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※今回もかなり短めです
最近、淳お兄様の様子がおかしい。私が前川と海に行った日から、私の頭を撫でなくなったのだ。従兄の距離感としては、それが普通なのだろうけど、すっかり頭を撫でられることになれてしまった私としては、少し寂しい。それに、私を見て時々考え込むようなそぶりを見せるのだ。私が、理由を尋ねると、すぐに何でもないよ、と笑うのだが、その姿には元気がない。
私が話しかけると、ちゃんと返事を返してくれるから、嫌われているわけではないはずだが、やっぱり元気がないのは気にかかる。
「淳お兄様」
「……ん?」
「久しぶりに一緒にお出掛けしませんか?」
淳お兄様は、少しだけ考えた後、頷いた。
「そうだね、出掛けよう」
■ □ ■
「すごい人ですね」
場所は大型ショッピングセンターにした。本当は人気の少ないところの方がいいかとも思ったけれど、元気がないときは案外人混みがあるほうが、気が紛れたりする。だから、人がいっぱい集まりそうな大型ショッピングセンターにした。
それにしても、夏休みだからか、予想以上にすごい人だ。
これは失敗だっただろうか……?
そう思って、淳お兄様の方をちらりと見ると、淳お兄様は微笑んだ。
「行こうか、楓」
「……はい!」
ショッピングセンターはすごい人だったけれど、中々楽しめた。淳お兄様とお買い物をするのは初めてだったので、とても楽しかった。
ただ、人が多すぎてショッピングセンター内のフードコートではご飯が食べれず、結局、食事は、ショッピングセンターの近くの少しいいお店で食べることになった。
食事はとっても美味しく、私は大満足だった。でも、やっぱり淳お兄様は笑っているけれども、浮かない顔だ。
そろそろ聞いてもいいだろうか。淳お兄様の様子がおかしい理由を。私が、食後のデザートがすんだ後、淳お兄様に尋ねると、淳お兄様は、深刻そうな顔で切り出した。
「……楓にも関係することなんだ」
私にも関係すること? 一体なんだろう?
淳お兄様が深刻な病気にかかっているとかそんなことじゃないといいなぁ。
「本当は黙っていようかと思ったけれど、楓にフェアじゃないから言うね。……桜ちゃんから、婚約をしないかという話がでてるんだ」
「えっ」
淳お兄様の現在の婚約者は、私だ。つまり、私との婚約を破棄して、お姉様と婚約しないかとお姉様が言ったと。確か、私たちの婚約はお祖父様が決めたものだから、それが本当に破棄できるかは、別として、いや? もしかして私が知らなかっただけで、「長女のキミ」がスタートするのは高校生からだから、そうだったのかもしれない。元々は、道脇楓が婚約者だったけれど、途中で、道脇桜に代わったのかも。そう考えれば、納得する。道脇楓が、あれほどまでに嫉妬に苛まれたのは、好きだった婚約者が、道脇桜の婚約者になったからだったのだ。
それにしても、お姉様から話を切り出したということは、お姉様は、淳お兄様のことが好きなのか。だったら、私の答えは決まっている。
「婚約を、破棄しましょう」