第8話:事件
「きゃぁぁぁぁ!!」
悲鳴が耳を劈く。
なんだ?コッブでも落として割ったのかな。
なんてことを考えていると、ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
バタンとドアが開けられた。そこにいたのはヴィタリーだった。
「お義父さん、どうしたの。凄い悲鳴が聞こえたけど。」
「早く!!早く、押し入れに隠れろ!!」
凄い形相のヴィタリーが、急いでドアを閉め、無理やり僕と狐を押し入れに詰め込んだ。
「え?ちょっ、せまっ。」
「いいから、隠れろ!絶対に音を出すなよ...」
「え?どういうこ...(ドガッ
質問を言い終わる前にまた、ドアが開けられる。開けたと言うよりは蹴飛ばしたの方が正しいかもしれない。
「隠れても無駄だぜぇ、早いとこ息子を出しな。ひゃひゃひゃひゃひゃ。」
聞いたことも無い、ねっとりとした声が聞こえる。
少しだけ開いた押し入れの扉の間から、こっそりと覗く。
その声の持ち主は、顔が傷だらけの細身な男だった。
すぐそこでヴィタリーとその男が、言い合っている。
「息子はここには居ない!」
「嘘だな。あいつがこの家に入ってくのを、この目で見た。噂通り、神の狐を肩に乗せてなぁ!」
「...なにが、目的だ。」
「別に、お前の息子には用はねぇ。俺は、神に用があんだよ。神ってのはなぁ、裏でいい値で取引されんだ。」
あいつの狙いがこの狐?取引?
突然の出来事で理解が追いつかない。
「まぁ、出す気がないなら、力ずくで奪うのみだな!」
そう言って盗賊は、腰に携えた刀を抜いた。
そこからは、一瞬の出来事だった。
「プラーミャ!『ファイ...(キンッ
ヴィタリーがプラーミャに攻撃させる途中で男は一歩前に進んだ。
ーーゴトッ
何かが床に落ちて、床を赤く染めている。
ヴィタリーの頭部だった。