第4話:出紋
僕が義母のグラフィアと義父のヴィタリーに拾われてから5年が経過した。
そろそろ、僕にも出紋が訪れる時期である。
この5年間、僕はグラフィアとヴィタリーに育てられ、教育を受けた。
そして、シンハという名を受けた。
一人称も俺から僕に変わった。
まぁ、未だに慣れてないけど...
この屋敷は、敷地的には「ウールー村」に属しているらしいが、静かに暮らしたいという要望で周りに民家がないここで、ひっそりと暮らしているらしい。
ガスや電気こそないが、義母のパートナー【フィラメント[氷]】のリオートと義父のパートナー【フィラメント[炎]】のプラーミャがいる。
【フィラメント】とは、炎や氷の属性を持った精霊である。だから、2人だけでも暮らしていける。
食材も野生の魔物や、畑を活用しているから、不便はしていない。
さて、僕は家から少し歩いたところにある。広場
に居る。ここには、ウールー村の子どもたちがよく集まっていて、その中に混ざっていつも遊んでいる。
周りには、出紋して、召喚式を既に済ませて、パートナーを連れている子もチラホラいる。
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この世界では、出紋すると手の甲の真ん中に黒い円が現れる。
黒い円だけだと
『地紋』といい、陸上の魔物が召喚される。
黒い円の右に▶︎があると
『流紋』といい、水生の魔物が召喚される。
左に◀︎があると
『雲紋』といい、空生の魔物が召喚される。
上に▲があると
『天紋』といい、天使が召喚される。
下に▼があると
『獄紋』といい、悪魔が召喚される。
円の周りに、全ての紋章があれば
『神紋』といい、神を召喚する。
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大抵の子は、地、流、雲のどれかである。
極まれに天、獄が現れると、村中の噂になる。
まぁ、今年はいないようだけど...
珍しいのでは、人魚とかはいたなぁ。
俺は何が出るのだろうか。
あの時の少年は、「努力して這い上がる」と言っていた。
スライムや、ゴブリンだろうか。そっちの方がよっぽどいいな。
もう二度とあんな思いはしたくないから―
気が付けば、空は茜色に染まり、チャイムがなっていた。そろそろ家に帰ろう。
「ただいまー」
「おかえりなさい。シンハ、先にお風呂に入ってきなさい。」
「はーい」
そう返事をして、脱衣場に向かった。
5歳児の身体には、大きすぎるお風呂に浸かり、
僕は大きなため息をついた。
いつになったら、出紋するのだろうかと、自分の手の甲をじっと見つめる。
まぁ、見ていてもしょうがない。と目を離した瞬間。
僕の手は、眩く光だした。