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※本日二度目の投稿です
「原作より、悪役ルートをつっぱしってるー!?」
いやいやいや、落ち着け。もう一度現状を整理してみよう。
まず、私は淳お兄様の婚約者である。
淳お兄様とお姉様は、両思いであるが、私のせいで婚約できない。
そして、私は淳お兄様が好きである。
……うん、原作の楓よりお邪魔虫な気がしてきたぞ。原作では、(漫画ででてきた設定だけをたよりにすると)、高校生の時点で、道脇桜が道脇淳の婚約者だ。そして、道脇楓は、前川零次の婚約者。道脇淳のことが好きだから、道脇楓は、道脇桜に嫌がらせをする。そして、妹に自分の婚約者である前川零次をとられるのも気にくわないから、道脇桃にも嫌がらせをする。
いや、でも前川とは友人で、桃と前川がくっつくことに関してはウェルカムだし、原作ほど悪役になっているとは思いたくない。
ただ、既に淳お兄様とお姉様の邪魔をしていることを忘れてはならない。
そして、何より心配なのは。
私は、嫉妬しない自信がないということだ。道脇楓は、嫉妬にさいなまれた挙げ句に自殺する。でも、普通好きな人の好きな人に嫉妬しない? 少なくとも、私はするタイプ、みたいだ。最近、淳お兄様が私の頭を撫でてくれなくなってとても悲しい。やっぱり、好きな人がいるのに、他人の頭を気安く撫でたりしないよね。お姉様は、淳お兄様に撫でられているのだろう……。そう思うと悲しくなってくる。
「……はぁ」
「さっきから、ブツブツうるさいですよ」
声に振り替えると、桃が立っていた。どうやら、いつのまにか部屋のドアが開いてしまっていたらしい。別荘は隣の部屋は桃なのだ。
「桃さん」
桃にも淳お兄様とお姉様が両思いのことを伝えておこう。そう思っていうと、桃は冷めた目で私を見た。
「あの二人に限ってあり得ないと思いますけど」
恋にあり得ないことはないのだ。というか、淳お兄様から直接聞いたし。そう言うと、桃は、驚いた顔をした。
「なんだ、てっきり」
「てっきり?」
「淳さんは……いえ、なんでもありません」
変なところで話を切られると続きが気になるが、桃は話そうとしなかった。
今日の桃は珍しく饒舌だ。お姉様に関わることだからかもしれないが。
「確かに、桜お姉様は華があって、品もあり、優しくて、美しくて、勉強ができて、スポーツができて、学友もたくさんおられますものね」
私は、華がないし、品もないし、優しくないし、美しくないし、勉強も淳お兄様に教えてもらわないとわからないし、スポーツは、得意だけど大抵何かやらかすし、友達少ないし。いいところがひとつもないし。本当、私とは大違いだなぁ。
「いいところが一つもないわけでは……」
ありがとう桃。嫌われている桃にもフォローされるほど、今の私は酷い顔をしていたらしい。
「まぁ、私的に支えることができなくても、他にやり方はあるのでは」
他のやり方……? はっ! 私の目標は、バリバリ稼ぐエリートになること! 淳お兄様の婚約者としてではなく、次期当主の淳お兄様の右腕になれるように、努めればいいのだ! お姉様とは違う方法で、淳お兄様の力になる。そうすれば、嫉妬心もおこらないはずだ。
「ありがとう、桃さん! 視界が開けた気分です!」
「? そうですか、よかったですね」
その日から、私は習い事を熱心にするようになった。
■ □ ■
そうして、夏休みは習い事に熱中しているうちに終わってしまった。
「最近、熱心に習い事をやっとるらしいな。この前婚約破棄だの言い出したときはどうなることかと思ったが、ようやく、淳の婚約者である心構えができたのか」
ち、違うー!!! むしろ、逆です逆! お祖父様、満足そうに頷かないで下さい! 私と淳お兄様はいずれ婚約を破棄するんですよ! き、聞いてないなぁ、これ。
あぁ、もうどうしよう。