できあがったのは究極のカルピスメロンソーダ
「お兄さん、助けてくれてありがとう。でもどうして助けてくれたの。私のお家はお金ないよ、私は売られちゃうの?」
まだ恐怖が抜けないのか、恐る恐る絞りだすかのように僕に声をかける。特に理由なんてなかったけど、どうしようかなと考えて。
「君がかわいかったからだよ。今回助けたんだからいつか僕にお酒を注いでよ。それだけでいいよ。」
「それだけでいいの? うんわかった、楽しみに待ってて。そうだ、名前。私はリリアーネ、リリって呼んで」
「うん、楽しみにしてるよリリ、僕はマオ。しばらくは丘の夕暮れって宿にいるつもりだからなにかあったら尋ねておいで。」
その後少しリリと話をして別れた。彼女はこのあたりのスラムにある孤児院で暮らしているらしく、この後そこに戻るらしい。今までそういったエリアには足を踏み入れてなかったけど、どの世界にも貧富の差はあるんだとしみじみと感じた一件だ。
宿に戻る最中、戻ってから、夜に至るまで僕の頭にあるのは力不足だった絶望感、情けなさで穴があった入りたい、そんな感情で占められていた。あまりの凹みようで夕食に何を食べたか、そもそも食べたのかどうか記憶にない。いつも入り口で迎え入れてくれるアリーシャの笑顔も今日は思い出せない。ただ、救いがあるとすればリリを助けられたことぐらいだ。
ここで僕は異世界にきてから一番のある大きな決心をする。そう、LVを上げることだ。
この世界で僕は安全にお金を稼いで暮らし行ける。そして僕は今まで幸か不幸かこの世界の悪意にふれてこなった。だから日本と同じでお金があれば平和に暮らせると思った。もちろん元の世界でも喧嘩に巻き込まれたりとかしたが命の危険になることは稀だ。だけど、この世界の命はもしかしたら軽いのかもしれない、因縁つけて奴隷にするとか、マークがおかしいだけかもしれない。すべてかもしれないだ、けど気づいてしまったからには僕は恐怖する。
僕が望んだ人生はこのポーション生成だけじゃ無理だと。いつ、悪意ある強者に襲われて死ぬかわからないと。せめて自衛ができるようにはなりたい。日本で武術を習ったように、この異世界ではLVを上げよう。
教本にLVは絶対ではないと書かれていたが、LVが高い方がいいのは絶対だ。
そうと決まれば計画だ。LVを上げるためには魔物を倒す必要がある。ずっと街にいたから見たことはないが、この世界にはやはり存在するらしい。そして魔物を倒すためにまずは装備を整えることが必要だが、これは意外に簡単だ。お金はすぐに稼げる、それで性能のいい装備をそろえる、それで終わりだ。次にパーティー、まず組むか組まないか。教本によると、1人のがLV上げの効率がいいが、危険も増えるらしい。基本的には安全第一で行きたいが、過剰装備にリバイバルがあれば低LVの魔物なら問題なく安全に倒せるだろう。このあたりは実際に戦ってみて判断しよう。よし、明日から行動だ。
考えを決めると、少し心も軽くなった。最近はただポーションを売ることにマンネリしてからいい刺激でもある。そして、やれることを終えた僕は当初の計画を実行に移すのであった。
3種類のポーションを3本づつ取りだし、空のビンに適量を混ぜていく。気分的には白衣とフラスコが欲しい。まぁ、目指してるのはカルピスメロンソーダなんだが。
試作品ができては味見、そして調整、味見を繰り返すこと数時間、残りのポーションはどれもほとんどなり今日は無理かとあきらめかけたまさにその時出来上がったのだ。味は完璧だ。そして出来上がったものはグリーンとホワイトが混ざりあって液体の中には気泡が見える。見た目も完璧だ。
出来上がっカルピスメロンソーダを僕は一気に飲み干す。
あぁ、この甘さ、しゅわーとす炭酸、生き返る。実に一カ月ぶりのジュースだ、感動で涙が出てくるし、なにやらスキルも覚えたらしい・・・・・・。うん、スキル? 料理スキルでも取ったのかな、この世界で甘味とも呼べる様なものを作ったのだ。感動も醒めぬうちに僕は【鑑定】と自分に意識を向ける。するとリストのなかに【神威】というものがあり。僕は初めて見るそのスキルに【鑑定】と念じ意識を向ける。
≪神威≫
神技の一つで闘気を纏うことができるようなる。効果として身体能力の向上がある。また、熟練度があり熟練度に応じて新たな神技を覚えることができる。習熟速度は遅いがその効果は絶大。
これはなんて強運、神は俺の味方だ。転生させてくれたし、僕は神に愛されてるのか、そう思ってしまうほどのタイミングだ。どうしてこのタイミング、僕の決意? いや、もしかしてジュースか? 先程作ったジュースに【鑑定】を使う
≪名称≫ 神の雫
≪ランク≫ 創生級|(SSS)
≪効果≫ 服用した物の神属性を付与する
カルピスメロンソーダがこんなものだったとは、ランクSSSってなんだ? いったいどうしてこうなった。作り方とかあるのか?と意識をすると【鑑定】の項目が増える
≪作成方法≫ 天文学的確率で、神級のポーションを混ぜることで作成可能。
あれ、【鑑定】にこんな使い方があるとは思わなかった。それにしてもなるほど、まず神級|(Sランク)のポーションなんてそもそも神様ぐらいしか用意できないだろう、それを混ぜることで天文学的確率で成功するとなれば基本的には作成することは不可能である。
それよりもこんな危険なもの残して誰かに見つかったらまずい。否、まずいなんてものじゃない。牢屋に入れられて拷問されて、うん明るい未来は見えないよ。こうなったら全部飲むしかない。次の機会にと残してあったジュース、もとい神の雫をすべて飲み干すことにする。
そして、この美味しい飲み物は天文学的確率でしか飲めないことに気づき、膝を落とすのであった。
気を取り直して、ジュースが飲めないのは悔しいが、僕の目標への道は近くなりそうだ。明日は先に立てた予定通り装備を購入してLV上げに行こう。嫌なこともあった1日だけど、最終的には美味しいジュースも飲んで、すごいスキルも手に入って、さらには【鑑定】の新しい使い方もわかった気がする、そんな素晴らしい一日だった。あぁ、今日はいい夢見れそうだ。うん、今日は久しぶりにいろいろあった一日で疲れも溜まってるから考えるのは明日にしよう。
おやすみなさい。と僕はそのまま体をベッドに預ける。
≪名前・LV・職業≫ マオ 15歳 LV 1 無職
≪スキル≫ ・ポーション生成 ・鑑定|(全) ・ランクアップ
≪神技≫ 神威|(F)
ここから始まります、主人公無双!
すみません、まだまだ始まりませんがステータスは伸びていきます。
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