急展開
すみません、長くなると言っておきながらいつもと変わらずです。
人間の集中力なんてものはたいして続かない。
僕は隣の部屋をずっと監視していたけど、変化のない状況に飽きて、慣れてしまいついついうととうとしてしまった。
意識が飛んだり、戻ったりを繰り返しているとついにその時が訪れた。
「ねぇ、このままどこに行くの?」
あ、アリーシャさんの声だ。意識を集中するとアリーシャと20歳ぐらいの男が隣の部屋に入ってきた。
「特には、決まってないさ。それでもとりあえずは足がつきにくいとこだな」
「そうなのね、わかったわ」
どこか、2人の会話に違和感を感じる。アリーシャンの声から恐怖や怒りなどおよそ攫われた人間がもつであろう感情が読み取れないのだ。
「そろそろ、夕食の時間だ。俺はちょっと酒でも買ってくるからここで待ってろ、くれぐれも外に出るなよ」
「わかってるわよ。そんなに心配しなくても大丈夫。私はあなたから逃げられないのだから」
「はははh、確かにそうだったな。まぁいい、行ってくる」
やっぱりだ。話している内容は不自然ではないのに、二人の雰囲気がどうしても誘拐犯とその被害者に見えないし聞こえないのだ。
とにかくいきなりチャンスが来たことには変わりない。アリーシャさんが一人になった今ここで彼女を救わないと。しかし、僕はすぐには行動しない。
そのかわりに男、ゴンザが立ち去りしばらく時間が経つのを待った。なぜかというと、何かの拍子でゴンザがいきなり戻ってくるという可能性が0ではないからだ。
少部屋の窓からゴンザが宿を出ていったの確認し、しばらく外を見ていたが、戻ってくる様子はない。これならと僕はついに行動を開始する。
僕はアリーシャさんのいる部屋の前まで行き、扉をノックする。
「はーい。少々お待ちを」
扉が開くとそこにはアリーシャさんがいた。元気そうで何よりだ。
「ま、マオさん!? 」
「アリーシャさん、とりあえず逃げましょう。話はその後です」
「え、えぇ。それにしてもマオさんはどうしてここに」
僕達は隣の部屋向かい、これまでの話をする。始めは僕がどうやって行動していたのか、どういうことを思って動いていたか、それを伝えた。
話が終わり、遠くを見ていた視線をアリーシャさんに合わせる。そこには俯いている彼女が見えた。体が少し震え、なにかを我慢しているように見えた。
それをみて、僕の気持ちをわかってくれたのか、そう思ったとき。
「あははははははは、本当におめでたい子ね」
涙を浮かべていると思ったその顔にはその代わりに嘲笑が浮かんでいる。
「え、え、えっ? アリーシャさんどうしたんですか?」
髪をかき上げ、僕を見下すようにして彼女は続ける。
「だから、馬鹿な子って言っているのよ。今回は別に誘拐とかではないし、あのゴンザは私の長年のパートナーよ」
「え、でも。それならなんで?」
僕は状況が把握できない。あの男がアリーシャさんの関係者。いや、パートナー!? ホントにどういうことだ。考えようとしても頭がそれを拒否する。
「はぁぁ。しょうがないわね。捕まっちゃったわけだし、全部説明するわ」
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