乙女がそんな魔法を…
その後モーテルとレイビスにそして馬車から服を持ってきてくれたパインの3人に質問攻めをされたトミーと
マールであったが、上手くはぐらかすつもりが更に質問攻めにあい、
自分たちが加護をうけているのだと
白状してしまった。そしてトミーは
異世界転生者ということ、この世界にきてから今までのことも…
トミーはパインが持ってきてくれた
服に袖を通していた。女性物なのかトミーが着ると七分丈のようになってしまっていた。パインは
『すいません!女性用の服しかないもので…』
と頭を下げる。トミーは
『いやいや!とんでもないです。
女性用とはいえ久しぶりの服です
からとても有難いですよ。』
とトミーも頭を下げていると
『転生者かい!噂には聞いたことが
あるけどあたしゃあんたが初めて
だよ!』
とモーテルはビックリした顔でトミーを見ていた。
『しかも二人共加護持ちかい!!
軍の人間がきいたら腰を抜かす
ぞい。』
そんなに珍しいのかなと顔を見合せる
トミーとマールにモーテルは
『あんた達いいかい!この事は迂闊に
喋っちゃだめだよ!その力を利用しようと悪いのが寄ってきちまうから ね!』
トミーはやっぱりなと頷く。この世界において自分の力は異常なんだと薄々は気付いていたのだ。
『皆さんは俺とマールのことを喋らないですよね。』
トミーが尋ねるとモーテルは少し険しい表情になり
『みくびるんじゃないわよ!喋るわけないでしょ!恩人でもあるんだし
レイビスとパインも分かってるわね?!』
モーテルは二人を見る。静かに頷く二人であった。
と話しをしていると、犬四郎とワンダフルのメンバーが敵を捕まえて帰ってきた。どうやら状態異常の毒にかかっているようで顔は蒼白であった。かなり激しい戦闘をしたのだろう。着ている服はボロボロである。そうパンツ一丁ではなく、服をきていたのである。
恐らくこいつらが黒幕だなとトミーは感じとった。捕まえてきた数は4人。
モーテルはその内の1人をみるなり
険しい顔つきになり
『ウッズ!なんであんたが……
そうかい!だからアタシの魔法が
使えなくなっていたのか。』
トミーは話しの内容から身内の裏切りかとあたりをつけ
『モーテルさん!知り合いですか?』
モーテルは苦々しい表情で
『あぁ…こいつはウッズといい、
封印魔法の使い手なのさ!恐らく
アタシが魔法を使えなくなっていたのもこいつのせいさ!!そうだろ?ウッズ!』
ウッズと呼ばれた男性は苦々しい表情で項垂れ
『ぐっっ!後少しの所だったのに…』
弱々しくかぼそい声で
『モーテル!お前さえいなくなれば
我が黒魔導団が王国で覇権を握れ
るというのに…。』
あぁ権力争いに巻き混まれたってとこ
だなとトミーは納得する。
『ハン!何をいってるんだい!アタシがいなくたって、あんたん所には負けないよ!ウチの青魔導団を
甘くみるんじゃないよ!』
そうモーテルはウッズに吐き捨てると
ため息をつき
『まったく…あんたん所の団長はこの事を知っているのかい?
ウッズ!?』
とモーテルが問いかけると、
『違うっ!団長は関係ない!俺の独断だっ!』
『フン!どうだかね!とにかくアタシ達を襲ったんだ!ただではすまないからね!』
そういいモーテルはウッズの腹を
サッカーボールの様に蹴った。
ウッズは、うっ!!と声をあげた後
沈黙した。どうやら気絶したようだ
モーテルは何やら両手をぐっぱっと
握ったり開いたりしていた。
『やっぱりこいつだったか!まったくアタシとした事が…。』
モーテルは独り言の様に呟いた。トミーは
『モーテルさん!その…大丈夫なんですか?魔法が使えないって?』
『んっ?あぁもう使える様になってるよ!術者本人が気絶しちまったから ね!』
といわれトミーが??と顔をしているとパインがモーテルの横からでてきて
『おばあ様がかけられていたのは
魔法を使えなくする魔法!封印魔法と呼ばれています。これを破る
には術者本人を気絶させるか殺す
しか解除方法はないといわれて
います。ただどの様にして封印魔法をかけられたのかは未だに分かっていませんが…』
と神妙な面持ちでウッズを見つめるパインにモーテルは近寄りパインの頭
にポンと手を置き
『まっ!それはウッズを王国に
連れてってからだね!王国には
尋問の専門家がいるから、そいつらに任せるさ!』
怖っ!とトミーとマールは肩を小刻みに震わせた。痛いのか?痛いのするんか?
