5章 遊園地(18)
「奈々城を離せ」
「はあ?」
俺は彼らに追いつき、言い放つ。
「何言ってんのお前」
何と言われても、大したことではない。俺は俺の思う通りに勝手に行動するだけだ。そこに誰かの意思は関係ない。
俺が奈々城と一緒にいたくないだと? 誰がそんなことを言った? いつ言った?
「うるせえ。俺は奈々城と遊んでんだよ。邪魔すんじゃねえ!」
「……遠藤君……!」
彼らは俺を見て、呆気にとられているのか何も言わない。突っ立っていられるのも邪魔なので、一直線に奈々城に向かって進む。
「待てよ遠藤」
ちょうど小田原を抜こうとしたとき、スッと前に立ち塞がれる。
「あ? 何だ……っ!」
気付いた時には顔面に拳が迫っていて、殴られていた。ジンジン痛む鼻を抑え、尻餅をつく。
……やりやがったな。
「ウゼェよお前。なに? キモいんだけど」
「……それがどうした」
いつでも立てるような体勢に直し、小田原を見上げる。あー痛え。クソっ、鼻血出てなきゃいいんだが。
「いのりー! 何してんのさ!」
「遠藤! なにがどうなってこうなりましたの!」
聞き慣れた声と足音が聞こえ、徐々に近づいてくる。どうやらやっとお化け屋敷から出て、俺らを見つけたようだ。遅えよ、ったく。
「可奈! セレナさん!」
「遠藤、大丈夫ですの? 血は出てないようですけれど」
「なら大丈夫だ」
セレナが俺の横でしゃがんで心配してくる。真田は、彼らの前に立ち塞がった。
「ちょっとー! 祈をどうするつもり? 祈になんかあったらあたしが許さないよ!」
「どうもしねーよ。ただちょっと付き合ってもらうだけだって。ってゆーか、このちっこいの誰?」
「知らねー。セレナさんは知ってるけど」
「! 貴方、あの時のナンパ……」
そういやセレナと小田原は購買で面識あったっけな。まあ、今はどうでもいい。
「そーだ、そこの2人も可愛いしさぁ、そんな男放っといて一緒に遊ばね?」
「なに言ってるんですの、まずは祈を離しなさいな!」
「そうよ、離して!」
「まーま、そう言わずにさー」
セレナの声も、奈々城本人の叫びも意に介さず彼らは奈々城を離さない。……ふざけるな。
「おい、セレナ。俺がどうにかして奈々城を取り返すから、一緒に逃げろ」
「……分かりましたわ。でも、その言い方だと遠藤は来ないように聞こえますけれど」
「俺も逃げるつもりだが、もし追ってきたら俺はヤツらを足止めする」
「そのときはわたくしも……こう見えて力には自信が」
「相手は簡単に人を殴るようなヤツだ。俺はお前らに傷付いてほしくはない」
俺がそう言うと、セレナは呆気にとられたような顔をして、
「……まさか遠藤からそういう言葉が出るとは思いませんでしたわ」
俺も思わなかったさ。けど、奈々城もセレナも真田も、俺に優しくしてくれている。こんな俺も図書委員の仲間だと言い、歓迎までしてくれている。
そんなヤツらに傷付いてほしくはないと思うのは、当たり前のことじゃねえかよ。
「……それに、約束しただろ。なんでも聞くって。聞けよ、聞いてくれ」
「……分かりました。でも無理はしないでくださいませ」
渋々と言った風だが、セレナも了承してくれたようだ。小田原を睨み返す。彼はちょうど真田を見てて俺に目を向けてない。俺は声をかける。
「おい」
「ん?」
小田原が俺に目を向ける。俺は思いっきりぶん殴った。
彼が倒れ、友人たちが驚く。一発は一発だ、この野郎!




