第3話:始まり
目を覚ますと、空を見上げていた。背中に地面の感覚があるから、仰向けになっているのだろう。手足に力を入れて、起き上がろうとする。
「おいしょっと...」
しかし、自分の意思とは裏腹に全く起き上がれない。そして、視界に入ったのは、とても小さな手である。...そうか、転生したから、0歳からの人生スタートなのか。
いや、待てよ...0歳児の身体でひとりきり?この世界で?
嘘やん...
俺は、いきなりハードモードの人生に軽く絶望してしまった。
だが、項垂れていても仕方がない。ハイハイの体勢になって周りを見渡す。
...広い草原か?
遠くには世界樹が見える。
この世界には大陸に1本、巨大な世界樹がそびえ立っている。
大陸は全部で7つあり、七大大陸それぞれに、帝王として君臨している野生の魔物がいる。
そいつらは人々に恐れられ、付いた二つ名は
【七帝】
この世の魔物は、召喚された主が死ぬと同時に死ぬが...
奴らは何故か...召喚されず...故に死なず...永きに渡って頂点の座に居座っている。
世界樹とは、反対側を見ると、こちらも大きな屋敷が見える。
よく見ると、俺がいる草原は柵で囲まれている。
つまり、ここはあの屋敷の庭なのか...
あの屋敷に助けを求めて見るしかないな。
俺は、ハイハイで頑張って玄関まで辿り着き。
大声で泣き叫んだ。こうすることで、中の人が出てきてくると思ったからだ。
予想通り、ギィっと重々しくドアが開いた。
出てきたのは、とても綺麗な女性だった。
「あら?泣き声が聞こえると思ったらこんな所に赤ん坊?どこから来たのかしら...ちょっと〜あなた〜」
「どうしたんだ、こんな朝から大声出して...」
女性に呼ばれて出てきたのは、こちらも端正な顔立ちの男性。
「玄関の前に赤ん坊がいたのよ。どうすればいいの?」
「本当だ!そうだなぁ...一旦預かってみるしかなくないか?この家の周りに民家なんてないし、連れていく所なんてないよな...」
夫婦らしき、その人たちはそう言って俺を持ち上げて家の中に入れた。