遠足前日は眠れない~準備するのが楽しい~
翌朝目を覚ますと僕は予定通り装備をそろえることにした。この時、所持金のほとんどである金貨70枚をつぎ込んだので割といいものを手に入れることができた。ビギナー冒険者としては破格の装備である。せっかく全財産をはたいて買ったものだ、一応紹介しておこう。
まず武器は双剣で魔力を帯びたものになっている。鎧はこちらも魔力を帯びたもので薄手の服みたいなものを購入した。薄く軽いものであるが魔力を帯びているのでただの金属製アーマーよりも防御力は高いらしい。
装備をそろえ終わるとお腹の虫がなったので昼食をとるため広場に行く。この街でのお昼はここっていう印象が僕についているのか気づくといつも昼には広場にいる。いつも通り気になった屋台でご飯を買い、午後から向かう冒険者ギルドについておさらいをする。教本さまさまである。
≪冒険者ギルド≫
討伐・採取・探索・護衛などの依頼を受けることで金銭を得るものを冒険者という。その冒険者と依頼者の間に入って仲介を行う団体。また、冒険者の管理もしており、冒険者に対する各種講習や戦闘訓練も行っている。冒険者が魔物を討伐して得た素材・魔石の買い取りも行っている。
右も左もわからない初心者はギルドで情報収集、訓練、売買をすることをお勧めする。なお、商業ギルドか冒険者ギルドか登録できるのはどちらか一方である。所属を変える場合は所属しているギルドを脱退する必要がある。
僕は冒険者になるつもりはないが、アカック周辺の魔物の情報が欲しかったので冒険者ギルドに行く必要があった。普通に情報が得られるかわからないが最悪の場合は依頼をする形で情報を得ようと思っている。装備にしても情報にしてもお金は必要だな。異世界でもお金に縛られるとはと苦笑いをしてしまう。
お腹も落ち着き町の冒険者ギルドに行くと、そこはがらの悪そうな人たちが結構いる。平均的な日本人感覚で僕にはかなり居づらい雰囲気。早く用事を済ませたいなと思いながらカウンターを目指す。近くにいくといくつかカウンターがあり発注と書かれた場所があったのでそちらに向かい受付嬢へ声をかける。
「はい、どうなされましたか。ご依頼の発注でしょうか?」
周りの冒険書とは真逆な綺麗な女性が丁寧な口調で答える。
「あ、はい。アカック周辺の魔物の情報を知りたいのですがどうしたらいいか相談したくて。僕はポーションを売って生活をしているので冒険者になるつもりはないのですが、可能ですか?」
「そうですね、冒険者にならない、となると依頼という形になってしまって有料となりますね。アカック周辺のことでしたらギルド職員がお教えするか低ランク依頼となりますので、手数料込でだいたい銅貨5枚ほどになるかと思います。」
「そしたら、ギルド職員さんでお願いします、はい銅貨5枚」
あんな強面と話したくない気持ちで一杯の僕は慌てて銅貨を渡す。
「あ、は、はい。それではあちらのお部屋でお教えいたしますので、お待ちください。」
僕の必死さに引いたのか、受付嬢の顔が少し崩れていたが、そこはプロの仕事であまり待つことなく魔物を情報を教えてもらえた。
まとめると、アカック周辺の草原でLVを上げ、その後北の森へ、森で余裕ができれば次はさらに森を北に進み山脈の麓を目指す。ここまでソロで行ければきっとLV40近くなっているはずと。しかし、そこまでソロで行くには一流の冒険者でも大変だということで途中でパーティーを組むことを進められた。また、途中に常夜の洞窟と呼ばれる迷宮があるとも言っていた。こちらは未踏破の迷宮であり確認されているのは地下23階まであること。そこまで辿り着けたのは平均50LVの冒険者パーティーだけであった。超一流のパーティーでそこまでということらしい。もちろん上層部は魔物も弱いので一度行ってみるのもいいと勧められた。
装備をそろえ冒険者ギルドで情報収集しその後水筒や保存食など冒険するための物を買いそろえると時刻は夕食頃になっていた。いよいよ明日から僕の冒険が始まる、危険もあるがそれ以上にワクワクが止まらない。男はいくつになっても少年なのさ。目指せ最強、集めるぞ最強の装備。
装備品に冒険グッズ、情報集と準備段階で興奮してしまい当初の目的を完全にわすれている。幸か不幸か、突っ込む人はだれもいないのであったが。
宿に戻り夕食を食べ終わるころには僕も落ついてきて、肝心な【神威】について全く調べていないことを思い出す。闘気で能力を上げるところまではわかったが現在ぼくは闘気の『と』の字も感じてない。このまま戦闘になるのはおもしろくない、やれることはやっておかないとだめだ。そして僕は目をつぶり瞑想を始める。
きっと闘気なんてものは普通の人がもったいるはずがない。なので、自分の、元の世界で培ったラノベの知識でどうにかしてみようと試みるのである。
瞑想しながら自分の中に力が流れているのをイメージする。そしてそのイメージした気体のようなものが全身を隈なく流れるように意識をしていく。しばらくはこれを繰り返していたが、途中からはっきりと、なぜだかわからないがこれが闘気であると本能的に認識した。制御ができた証拠なのだろう。そして次は流れる気体を右手に留まるようにイメージする。すると、右手に力が沸くのがわかる。
留める位置を変えると同様なことが起きる。そして、最後に気体の量を多く、少なくとイメージすると感じる闘気も上下する。
あれ、才能あるのかな、僕。僕の中の少年が再びワクワクしてきた。
あとは実践でどれだけ使えるか様子を見ながら使用していくだけだ。
もちろん、常に闘気を纏うのを忘れない。なぜなら、それが闘気を制御する一番の修行だと師匠も言っているからだ。師匠? もちろんラノベの登場人ですが、なにか?
これで本当に準備はすべて終わった。明日のため早く寝よう、とベッドに身を預けるが興奮のためなかなか寝付けなかった。どこの遠足前の小学生だ、と言われてもしょうがない。
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