家族
聖王国でのドタバタも落ち着いたころ僕らはアカックへと戻ることにした。帰りは3人だけだったし、道中は特に用事もなかったのでちょうど今転移でパパッと帰ってきたところだ。
「そうだ、ふたりに見せたいものがあるんだ」
そういう僕を二人は少し不思議そうに見たけど、いいものだよって言うと行先もわからないのに僕より先にどんどんいってしまう。どうやら早く見たくてしょうがないようだ。
「お兄ちゃん、はやくいくよー」
「マオ、おいていっちゃうよ」
「あははは、待って。すぐに行くから」
少し歩くと僕達は以前に購入したお店の前に着いた。
「はい、これだよ?」
「「これ?」」
「お兄ちゃん、どういうこと? 『万屋』? なんか買ってくれるの?」
「って、こんなところにお店なんてあったかな。私の記憶にはないんだけど」
2人の声には敢えて応えず、僕は扉を開け中に入る。二人も後に続くが、商品も店員もいないことに疑問を持ったみたいだ。1階部分を見ているとなにやらピンときたのか
「あ、もしかしてマオ。とうとうお店開くの?」
「気づいてくれたね。最初のころの目標の迷宮前ではないけれどここからスタートかな」
「うんうん、私たちが仲間にしてもらったときに言われたもんね。あれ、でもそうなると私達は冒険者を止めて店員さんにならないといけないのかな」
「うーん、最初の頃はそのつもりだったけど二人とも冒険者としても優秀だからね、だから好きな方を選んで大丈夫だよ。実は店員さんの別の候補も目処がついてるんだ、だから何も気にしないでね。あ、でもエンチャントはやってもらわないとかな、これは代わりの人見つけれないし」
「もちろん。私は冒険者でいたい。今までの生活はとっても充実してたし、気の言い知り合いも増えたし。なにより、私はまだまだ力をつけたいの」
「ララは、わかんないけどお姉ちゃんといっしょでいい」
「そうだね、まぁそういうと思っての別の候補だったしね。そうそう、2階部分も見てみて。こっちも少しびっくりするかもしれないよ」
「お部屋がいくつかあるだけでなんもないよー、お兄ちゃん」
2階に上がってそこら中を見て回ったララが僕に言う。もちろん、驚くのこの後だよ。
「なんと、2人に部屋をプレゼントするんだよ!!」
「わーい、ララのお部屋だー」
ララは純粋に喜んでくれたみたいだが、リリは言葉を失っている。今のリリなら部屋を借りるぐらいは冒険者として、いや付与師としても稼ぐのは簡単だろう。
「ありがとう、マオ。本当にあの時マオに仲間にしてもらってよかったわ。ララとは離れないですんだし、生きていく力も身に着けることができた。それだけでも十分なのに、こんなことまで。感謝してもしきれないよ。本当にありがとう」
「いいんだよ。実を言うと、僕は初めはそこまで深い付き合いになるとは思わなかったんだ。けれど一緒に旅をしたり時間を共有しているうちに、どこか、なんというか、そう家族みたいな、そんな感じがしたんだ。だから、みんなが帰る場所を作りたくてね」
「ありがとう、マオ」
目を潤ませたリリの言葉が僕の心に沁みわたる。
あぁ、僕は異世界に来て、血のつながりがある人はいなくなってしまったけど、あたらしい家族と言えるぐらい信頼できる人を見つけれたんだな。
「お礼もいいけどこれから大変だよ。2人もちゃんと手伝てね!」
「「はーい」」
2人の元気な声が響きわたる。
「まずはリリ、エンチャントだね。たくさん武器を買ってあるから、よろしくね」
「え、え、えぇぇぇ!!もう? こんなにすぐに?」
驚くリリ、その横には笑う僕にララ。
そうだ、明日はアリーシャさんに声をかけないとね。
こうして僕達の日常は続く。




