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次女ですけど、何か?  作者: 長編
中学生編
34/59

34

 「おっ、おはようございます、淳お兄様」

「おはよう、楓」

どうもあの日以来、変に淳お兄様を意識してしまっていけない。すぐに煩悩退散と口ずさむのだが、なかなかどうして煩悩は消えてはくれない。

 今日も淳お兄様に対して、挙動不審のまま家から飛び出した。一学期が終わるころまでには何とか直したいな。


 ■ □ ■

 

 「なぁ、道脇」

……学校に着くと珍しくニコニコした前川が私を待っていた。嫌な予感しかしない。


「……なんでしょうか?」

前川から若干距離を取りつつ、尋ねる。隣で赤田が苦笑している。

「生徒会に入らないか?」

「おはよう、道脇さん。零次ってば、断り切れずに生徒会役員になっちゃったんだ。僕は零次が入るなら入るけど、道脇さんはどうする?」


ほら、やっぱりー!!中等科の生徒会は、生徒会長と副会長以外は立候補すれば事本誰でもなれる。あんなに嫌がっていたのに、先輩方の押しに負けたな。押しに負けるのは勝手だけれど、私を巻き込むのは勘弁してもらいたい。私は、友達作りとか、友達作りとかで忙しいんだ!


 そういうと、それはつまり暇なんだろ? と前川が目で訴えてくる。

 その顔をやめろ! 何だか最近、内部受験の子はともかく、外部受験をした子からも距離を取られている気がするのだ。私は、その原因究明で忙しい。

 それに、思い出されるのは、運動会などの行事の度にフラッと倒れては保健室に運ばれていった先輩方の姿。私は、習い事などもあるのに、あの忙しさに耐えられるとは思えない。


「それに、生徒会に入れば、交友関係も広がるぞ」

うっ。既にうちのクラスからも前川達の他にも何人か入っていると聞く。確かに、入ればお友達を増やすことも可能だろう。


 忙しいし。でも、お友達欲しいし。悩んだ末に、私は結局交友関係の広がり、という魅力に抵抗しきれず、頷いてしまった。


 ……これで私の中学生生活は、いそがし――もとい、充実することが確定してしまった。


 □ ■ □


 さて、中学生になって、私が入ることになったものがもう一つある。そう、部活だ。まだ、入学式が終わって三週間ほどしかしていないから、まだまだ悩んでいる子も多いようで、新入部員は今日入部した子と私の二人しかいない。


 その新入部員の名前は、星菜更ほしなさらちゃん。ちなみに外部受験の子だ。クラスが違うのが残念だが、逆に言えば、私の不名誉な噂など――主に赤の女王とかなんとか――は知られていないということで、お友達になるには今がチャンスといったところ。


 美紀ちゃんと遼子ちゃんからは未だに友達、といった言葉を引き出せていないが、代わりに私が部活に行くときは、違うクラスで、違う部活に入っているというのに、毎回部室まで付き添ってくれる。きっと、まだ私が心細いだろう、と思ってついてきてくれるのだろう。先輩方に徐々に慣れ始めた今となっては、もう大丈夫なんだけど、そうしてくれる二人の心遣いが嬉しくて、言い出せずにいる。もはや、友達と言っても過言ではないのでは? と思うが、油断してはいけない。自分は友達だと思っていたけれど、相手はただの知り合いだと思っていたパターンが一番心に来るのだ。しっかりと人間関係は確認しておかねば、後々後悔する羽目になる。……しかし、私は、私たちって友達だよね……? と美紀ちゃんと遼子ちゃんに確認できずにいる。うん、チキンだ。


 そんな私に、果たしてより高難易度な知り合って間もない子と友達になれるのか……?といったことは差し引いても、部活。それは、友情と青春にあふれたものだ。きっと、一学期が終わるころには、友達になっているに違いない。


 「今日は、シブーストを作ります」

やった、今日はケーキの日だ! 料理部は、その名の通り様々な料理を作るのだが、二週間に一度は必ずお菓子を作る日がやってくるのだ。クッキーじゃないことは残念だが、甘いものは大好きだ。それに、先輩方は、新入生である私に気遣ってくださっているのか、甘いものの日は、お裾分けしてくれたりするのだ。毎回、誰と作るかはくじ引きで決めるのだが、同じお菓子だからって侮ってはいけない。同じ分量で作っているはずなのに、班によって微妙に味が違うのだ。


 くじ引きの結果、更ちゃんとは違う班だった。残念。次は、同じ班になれるように祈っておこう。先輩方と四人で作ったシブーストはとても美味しくできた。カラメル部分もとってもおいしい。


 満足げに頷いていると、先輩方がぞくぞくと出来たケーキを私の前に運んできてくれる。そして、とてもわくわくした目で私を見るのだ。


「本当に頂いてもよろしいんですか……?」

「もちろん! 一気に食べちゃって」

先輩方に確認をとってからケーキを頂く。どの班のケーキもとても美味しい。思わず頬を緩めていると、もう一人、私の元へとケーキを運んできた人がいた。更ちゃんだ。


 本当に食べていいのか、確認すると無言で頷かれたのでお礼を言って頂く。

 更ちゃんの作ったケーキもとってもおいしく、そのことを伝えようとすると、つい、と目線を逸らされた。


 そして、そのまますたすたと片づけに戻っていってしまったのだ。


 もしかして、もしかしなくても、私既に嫌われちゃってる……?


 

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