依頼
「「「お疲れ様でしたー」」」
念入りの準備の末、僕のお店『万屋』はオープン初日を成功で終わらせた。
中位の冒険者から駆け出しの冒険者が多く訪れ、エンチャントされた武器や防具は飛ぶように売れ、ポーション類はほぼ売り切れに近い。
少し高めに設定して武器やポーションも興味本位で訪れた上位の冒険者がいくつか買っていたため売り上げをさらに押し上げている。
これだけの人が来たのは、オープニングセールとしてかなり値段を下げた効果もあったのだろう。
明日以降は少しは落ち着いてくるはずだけど。
明日からの商品の数は大丈夫かな・・・・・・。
と、僕は倉庫にある商品を思い浮かべる。いや、それよりもまずは
「リリはララとご飯でも食べておいで、今日は手伝ってくれてありがとうね。アリーシャさんは売り上げの確認をお願いします。終わったら2回の倉庫に入れておいてください」
僕の声を合図にそれぞれが動き出す。僕は倉庫へ向かい明日の営業の準備をする。まぁ、準備と言っても、商品の在庫と今日の売れ方を考慮しなが品出しをするだけなのだが。
2階の倉庫から1階の商品棚まで運ぶのは大変かと思うかもしれないけど、僕には【テレポート】のスキルがあるので余裕なのだ。
スキルの無駄遣いとも言う。
「マオー、お客さんだよ!」
食事に行ったはずのリリの声が1階から聞こえてくる。僕は一度手を止めリリのもとへ向かい、話を聞くことにする。
リリのそばには恰幅のよい、そして身なりもしっかりとした年の頃40近くの男が立っていた。身に纏っているいるものを見るとそれなりの地位にあるかお金を持っているものであると想像できるが、その顔は軽薄で、とても地位が高い人物ではないと思われる。達の悪い奴だと嫌だな。など言っても始まらない。
一先ず話ということで男をお店の端にある簡易的な商談スペースへ案内する。
「えっと、ご用件とはいったい?」
「申し遅れました、私はアカックを治めるもので、アルバード=ウィン=アカックと言うものです」
「え、貴族様でしたか?」
「すみません、嘘です」
「嘘ですか?」
「はい、嘘です」
なんだこの人は、変な人だな。そもそも貴族が商人に丁寧に話すことなんてあるはずがないだろうに。
「それで、いったいあなたは? そういったご用件で? 」
男は一瞬で先までのとぼけたような顔から、しっかりとしたできる営業マンのような顔に切り替える。
「はい、私はそのアルバード様に仕えているものなのですが・・・・。これからの話は内密にお願いしますね」
頷くと男は話を続けた。そしてその話を要約するとこうだ。
アカックは独自に転職施設を作ろうとしている、作り方はわかったがその材料が問題。材料は強大な魔物が蠢く迷宮の中層から深層。街の精鋭でも苦戦が予想させれる。そこで、戦力アップを図るためにうちの武器を買いたいと、もっと言うとまだ売りに出していない、もっと強力なものを。
「もしよろしけば、僕が取ってきましょうか?」
「いや、しかし。迷宮は危険な場所ですし、万が一があれば、」
僕も必要なものだし、ついでに取ってきてあげようというと男は少し慌てたように声にする。僕は少しピーンときたのであとでフォローするつもりだ。
「大丈夫ですよ、聖王国の勇者様やリリという冒険者ともつながりがありますので。それでどうでしょうか。もちろんただとは言いませんけど、武器を買うよりはお安くしておきますよ」
「うぅぅ、しかし、でも・・・・。」
完全にうろたえてしまった。なので僕は
「嘘ですよ」
「嘘ですか?」
男は相当不思議そうに僕の言葉を繰り返す。
「きっと、近衛や騎士の強化もしたいのでしょうから、武器を売るというお話は問題ありません。それとは別に水晶の材量をお売りします、という話です」
「ははは、マオさんも人が悪い。私が最初に嘘をついたこと根に持ってましたね」
「あははははは、やられたやり返すですよ、それでどうでしょうか?」
「それであれば問題ないです。材料の方は数カ月をめどに待ちますのでその間に入手できればご連絡ください。もしダメでもその時は当初の予定通り自分たちでも行きますのであまり意気込まないで大丈夫ですからね」
「わかりました。それと、僕がいないときもありますのでその時はアリーシャというスタッフまで声をかけてください。話を通しておきますので不便なく取引できるかと思います」
そう言うと僕達は握手を交わし、武器の種類や数、防具の性能などなど細かい話を詰めていく。
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5/24 現在やっと5章の粗いアウトラインが完成しました。
息も絶え絶えです。(笑)
次回は6/1 更新予定です。
偶数日ではないですが、間があかないようにしました。