4章 エピローグ
これで4章終わりです
聖王国に起きた騒乱は一応の解決をみせた。戦後の速やかな姫、エリザベート率いる優秀な文官たちが法律や復興のための政策に奮闘し、さらには最大宗教である教会もその復興に尽力したのだ。
魔王の処刑には数多の人が集まり大々的に行われた。
この処刑、どうやら事件が解決したと示すとともに、事件により被害を受けた人々の憂さを晴らすためにも一役かったようだ。
そんな様々な人達の努力もあり、今聖王国の街並みなはほぼ以前と同じように人々が溢れかえっている。
魔王を討った勇者アルスはその知名度を瞬く間に上げ、今や真の勇者とも言われるほどである。本人は謙遜しているが教会もそれを認め、街の商店はこれを好機と見て勇者様フェアーなるものを企画している。
あんな事件のあとにたくましい商魂である。幾つもの傷跡を残したが、こんな人々が集まるこの街はもう大丈夫なのであろう。人々はこの苦しみも乗り越えて生きていくのである。
勇者が魔王を討伐してから数週間の時間が流れ、姫、聖女、勇者の3名が城のとある一室に事件を振り返るために集まったのが今日である。彼女たちは一つのテーブルを、円形のテーブルを囲んでいる。
「うむ、今はもう以前感じられた魔王の気配は感じられない」
「それでは、完全に魔王は討たれたとみてよろしいのですね。私達が討ったものが魔王であったと」
「状況的にみてそうであろう。洞窟にいた奴がどうして急に城に戻ったかはわからないけど、気配がない以上間違いない」
「勇者様のおかげで事件後も迅速な行動がとれました。教会側にも多大な援助をしてもらい助かりましたわ。このお礼は明日私が正式にこの国の女王になった後かならずいたします。」
「いえ、僕はできることをしたまでです。それとまだ配下の魔人がどこかにいる可能性は否定できませんのでしばらくは注意してください。特に狙うとしたら女王様、いえ、姫様だと思いますので必ず側近のものを連れてください」
「気が早いですわよ。わかりました、勇者様のお言葉です。常にメリッサにつくように指示しますわ」
「うむ、とりあえずはこんなところか。細かいことは昼食の後にしよう。勇者も姫もそれでいいかな?」
「「はい」」
こうして今回の真相は日の目を当たることなく処理され、魔王を討伐した勇者アルス、その名が後世に語り継がれるのであった。
そう彼らは知らない。魔王であったジン・オウマは城での攻防戦以前に、すでに討伐されていたことを。好戦的な魔王が攻撃をしかけ、彼の戦いの練習台となりその命を簡単に散らしたことを。そう、彼らは知らない。
そしてとある商人は知らない。最後に魔人にかけた鑑定には薄い文字で隠蔽・影武者・偽物と書いてあったことを。洞窟の最奥で倒した獣の魔物が真なる魔王、獣魔王であったことを。そう、その商人は知らない。
マオが初めて魔人を見た後すぐに交戦した偉そうな魔人は魔人王であって、この段階ですでに魔人の王は死んでいた。しかし、いまだ魔人の王が存在すると思っていた聖女は感じた真なる魔王、獣魔王の気配を魔人の王のものと誤解してしまった。
その後魔人の王の討伐を計画し城での攻防戦ではジン・オウマに扮したNO2の魔人を勇者様達が討伐。最終的な確認のため聖女は魔王の気配を探ると感じられず、魔人の王はしっかりと処刑で死んだと判断したのだった。
誰も彼も真相を知らないまま終わった事件ではあるが、だれも不幸にならない勘違いで終わった、そんな事件であった。
想像してみてほしい。城の攻防戦の前に魔王は死んでました。ずっとその手下に怯えていました。やっと苦労して倒したのは魔王ではなかったと、人々が知った時のことを。
きと平和にはなったと思うが、ここまでの復興の勢いはなかっただろう。
魔王を倒した商人を周りがほかっておくか、否。マオは目立ちたくないのである。
この後聖王国は女王エリザベートのもと栄華を極め、教会や勇者はこの事件解決の功で名を諸外国にもさらに広めることになる。
4章 完
これで4章完了となります。
この記事を投稿したのが5/20
5章はまた2日に1回の更新に戻りますのでよろしくお願いします。
偶数日更新となります。
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