6章 第7話 鶏肉を求め
宿に着き、食事もとって一段落するもまだ時刻を昼を少し過ぎた程度である。
「リリ、ララ。2人とも今日はここでゆっくり休んでおいてね。LV上げは明日にしよう」
「お兄ちゃん? なにか忘れてない?」
「あぁ、食べ物ね。もちろん忘れてないよ。でもちょっと予定が変わったから、まずはLV上げをしよう」
「うーん、正直食材もすぐに欲しいけど、マオが気にしてるのはさっきの話よね?」
ララは早く美味しいものが食べたくて仕方がないらしい。表面上は我慢してますよって見えるけど、その裏に見える本気でふてくされている彼女の姿がはっきりとがわかる。リリは状況を把握してくれてはいるみたいだけど・・・・・・。
どんだけ食いしん坊なんだい? 君たち。 そんなキャラだったかな?
「だって、ここに来る道中に食べたあの牛のお肉があまりにも美味しくて、ねぇ?」
「ねぇ? お姉ちゃん!」
どうやら二人はテイスティー・カウの味が忘れられないらしい。
「はい、はい。わかってるよ。2人の気持ちはよーくわかったから。安心して僕に任せておいて!」
僕はやれやれって雰囲気を出してみたが、二人にとってはそんなものは気にも止めないみたいだ。
「「まかしたぁ~」」
「まかされました」
そしてそれから少し話をした後二人は自分たちの部屋へ、僕は外へと向かう。
さて、彼女たちの安全のため明日からはLV上げをメインにしないといけない。が、2人のモチベーションを下げないためにも美味しいものは必須だ。
僕がどうして外にむかってるか、わかってくれましたか?
そうです、僕はこれから1人で狩りへと出かけるのです。
目指すは【ジュシー・バード】だ。
このジュシー・バードは最低でもLV100を超えており、討伐が困難な鳥型の魔物である。しかし、その肉はとても味わい深く、それを食べた人間はまさに天へと昇天させるかの如くのリアクションを、彼らの意志とは関係なくとってしまう程だとか。
さらに、肉は高タンパク、低カロリーであり女性からの人気がことさら高い。
美味い食事は高カロリーの原則を打ち破っているのだ。
噂ではあるが、大貴族の夫人がこの肉を欲した時に、それなりの商人が一年で稼ぐ以上のお金を使ったとか使わなったとか。
なんにせよ、普通のマーケットでは目にできないほどの希少で高級食材なのである。
子どもとは言え、あの二人も立派なレディーだ。これを用意してあげたら喜ぶに違いないので、僕はこいつを今日中に狩ることにしたのだ。
けれど、自力ではなかなか有益な情報が得られなかったので、神様に聞いてみた。そしたら町から1時間ほどで行けると言われた。ただし、僕の足ならとも言われた。
最後の一言が気になったから、僕は急ぎ目の速度で移動することにした。そう、3人で歩いていた時のおよそ10倍の速度だ。
一瞬やりすぎた? とも思ったけれどこれで正解だった。いや、ある意味不正解だったのか。
なぜなら結果として僕は倍の時間、2時間ほどかけて目的の魔物の群れにたどり着いたのだ。
20倍って・・・・。どんだけだよ、神様? とつぶやいた僕は悪くないよね。
そして、今僕の目の前には10数体の ジュシー・バードがいる。
その中の1羽を鑑定してみると
【種族】 ジュシー・バード
【LV】 112
【HP】 35234
【MP】 12909
とあり、これは以前であったキングウルフ、討伐にはSランクのパーティーが必要、の数倍強い。
単純にLVは倍ほど、HPに関しては裕に3倍はある。
世間で災害とも言われるSランク相当の魔物と比較してこれである。
普通の感覚の者がみたら、どう思うかは想像に難くない。
さて、この魔物、大きさはだいたいダチョウ程で1羽捉えれば量的には問題ないのだが、神様からとっておきの情報を聞いた僕にとってこの10数羽という数は少なすぎると感じてしまう。
曰く『ジュシー・バードには胸のある場所に希少部位がある。そして数ある肉の部位の中でもそこのお肉は格別だである。ただし、1羽からとれる量が極端に少ない。その量はおよそ数グラム』
例えば1羽から5グラム取れたしよう。1人大体150~200グラム食べようと思うと、僕達が3人に必要なのは100羽ほどだ。
量が多いんじゃないかと、思うかもしれないが僕も彼女たちも食べるときは食べる。そして彼女たちが美味しいものを食べるときと言ったら・・・・・・・。
100羽でも足りないかな・・・・・・。心配だよ。
さて、足りない80羽分、余裕をみて180羽分ぐらい欲ししいか、をどうやって手に入れるか?
