55
※本日二度目の更新です。かなり短いです。
待ちに待った、夏休み! 宿題の量が多いのは気になるけれど、そういうのは、夏休みの最終日に回すとして。いっぱい遊ぶぞ!
「淳お兄様、見ていて下さいね」
「……わかったよ」
私が、力強くそう宣言すると、淳お兄様は苦笑した。今日は、淳お兄様とプールに来ている。桃やお姉様も誘ったのだが、二人とも日焼けをすると嫌だと断られた。
そのため、今日は、私が淳お兄様を独り占めできるのだ。もう、こんなチャンス二度とないかもしれないから、思う存分楽しもう。
「ほら、見てください! ちゃんと泳げていたでしょう!?」
50メートルを泳ぎ終わり、淳お兄様の方を振り返る。もう、溺れ泳ぎとは言わせないぞ! 水泳教室でビート板から基礎を散々叩き込まれたのだ。今なら、背泳ぎも、平泳ぎも、バタフライだってできちゃうのだ!
私が、自慢げにプールサイドへあがると、淳お兄様は笑った。
「うん、上手になったね」
そう言って私の頭を撫でようとして、その手を止めた。そのことには気づかないふりをして、淳お兄様を引っ張る。
「淳お兄様、次はウォータースライダーに行きましょう!」
「……ふふ。わかったよ」
■ □ ■
淳お兄様と、いっぱいプールで遊んでもらったあとの午後。
さて、夏休みと言えば、夏祭りである。前川を誘い、別荘の近くで行われている夏祭りに来ている。
桃とお姉様と淳お兄様へのお土産を物色しながら、屋台を冷やかす。
前川は屋台の食べ物何て、食べられるか! 何て言うと思ったが、以外にも物珍しそうに、パクパクと食べている。
前川に、現在別荘では淳お兄様も一緒なのだというと、
「大丈夫か?」
焼きそばを食べながら、深刻そうな顔で尋ねてくる。というか、食べ方が上品だな。屋台の焼きそばをこんなに上品に食べる人見たことない。
「……いやだなぁ、大丈夫ですよ。流石に、もう片思いして三年ですし、淳お兄様とお姉様を見るのもなれました」
そう、それにおそらく後少しなのだ。お祖父さまは、ワシの目の黒いうちは、婚約破棄などさせん、とおっしゃっていたが、現当主であるお父様は、私と淳お兄様の婚約破棄に賛成したのだ。いくら、実質的に実権を握っているのがお祖父様とはいえ、現当主の権力もなかなかのものだ。あと、もう一押し何かがあれば、婚約破棄は成立し、新たにお姉様と淳お兄様が婚約を結ばれることとなるだろう。
前川にそう話すと、前川は割りばしを置いて、真剣な顔で私を見た。
「その話なんだが」
「? 何です改まって」
まさか、お父様はわざわざ前川家にまで、根回しをしているのだろうか?
「――――だ」
――と、丁度前川が口を開いた瞬間、花火の音でかき消された。どうやら、今回の夏祭りのメインである花火大会がもう始まるらしい。
「? 何ですか、聞こえない」
前川は、もう一度、今度は私の耳へ顔を近づけて言った。
「お前の父親から、俺とお前の婚約の話が出ている」
「………………えっ?」