6章 第4話 うしさん
転移門からギルドの拠点までは森の中を進んでいくのだが、この道が思ったよりも快適だ。
「歴代の勇者様や実力者のパーティーの方々が整備したらしいわ」
なるほど、なるほど。確かにLV90オーバーの魔物が出る場所で作業となれば並大抵の人には不可能だと思うけど、なんかイメージがわかないな。
「マオ? 変なこと考えてない?」
変なことではないよね? イメージできないだけだし。
「でも探索をするのにそんな拠点が必要だったの?」
「みんながみんなマオみたいな【転移】ができれば不要だけど、ここを調査するなら冒険者以外にもギルド職員、宿、食事などいろいろな人が必要になるわよね?」
あぁ、そうだった。この世界では【転移】はレアスキルだった。いつも当たり前に使ってるから忘れてた。
「だったら、転移門もこんあところにしなくてもいいのにね」
「それは、まぁ。確かにそうね。」
などと、適当な話をしながら僕達はギルドの拠点を目指していた。道中幾度となく魔物に襲われたけどリリとララ、それにスラきちとライムの4人で見事に撃破している。4人の能力をみるために僕は手を出さないと初めてに伝えている。もちろん緊急時は除いてだ。
この戦いを通してこの4人パーティーならLV100以下の通常の魔物なら問題なく対処できることがわかった。現状では文句のないできだ。
しかし、この世界のLVは99で一度打ち止めになるのだが何かのきっかけで100を超えるようになるとその能力は桁違いにあがる。限界突破ボーナスみたいなものか?
いつかはこの上を目指さないとけないけど、それも一度LVが99に上がるまでは横に置いておく。
「マ、マオ。あれ、見て!」
「あれは、あの魔物は確か『テイスティー・カウ』じゃないか!?」
僕はリリに借りたギルドの冊子をみる。
** テイスティー・カウ **
通常の牛と同様の姿をしているがその性格は凶暴で力や素早さが驚異的である
LVは90~95が多いと思われる
その肉は得上の味わいであり、高値で取引される
ただ、その個体数が少ないのか凶暴なわりに慎重なのかわからないが、発見は稀
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早くも旅の目的が達成!? いや、僕達が求めるのはもっとすごい物だ。とはいえ、こちらも美味しくいただかない理由にはならない。
「マオ、どうしようか。私たちでも勝てるけどね・・・・・・。」
僕はリリの言いたいことを察する。
「お兄ちゃん、これは緊急事態だとララは思うよ」
うん、ララの言いたいことも察する。
「「ピィィ」」
スライムさん達の言いたいことは察せない。残念。。
確かにただの魔物としてこの『テイスティー・カウ』を見た場合4人でかかれば余裕を持って倒せる。
しかし、『テイスティー・カウ』を得物、食材としてみた時では4人にとってはすこし荷が重い。
大規模魔力や武器による傷は確実にその肉を傷つけ味を劣化させてしまう。最悪、貴重な部位がすべてダメになる、そんな可能性も考えられるのだ。
神様の協力のもと僕の家は段々と快適になってきている、目指せ地球基準。だが食事は別だ。
地球の食事は美味しい、けれど素材としてはこの世界の物も素晴らしいのだ。
そして、この『テイスティー・カウ』は僕の予想を上回る可能性も秘めている。
そう、つまりはかならずきれいなまま手に入れないといけない食材なのである。
「そうだね、ララ。これは緊急事態だ。僕に任せてほしい。リリもいいかな?」
リリは満面の笑みで頷く。ララはとなりで飛び回っている。もうお肉を手に入れたことを考えているのか。
捕らぬ狸の皮算用と言われちゃうよ。ってそうはさせないけどね。
さて、僕はこれまでしてきたように、ただ魔物を倒すの効率の言い方法を使う。そう、魔石を抜きとるのだ。
どうやら牛さんがこちらに気づいたようでこっちにものすごい勢いで走って、いや飛んでくる勢いだ。すでに僕の射程内なのだが、ここで魔石を抜きとるとその勢いのまま牛さんは地面に滑り込みお肉がダメになってしまう。
僕は4人に離れて後ろで見てるように指示をだす。そして、牛さんを兆発するためにいろいろ試す。
弱風魔法、弱氷魔法、石を投げる、音を出す。これらはそこそこの効果を上げたが、まだいまいちだ。
うーん、そうだ。あれだ、牛さんといえばこれしかない。
僕は赤い布を取りだし、それをなびかせる。と、牛さんがこっち目掛けて進路を大きく変える。
あ、これは完全にロックオンされたね。普通であればさっとかわすのが闘牛なのだが僕はそうはしない。だって捕まえないと終わらないんだよ?
牛さんが突っ込んでくると僕は両手でその突進を止める。暴れる牛さん、押させる僕。
しばらくそうしていると疲れてきたのか動きが弱くなったので、僕は片手を外し、【転移】を少しいじり牛さんの魔石を抜きとる。
「はい、牛さん捕まえたよ。とりあえずマジックリングに入れておくね」
「やったぁ~、今日のお昼はお肉だね。せっかくだしBBQしよ~、ねぇだめ? お兄ちゃん」
「私も早く食べてみたいわ」
2人とも本当に嬉しそうだ。やはり、色気より食い――
止めておこう。
「「ピィィィィー」」
スライムさんたちの主張はあいかわらずわからない。けどきっと食べたいのだろう。
「そうだね。拠点に着いたら捌いて料理してもらおう。無理なら一度アカックに戻ってもいいしね」
「「わーい」」
「でも、拠点まではまた4人でがんばるんだよ! いいかな?」
「「もちろん」」
と、こうしてギルドの拠点を目指し再び歩みを始める。
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