ひたすら走り回り見つけるのも悪くないけど、それは疲れるし、生態系を一気に壊すのは正直ちょっと怖い。
掻き乱された生態系がどう影響するかわからないし、なにかあったときに責任とれないし。
なので、僕は以前ふと思った案を試してみようと思った。
よし、行動開始だ。
まず、僕は1本の剣を手にする。魔法的な恩恵はないけれど硬度はかなりのものである。僕はそれを槍の様に構え、大きく振りかぶり1羽の ジュシー・バードの足を狙う。
勢いよく投げられた剣が僕の狙い通り ジュシー・バードの足を貫き、その体を地面へと縫い付ける。
剣が地面へと突き刺さった瞬間、いやそれよりも一瞬早く他の ジュシー・バードは危険を察知し空高く舞い上がり、今はその姿を捉えることはできない。
もちろん、これは予定通り。
お肉は美味しいから少しでもいいよね? なんて二人にいうつもりはもちろんない。
僕は剣に貫かれ、弱り始めた ジュシー・バードの近くまで駆け寄る。
そして、おもむろにその胸の中央右寄りを剣でくりぬき、数㎝四方の肉の塊を手にする。
この肉が僕の追い求めた希少部位の場所だ。後程この肉のを捌き、目的部位を取りだす。
さらに、ここで僕はマジックリンからアイテムをとりだす。
瓶に入った液体を ジュシー・バードに振りかけると、弱っていたはずの魔物がたちまち元気になる。そして、くりぬかれた胸の部分がみるみる元通りになる。
しかし、未だその足は剣に貫かれ移動することは叶わない。
僕は再び剣を振るい、数㎝四方の肉の塊を手にする。
そう、A級ポーションを利用して、肉を取る→回復→肉を取る、のループをするのだ。
部位欠損すら治す伝説級のポーションを多く持つ僕だけができる方法だ。
(たぶん)
いくら魔物とはいえ無抵抗の者を繰り返し痛め付けることに心が痛むけれど。所詮、この世は弱肉強食と思って、この魔物にはあきらめてほしい。
肉を得るために多くを狩るか、1匹を何回も狩るか、これにかかる心の重荷は変わらない。ならば僕はこれは単純に時間効率がいい方を選ぶ。
それに、僕もこれは単なる虐殺ではなく、食べるために必要なことと思えば心にかかる重荷は少し軽くなるだろう。
なにより、僕が100匹以上のジュシーバードを乱獲する方が、彼らの種族としてのダメージは大きいだろう。
これはWIN-WINの方法だ。
と、僕は自分に言い訳を、少しでも心が軽くなるように思考を誘導し、繰り返し肉をくりぬく作業を進める。
この時ぼくはしみじみと、養鶏場や養豚場の人はすごいなと感じたのだ。
そして、そろそろ最後の塊を手にすると僕はジュシーバードに突き刺さる剣を抜き、脱げ出される直前にポーションを振りかけておいてあげた。
剣を抜いた後、僅か1秒にも満たない時間で僕が散々お肉をいただいたジュシーバードは大空へと飛び立っていった。
特になにかあるわけではないけれど、僕はしばらくその後姿を見送った。
いろいろあったけど、まぁがんばってくれと思いながら・・・・・・。
さて、次は賢者の石か。まだ日が落ちる前、急げば夜ご飯までには間に会うよね。
以前感想欄でアドバイスをいただいたものを参考にさせてもらいました。
おもしろいと少しでも思っていただけたら幸いです。
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