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5章 遊園地(12)

「アレだね、食後って言ったらデザートでしょ、やっぱり」

 唐突な真田の発言に、女子2人はうんうんと頷く。え、何で?


「やっぱり甘いモノが欲しくなりますわね」

「でさ! クレープ食べよ! クレープ!」

「クレープ? ああ、そう言えばさっきクレープ屋あったわね」


 3人揃ってデザートを食す気でいるようだが、体重管理という話はどこにいったのだろうか。甘いものは太るんじゃないか? 何故か悪寒がするから絶対に口には出さんが。


「じゃあ遠藤君に買ってきてもらおうかしら」

 誰がそんなパシリみたいな真似を……今回に限っては拒否権がないか。


「と言ってもメニュー分からねーだろ」

「大丈夫だよ、あのクレープ屋、駅前の行きつけの出張店だもん! メニューはばっちり頭にあるよ!」

 女子2人はうんうんと頷く。女子の間では常識なのか、駅前のクレープ屋。


「まーエンドーくんじゃ分からないか。仕方ないね、あたしが注文役でついていってあげるよ」

 何故上から目線なのか分からんが、注文を覚える必要がないのはいいことだ。

 そんな訳で奈々城とセレナから注文を聞き、俺達はさっき通ったクレープ屋にやってきたのだった。といっても場所なんざ覚えとらんので真田に案内されながらだが。よく覚えてたな。


「おじさーん、バナナ&ストロベリークレープと、チョコミントクレープとー……」

 真田の注文の声を聞き流し、出てきた3つのクレープを分担して持つ。俺の分はどこって?

 食べ過ぎ、腹、キツい。


「やっぱりエンドーくんもクレープ食べたらいいのにー。お金ないなら貸すよー? トイチで」

「明日にも返せるがいらん。お前らの飯が美味いのが悪い」

「それってもしかして、褒めてくれてる? あたしのおにぎりも?」

「褒めてるかはともかく、美味いことは間違いない」

「えへへ、やったー。じゃあ気が向いたらね、またご馳走するよ!」

「形整えて出直して来い」

「おっと、ここでド正論。きびしー評価だねー」

 どう見ても幼稚園児ですら分かる歪さだったぞ。形は。どこが厳しいと言うんだ。


「じゃああたし頑張るから、形も良くなったら是非もう一回食べてほしーな!」

「味見役なら俺より親や友達にでもしてもらったほうがいいんじゃないのか」

「ノンノン、味見役ちがうよ。エンドーくんに食べてほしいから食べてーって言うんだよ」

「は? 何で俺に?」

「特に理由はないけどー、強いていうなら褒めてくれたからかなー。うん、それだけ」

「それだけ、って……」

「エンドーくんだって経験あるでしょ、なんとなくで動くってこと。今のあたしがそれ」


 果たしてそれだけの理由でおにぎりを作るものなのだろうか。手間だろうに、いまいち分からない。まあ、分かる必要もないか。

 そうして俺たちが適当に角を曲がった時だった。


「お父さんのバカ――――!」

 いきなりそんな罵声が聞こえた。なんだと思って発生源を見やると、十歳……いやもう少し若いだろうか。そのくらいの男の子がオッサンに向かって罵声を吐いているところだった。


「しーっ、静かにしなさい、周りに迷惑だろ」

「お父さんが時間間違えたせいじゃんか! もうヒーローショー終わっちゃってるじゃん!」

「ご、ごめんな。代わりに好きなもの食べさせてやるから。ほら、何が食べたい?」


 どうやらあのオッサンが無能だったというだけの話のようだ。騒がしいが、それだけなら横のコイツも負けてないしまあどうでもよい。

 それにしても今日、ヒーローショーなんてあったのか……。昔は楽しみにしてたものだが、もうさっぱり興味がなくなってしまった。まったく気付かず、そんな情報を今知る始末だ。


「ご飯なんていつでも食べれるじゃん! ぼくはヒーローショー見たかった!」

「そうは言ってもだな、栄養はしっかり摂らないと……」

「お父さんのバカ! もう知らない!」

「あ、おい! 竜太!」


 オッサンの引き止めも聞かず、竜太とか言う子供がこっちに向かって走ってくる。と、思ったら足をもつれさせて盛大にすっ転んだ。まるで何日か前の俺を見ているようである。


「うわ――ん!」

「わぁーお……痛そー……」

 隣で真田が若干引いていた。何日か前の俺とは違い、ここはアスファルトの地面で、あの子供は学生服ではなく短パンである。あの子供がどんな怪我を負ったか……想像したくない。


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