依頼完了
迷宮に潜りはや10日が経つが、探せど探せど転職の水晶に必要な材料である、翡翠の塊(高濃度魔力を秘めたもの)がなかなか見つからない。そこそこのものであれば20階層あたりで見つけれたけど、なかなか高濃度の物は見つけれなかった。
そもそも、高濃度、通常、低濃度の違いは明確的なものがないので、個人の感覚によるところが大きい。鑑定はというとここぞというときに役に立たないので使えないな。込められた魔力を見ることは可能なのだが、それが高濃度かどうかは自身で判断しないといけない。
事前に調べるとかしろよ、とか言わないで欲しい。だって行けば見つかると思ったんだから。
それにしても一体どこまでこの迷宮続くんだろうか?途中から数えるのが面倒になったけど、ボス(?)ともかれこれ6回ほど戦ったけどまだまだ先にがあるし。
あの人は中層から深層で見つかるって言ってたけど、まず中層で何階層あたり?である。だれか適当に聞こうにも最初に数人の冒険者を見たぐらいで、20階層ぐらいからは1組にもであってない。
あまり人気のない迷宮なのだろうか。なんて考えているとデーモンみたいな奴が次から次へと襲ってくる。
いちいち相手にするのも嫌だったから初めから魔石を抜きとって戦闘を終わりにする。始まってすらないものをどうやって終わらすと言わないで欲しい。
倒した魔物の数は数百を超え、素材をすべて剥ぎ取っていては時間もスペースもないので今回はスピード重視で魔石を奪うと同時に魔石のみをマジックリングに入れることにしている。
それにしても飽きたし、いったんそろそろ戻ろうかな。と、魔物をさらに数十匹倒した頃に決めると運よく目の前に翡翠の塊があった。とりあえず適当に採掘して僕はアカックへの街へ転移する。
迷宮にいると時間の感覚がずれてくる。転移したアカックでは太陽がほぼ真上にあったのでちょうどお昼頃であろう。僕は万屋に戻る前に依頼の終了を報告しに行く。
もしこの翡翠の塊でダメだと言われてたらまた転移で迷宮行きである。次は魔力の必要量を教えてもらう。3度目はないようにね。僕は失敗から学ぶ男だ。とかっこよく言ってみる。
「あ、すみません。依頼を受けたものですけど」
アカックにあるとある民家に僕は尋ねる。どうみても貴族に関係する建物に見えないけれど、隠密行動だからとか言っていた気がする。まぁ、僕には関係ないのでスルーする。僕の声にすぐ答えるようにあの男が扉を開け現れる。
「あ、マオさん。もう依頼の完了ですか。とりあえずどうぞ、こちらへ」
促されるまま僕は家の中にはいる。中身も外見に違わず一般的な家で、THE平均といった感じがする。彼の言うことが本当であればこの平均さも狙ったものだろう。一般的な家庭にある一般的な机に案内され、お茶を出された。
「どうぞ、こちらのお菓子も一緒に」
と言われたので僕は先に依頼の物を彼に渡し、それを見ている間にお茶をいただく。
おっ、これは!
いつも飲むお茶とは違い少し濃い、うまみもしっかりしてるし。何よりたまに食べるいいところで出されるお茶と同じだ。
THE平均と思っていた、こだわるとこはこだわっているみたいだ。
「いろいろなお客様に出すものですから失礼がないように、です。」
と、彼が言う。どうやら僕が思ったことは筒抜けみたいだ。
「それにしてもこれは・・・・・・」
「あ、まずかったですか?取り直しですかね?」
「いえいえ、逆ですよ。こんなに魔力が高濃度なアイテム、私は見たことがないですよ」
はぁ、と適当に頷く。
「私が調べたところによると、転職のための水晶を作るには18階層から下で取られると言われています。21階層以降の深層でしたら確実なんですけど、21階層からは魔物も急に強くなりますし、普通は行けないので18.19階層で粘るのが通常のやり方らしいですよ」
20階層で深層・・・・・・・・。あそこ少なく見積もっても50階層はあったぞ。と、これは言わない方がいいか。
「運が良かったみたいですね。とりあえず依頼の品はこれでいいですか?」
「あ、はい。本当にありがとうございます。これで私の首も、いえなんでもありません」
うん? まぁいいか。
「あとは、武器防具ですね。これはまた適当なときに来てください。適宜お売りいたします」
その後少し世間話をして、僕は万屋へと戻る。
そこで悲劇が待ち受けていることなど知らずに・・・・・・。
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さて、次話から話が、マオが大きく動きます。
物語として失敗するのか成功するのかわかりませんが最後まで楽しんでいただけたらと思います。