね?』
『いや、我が知ってる干物とは捌いた身を天日干しするだけですが。』
あれ?足んないよね?それでは
旨味が半減してしまわないかと
疑問に思うが異世界だから好みが
違うのかなと納得する。
『まぁこれは俺の好みにあわせて
作るなでこの国の口にはあわないかもしれませんね。』
あ~と納得のいった顔をするギーズ。
『そろそろ我も行かないと皆が心配するかもしれませんのでこれにて失礼させて頂きます。
近くに立ち寄る際は、ぜひ御連絡
をくだされ。
我が国の名は、アクアンティス!
我はそこで兵士をしておりますので。』
アトランティスみたいだなぁと思いながら頷く。トミーは最後に聞き忘れがないか?と考え、思い出す。
『あのっ!人族の国へ行くには
どういけばいいですか?』
そうしてギーズから人族の国への行き方、そしてその為には先ほどいた
森を通らねばならぬ事、
森の奥にはギーズでも敵わない魔物
がいることを教えてもらい別れる。
ギーズと別れしばらくした頃、
トミーは焼きキメラフィッシュを
を食べながら作業をしていた。
先ほど海水につけておいたキメラフィッシュを砂浜にだし
天日干しをしている。
『ふぅ。これでなんとか終わりかな。さてとこっちのキメラフィッシュはと…。』
と残り100匹はありそうなキメラフィッシュを眺めた後、
『 ミキサー !! 』
と、唱えると目の前に丸い球状のものが現れた。中をよく見てみると
まるで先ほどみたギーズの魔法
キリキリ舞ににていた。
『よしっ!上手くいったな!』
というなり残りのキメラフィッシュを
入れていく。ギャリギャリと
音をたて、キメラフィッシュが
ミンチにされていく。
『おほほっできてるできてる!』
ミキサーが効果を失い消滅すると
そこには一つになった球体の
キメラフィッシュのミンチが
できていた。
『さぁてこれでキメラフィッシュの
加工は終わりかな?!
おっとそろそろ干物もできたかな?』
見ると良い感じに水分の抜けたキメラフィッシュの干物ができていた。
『よしよしいい感じの干物ができな。あとは…問題は保存だよなぁ ダイソンの中に保管しても
どれだけ持つかわからないもんなぁ。…いっそのこと時間をとめちゃうか!』
とステータスを開きあれやこれや
と考え、
『できたっ!!
ダイソン改!!』
いつもの渦がでてきてキメラフィッシュの干物とミンチされたキメラ フィッシュが吸い込まれていく。
『フッフッフ!!見た目的には
初代と変わらないが性能がUP
してるのさ。吸い込まれてはいった
ものの時間を限りなく遅くできる
のだ!!これで干物も1週間程
から1年まで食べられるのさ。』
ホントは時間を止めたかったが、
無理だったので時間を遅くする
効果でガマンすることにした。
『さてと、これでしばらく食糧は
大丈夫だなと。
そろそろ人間に会いたいなぁ!』
と人族の国を目指して森の中へと入っていった。
陽は丁度真上に来たところである。
いまだにパンツ一丁であった。