第6話:召喚
「おーい、グラフィア〜!シンハが出紋したぞー!」
「あら、何がでたの?」
「なんと〜...」
そう言って、ヴィタリーは僕の手の甲をグラフィアに向けた。
「神紋でした!!」
「まぁ!凄いじゃない、シンハ!!神紋なんて初めて見たわ!」
グラフィアは僕を抱きしめた。
まったく嬉しいと感じない。
あの時の少年は、努力して這い上がると言っていたのに...
きっと、俺は騙されたのだろう。
今思えば、都合の良すぎる話だった。
両親が隣で、嬉しがっているが、騒がしいとしか感じない。
その日は、そのまま寝た。
1人で、死を怯えながら...
次の日の朝
僕が起きると、既に両親は召喚式の準備を済ませていた。
まぁ、魔法陣を描くだけだけど。
「ほら、シンハ!ついに召喚式よ!」
「...うん。」
僕は、ためらいつつも、魔法陣に手を向けて呪文を唱えた。
「光と影、表と裏、汝と我。共鳴し、呼応せよ。我が名はシンハ。」
言い終わると、魔法陣が作動し、光の柱が現れた。
光が収まった時、魔法陣の中心にいたのは...
美しい、女性だった。
透き通るような白い肌に、銀色の髪。宝石のような金色の瞳。
確か、極東の国の伝統衣装である「巫女服」とやらを着ていた。
ただ、人と違うのは狐耳と9本の尻尾があること。
「あなたが、私のご主人ですか?」
獣人はそう言って、僕を指さした。
「あ、ああ。そうだよ。」
「私は、九尾の狐。これから、よろしくお願いします。」
「こ、こちらこそよろしく。」
「ほら、シンハ。名前を付けて、契約するんだ。」
そう言われたが、僕は躊躇った。名前を付けてしまえば、僕の寿命が決定してしまうから。
「ちょっと、考えさせて...」
僕は、獣人を連れて自分の部屋に行った。