とモーテルを見つめるトミーとマール。
モーテルは二人の視線に気付き察した
様で
『まっ!こいつはそれだけの事をしちまったって事さ!……さて、こいつらを拘束しないとね!パイン!』
モーテルはパインを呼び拘束を促す。
パインはウッズに近付き
『タートルバインド!!』
縄状の物がウッズに覆い被さり縛っていく。あれやこれやと縄状の物が動き回りウッズの拘束が完成した。
まるでそれは亀甲縛りの様であった。
きゃぁぁっと顔を両手で抑え真っ赤に
なるトミー。乙女が乙女がぁぁと
呟きながらチラチラと横目でパイン
を恥ずかしげに見つめていた。当の
パインは我関せずといった感じで
次々と盗賊達を拘束していく。
ウッズ含め盗賊達は総数15人になった。亀甲縛り隊の完成であった。
トミーはその光景に呆気にとられていた。日本だったらちょっとした
ニュースだぞと心の中で思い、さすが異世界と異文化に感心していた。
『よし!終わったねパイン!次にレイビス!王都までひとっ走り頼むよ!
ウィンディー!』
レイビスの足の周りに風が流れていき
ほんの少しだけレイビスが浮いた。
レイビスは
『ハッ!!お任せを!モーテル様
パイン様!暫しの別れ御容赦下さい。そしてトミーにマール!
感謝してもしきれない!この御恩
は忘れません。ではっ!!』
とお辞儀をして走り出した。ヒュン!
と風切り音をだして……。えっ?早く
ない?とトミーは不思議に思っているとモーテルがニヤニヤしながら
『どうだい?!驚いたかい?あれが
アタシの魔法、風強化魔法ウィンディ!さっ。まっ覚えるのに15年
卵をあたためなきゃならなかったがその分強力さね。足が速くなる
ってだけだけどね!あの速さで蹴られたら避けれないのさ!』
と、どや顔で説明してくるモーテルに
トミーはフムフムといった顔つきで
何かゴソゴソとやっていた。
『マール!ちょっといいかい?』
辺りをパタパタと飛んでいたマールは
ん?といった顔でトミーの所に
やってきて
『どしたの?また何か企んでるんでしょ?』
『いや、さっきのモーテルさんが
使った風魔法さ創れるかと思ってさ試してみたのさ!そら
マッハゴーゴー!!』
瞬間、マールは全身を風に包まれる。
『さっマール!動いてみてくれるかい?』
マールは自身にまとわりついた風を
感じながら動きだす。風切り音と
共に…。バビュンと音がしてマールは姿を消す。それは速いなんてものでは片付けられなかった。マール自 身素早さが高かった為、そこに風強化魔法なんてかけたら、とんでも
ないことになるのであった。地球で
いうところのマッハに相当するであろう速さに。だが、パン!という音
と共にその魔法は暫く封印される事になるのであった。
トミーとモーテル達は、パン!と音が
した方を振り向く。丁度トミー達の後方でした音に。そこには木の幹に顔から突っ込んでめり込んだマール
の羽があった。しかも羽はボロボロになっていた。恐らくマッハに達した風圧に耐えられなかったのだろう
『マール~~!!』
トミーは走った!今までで一番速いと
いえる速度で!!何とか木の幹に
めり込んだマールを救出して気絶しているマールを呼び起こす。すると
マールは寝言の様に
『渡らないと…渡らないと…』
と意味不明な事をいっていた。トミー
はマールが混乱していると思い。
『マール!渡るって何を?』
と問いかけると、
『川…あの川を渡らないといけないの!』
瞬間トミーはギョッとして
『マール~!それ!渡っちゃ駄目なやつだから~!三途の川だから~!』
その後、無事に意識を取り戻し回復魔法で羽も元通りになったマールの
足元には正座をしているトミーの
姿があった……。