5章 遊園地(2)
服装も金持ちらしい……というわけではなく、丈が長い白のワンピースにベージュのパンプス、胸に銀のペンダントを付けている。隣の奈々城は、ブラウスの上にピンクのカーディガン、下はグレーのスカートにスニーカーだ。真田も含め、全員が小さなバッグを持っている。
「さて、折角皆で来たんだから写真でも撮りましょう。遠藤君もそれでいいわよね?」
「うん、似合ってるな」
「えっ?」
「ん?」
俺は今何を……しまった、ボーっとして場違いなことを言ってしまった。遠藤孝一生の不覚。まあ真田にも服のことは言えって言われてたし問題ないだろう。
「すまん、聞いてなかった。もう一度言ってくれ」
「……」
「……聞いてるか? 奈々城?」
固まってるばかりで返事がない。顔が赤いから屍ではないな。一体急にどうしたのだろう。俺なんか変なこと言ったっけか?
「え、遠藤、遠藤!」
「なんだ急に」
「わたくしは? わたくしはどうですの?」
「だから何がだよ。服のことか? もちろん似合ってるぞ」
「~~~~!」
ぱあっと嬉しそうな顔をするセレナ。さっきからどうしたんだこいつら。
「エンドーくん、ずるいー、なんで祈たちにはちゃんと言うのー!」
「ん? ああ、お前が言えって言ったんだろ」
「そうじゃなくて雰囲気とかー、タイミングとかー……まあいいや、エンドーくんだし。っていうかエンドーくんってあたしに言われてなんかする人じゃないじゃん」
その通りだが、ついポロッと漏れた本音というやつだ。まあ真田の言葉も頭のどこかには残っていたのだろう。そうじゃなきゃ俺がこんなこと言うわけないしな。
「ところで遠藤。どちらの方が似合ってますの?」
「は?」
「……そうね。そういえばまだファッションセンス対決はしてなかったわね」
硬直から復活した奈々城がぎこちなく不敵に笑う。そのほっぺたはまだほのかに赤い。
というか、そう言えば毎日のように喧嘩してるんだっけか。俺が見たのはあの料理対決一回だけだったが、いつも俺の見えないとこでやってるだけか。
「と、いうわけでどうですの? 決めてくださいませ。もちろんわたくしですわよね?」
「いえ、私よね?」
二人して俺に詰め寄ってくる。負けず嫌いだな、こいつら。
しかしファッションセンスか。それを俺に問うのか。ハッキリ言って知るか。
まあ、ただ似合ってるかどうかだけなら……いや、しかしそれでも……。
「ダメだ、決めれん」
「そこをもう少し……」
「センスじゃなくて、好みで決めても構いませんわよ!」
好み……と言われても。
「無理だ。どっちも好きだ。優劣は付けれん」
「「すっ……」」
二人して同じような奇声をもらし、沈黙する。ハモるとこか? そこ。
「それじゃあ可奈、貴女が決めなさいな!」
「あたし服とか気にしないし無理。前みたいにじゃんけんで決めたら?」
「さすがにそれはちょっと……」
「仕方ないわね。ファッションセンス対決は保留にしましょう」
「……やむなし、ですわね」
どうやら諦めてくれたらしい。なんか俺を楽しませるってこと忘れてないか? つまらなくはないから構わんが。
「さあ、気を取り直すわ。写真撮りましょう写真」
「いいねー、掛け声は何にする? 1+1=2? ハイチーズ? それともて・き・とー?」
「そんなのなんでもよろしいじゃありませんの。さあ、あのへんに並びますわよ」
「じゃあ俺は入り口付近で待ってるか」
「……貴方も来るのよ? 遠藤君」
「え、俺も?」
何で一緒に並んで……ってそうか、撮影係か。入り口にいつまで居たって仕方ないし、そのくらいならやってやるか。
「その手はなんですの?」
「カメラ寄越せ。撮ればいいんだろ?」
「エンドーくんも一緒に写るんだよ! 写らなかったら何のために来たのさ!」
「少なくとも写真のためじゃねーな」
続けてじゃあ誰が撮るんだ、と言いかけたとき、視界の端で奈々城が遊園地のスタッフにカメラを渡しているのを発見した。……え、ホントに俺も写るの? マジで? めんどくせえ。




