本当の神子とは?
私が神子だということが分かってからはトントン拍子に事が進み既に上ノ国までやって来ていました。その過程でヒロインは攻略対象を着々と攻略し残すは御郷のみと言う所まで来ていました。どうもヒロインはショタコンでは無いらしく彼を積極的に攻略しようとはしていません。そのお陰か御郷はヒロインに攻略されていません。御郷は見た目はショタだし中身も純粋無垢だがとうにヒロインの年齢は越している妖は何千年も生きるのだ。
「御郷!御琴良く来たね!!彼女は僕の兄が元の国に帰してくれるらしいし、ここまで彼女を連れてきてくれてありがとう!!兄はこの国から出られないから…助かったよ!!」
華やかな宮殿に招かれた私と御郷は月詠様に抱きしめられていた。どうも、神子というものは元来無条件に神様に愛される者らしい。そして、その伝承が右翼曲折して隠世ノ国のあの習慣に繋がったと言うことか…
ガタンと大きな音を立てて月詠様の宮殿の扉が無理矢理に開かれた。
そこに立っていたのは御影さんを筆頭とした攻略対象の方々と彼らに守られる様にして立っているヒロインちゃんだ。
「御琴!!貴様の悪虐非道の数々は許されない!!此処で月詠様に裁いて貰うがいい!!」
「御琴…私は神子を虐めるような子に育てた覚えは有りません。今すぐ彼女に謝りなさい?そうすれば許してあげましょう。」
御影さんと安倍様を筆頭に口々に私を糾弾する声が聞こえた。
「皆辞めて!!きっと御琴さんは晴明さんに本当に愛して貰えなくて辛かったんだわ!!きっと寂しかったのよ!!だから、御琴さんを責めないで!」
月兎ちゃんがこちらに走り寄ってきた。ふんわりと月兎ちゃんを優しい光が包んだ。そこにはこの国…この世界を統べる神である大御神様が立っていた。私が元いた世界では彼…は女性だったが世界が違うと性別も変わるのか…それとも、乙女ゲーム仕様なのか…
「ここ数ヶ月そこな小娘と共に寝食を共にしたが…小娘は神子では無い。本物の神子は御琴だ!!」
「そんな訳有りません!!彼女は稲荷神社の巫女ですよ!?私の母上に仕えているのですよ!?神の子なわけが有りません。」
安倍様は声を荒らげた…ハラリと涙が零れた…あぁ安倍様…私は…いいえ、御琴は御琴として安倍様をお慕いしていました…他の誰でもなく義理の父であり兄でも先生でも、雇い主でもあるあなたをお慕いしていました…あなたにとっては私はただのあなたの母上に仕える巫女の内の1人なのですね。
「葛の葉の息子はこんなにも愚かなのか。陰陽師として名を馳せていると聞いたが妖しげな術にかかった上に愛した少女さえ忘れてしまうのか…」
意識を失って倒れる安倍様に慌てて駆け寄った。どうやら息はある様で安心した。
「そんな…そこの女が神子なわけないじゃないの!!その女は私の服を切り裂いて私の大切にしていたネックレスを奪ったのよ!?盗みを働く様な人間が神子なわけないでしょ!?」
「常に私は御琴と共にいたが御琴はそんな事をしていない…仮にもお前が神子ならば神であるこの私を疑えるのか?」
ぐっとヒロインは押し黙った。大御神様は近くにいた兵士に彼女を地下牢に連れていけと指示した。そのせいだろうか…?ヒロインは暴れだし暴言を吐く。
「その女が悪いのよ!!私はヒロインなのよ!?くそ、汚い触るなっ!!全部アンタのせいよ!!女狐、売女!!なんで誰もわたしわ愛してくれ無いのよ!?」
…愛して貰えなくて辛かったのは…寂しかったのは多分ヒロインちゃん自身なのだろう…今となってはもう手遅れだが…
あと1話でおしまいにします。